5 / 58
やんちゃ姫とわんこ③
しおりを挟む
サヴァイヴは、少し離れた東屋で、テーブルの下にもぐった。そこには、5号のホールケーキが入るほどの箱がきれいに梱包されており、薔薇を模ったリボンで出来た大きな花が角に一つ咲いている。
「よかった! ちゃんとあった!」
朝の内に、そわそわしていたサヴァイヴは、使用人たちが誰もいない時を見計らい、数日前から準備していたこの箱をここに隠していたのだ。誰にも言っていないので、他の人たちや小動物に見つかり、どこかにいかないか心配していたのである。勿論、そんな彼の可愛らしい行動は筒抜けで、何やらサプライズを考えているような時期当主の意向を組み、庭師などがきちんと見守っていた。
サヴァイヴは、知らないのだ。朝露でその場所が濡れてびしょびしょになるなんて事を。皆で箱を守ってくれていたのでこうして無事なのだ。
「へへへ、ヴィー、よろこんでくれるかなぁ?」
サヴァイヴは、そっと箱を撫でた後、しっかりと胸に抱えて先ほどの場所に戻っていく。すると、地面につかない足をぶらぶらと所在なげにしているイヴォンヌが見えて来た。
「ヴィー、おまたせっ!」
「ヴァイス~。もう、つくなりどこかにいっちゃうんだもの。ゲストをほうっておくなんて、どういうことー?」
「ヴィー……。その、ごめんね……。ぼく……」
いきなり一人にされたイヴォンヌは少し拗ねたように、ツンッと顔を背けて怒ってみせた。けれど、先ほど視界にとらえたサヴァイヴが持っている箱が気になってしょうがない。視線をそちらにチラチラ向けていたけれど、ついに好奇心が上回った。
ベンチに座らずに、怒った彼女の様子にハラハラしているサヴァイヴをしっかり真正面からとらえて、首をかしげながらニッと笑った。
「もういいよ!」
あからさまにホッとしたサヴァイヴは、彼女の隣にちょこんと座った。膝の上に持って来た箱をのせて、箱と彼女を交互に見つめる。
「……? いったいどうしたの?」
「えっとね。ぼくね、このあいだもりで、かりをひとりでさいごまで、できたんだ!」
「わぁ! ひとりで? すっごーい!」
仲良しの彼が、同い年なのに狩りを成功させた事に、先ほどまでの拗ねた気分や、おかしと彼の持つ箱の存在も忘れて手を叩きながら、自分の事のように喜んだ。
「へへへ……。で、でね。いちばんさいしょにかりのせいかを、ヴィーにあげたくって。けがわもきれいにとれたから、さむいときに、これをつかってほしいんだ」
そう言って、照れながら持って来た箱をずいっと彼女に差し出した。
「え? だって、さいしょのかりのって……。おばさまにはいいの?」
「うん。えっとね……、ぼく、ヴィーにあげたいってずっとおもっていたから、ははうえもそうしなさいって。ははうえには、つぎのえものをあげるから! だから、その。もらってくれる?」
「ヴァイス……!」
イヴォンヌは、サヴァイヴが渡してくれたプレゼントも嬉しかったが、何よりも彼の気持ちが嬉しいと心が弾む。
「ありがとう! いいのかしら? でも、とってもうれしい!」
あまりの嬉しさに、彼に抱き着いた。やや勢いがあったため、彼の体に体当たりのようになった。だが、普段から鍛えている彼の体は、少々ぐらついたもののしっかり同じ体格ほどの少女を受け止める。
「ヴィー! ちょ、ちょっと」
「ありがとう! ありがとう! たいせつにするね!」
「うん! そういってくれて、よろこんでくれて、ぼくもうれしい!」
抱き着いて暫くすると、イヴォンヌは彼から離れた。顔を赤くしたサヴァイヴが、仕切り直しにプレゼントをしっかり手渡す。
「あけてみて!」
わくわくと、イヴォンヌが箱を壊さないように、落とさないように開けると、そこにはまっしろなつややかな毛皮で出来た首巻きがあった。
「わぁ……。きれーい。すっごいスベスベ……」
ふわふわのそれを、撫でたり頬に当ててみるとまるでビロードのようだ。今日の日差しはとても強くじりじりと肌に容赦なく太陽の光がささっている。だが、毛皮はややひんやりとしていて気持ちがいい。そのまま首にそっと巻き付けた。
まっしろな毛皮に日が反射して、輝いているような彼女の微笑んだ姿を見て、サヴァイヴはなぜだかとても胸が熱くなっていたのであった。
※何の毛皮かは、かわいそうなのでずっと内緒にさせておいてください。
「よかった! ちゃんとあった!」
朝の内に、そわそわしていたサヴァイヴは、使用人たちが誰もいない時を見計らい、数日前から準備していたこの箱をここに隠していたのだ。誰にも言っていないので、他の人たちや小動物に見つかり、どこかにいかないか心配していたのである。勿論、そんな彼の可愛らしい行動は筒抜けで、何やらサプライズを考えているような時期当主の意向を組み、庭師などがきちんと見守っていた。
サヴァイヴは、知らないのだ。朝露でその場所が濡れてびしょびしょになるなんて事を。皆で箱を守ってくれていたのでこうして無事なのだ。
「へへへ、ヴィー、よろこんでくれるかなぁ?」
サヴァイヴは、そっと箱を撫でた後、しっかりと胸に抱えて先ほどの場所に戻っていく。すると、地面につかない足をぶらぶらと所在なげにしているイヴォンヌが見えて来た。
「ヴィー、おまたせっ!」
「ヴァイス~。もう、つくなりどこかにいっちゃうんだもの。ゲストをほうっておくなんて、どういうことー?」
「ヴィー……。その、ごめんね……。ぼく……」
いきなり一人にされたイヴォンヌは少し拗ねたように、ツンッと顔を背けて怒ってみせた。けれど、先ほど視界にとらえたサヴァイヴが持っている箱が気になってしょうがない。視線をそちらにチラチラ向けていたけれど、ついに好奇心が上回った。
ベンチに座らずに、怒った彼女の様子にハラハラしているサヴァイヴをしっかり真正面からとらえて、首をかしげながらニッと笑った。
「もういいよ!」
あからさまにホッとしたサヴァイヴは、彼女の隣にちょこんと座った。膝の上に持って来た箱をのせて、箱と彼女を交互に見つめる。
「……? いったいどうしたの?」
「えっとね。ぼくね、このあいだもりで、かりをひとりでさいごまで、できたんだ!」
「わぁ! ひとりで? すっごーい!」
仲良しの彼が、同い年なのに狩りを成功させた事に、先ほどまでの拗ねた気分や、おかしと彼の持つ箱の存在も忘れて手を叩きながら、自分の事のように喜んだ。
「へへへ……。で、でね。いちばんさいしょにかりのせいかを、ヴィーにあげたくって。けがわもきれいにとれたから、さむいときに、これをつかってほしいんだ」
そう言って、照れながら持って来た箱をずいっと彼女に差し出した。
「え? だって、さいしょのかりのって……。おばさまにはいいの?」
「うん。えっとね……、ぼく、ヴィーにあげたいってずっとおもっていたから、ははうえもそうしなさいって。ははうえには、つぎのえものをあげるから! だから、その。もらってくれる?」
「ヴァイス……!」
イヴォンヌは、サヴァイヴが渡してくれたプレゼントも嬉しかったが、何よりも彼の気持ちが嬉しいと心が弾む。
「ありがとう! いいのかしら? でも、とってもうれしい!」
あまりの嬉しさに、彼に抱き着いた。やや勢いがあったため、彼の体に体当たりのようになった。だが、普段から鍛えている彼の体は、少々ぐらついたもののしっかり同じ体格ほどの少女を受け止める。
「ヴィー! ちょ、ちょっと」
「ありがとう! ありがとう! たいせつにするね!」
「うん! そういってくれて、よろこんでくれて、ぼくもうれしい!」
抱き着いて暫くすると、イヴォンヌは彼から離れた。顔を赤くしたサヴァイヴが、仕切り直しにプレゼントをしっかり手渡す。
「あけてみて!」
わくわくと、イヴォンヌが箱を壊さないように、落とさないように開けると、そこにはまっしろなつややかな毛皮で出来た首巻きがあった。
「わぁ……。きれーい。すっごいスベスベ……」
ふわふわのそれを、撫でたり頬に当ててみるとまるでビロードのようだ。今日の日差しはとても強くじりじりと肌に容赦なく太陽の光がささっている。だが、毛皮はややひんやりとしていて気持ちがいい。そのまま首にそっと巻き付けた。
まっしろな毛皮に日が反射して、輝いているような彼女の微笑んだ姿を見て、サヴァイヴはなぜだかとても胸が熱くなっていたのであった。
※何の毛皮かは、かわいそうなのでずっと内緒にさせておいてください。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼馴染の許嫁
山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。
彼は、私の許嫁だ。
___あの日までは
その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった
連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった
連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった
女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース
誰が見ても、愛らしいと思う子だった。
それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡
どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服
どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう
「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」
可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる
「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」
例のってことは、前から私のことを話していたのか。
それだけでも、ショックだった。
その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした
「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」
頭を殴られた感覚だった。
いや、それ以上だったかもしれない。
「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」
受け入れたくない。
けど、これが連の本心なんだ。
受け入れるしかない
一つだけ、わかったことがある
私は、連に
「許嫁、やめますっ」
選ばれなかったんだ…
八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる