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しとやか未満の姫と騎士の卵⑥
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サヴァイヴは、イヴォンヌと楽しく会話をしている最中だというのにも拘らず、夜を思い出し、最後の瞬間、成長しただろう大人の顔と体になった目の前の幼馴染を妄想してしまった事に愕然となった。
「ヴァイスったら、聞いているの?」
「え? あ……。ご、ごめん!」
── 一体、何を考えてんだっ!
慌てて体を揺らし、心は入り乱れて首筋まで真っ赤になる。
「やっぱり、疲れているんじゃない?」
イヴォンヌが、サヴァイヴの邪な考えなどお構いなしに、ただ純粋に心配して手を差し伸べてくる。
白い手が額に当てられ、彼女の体が側に来てしまい、どくんどくんと、まるで体全体が心臓になったかのような感覚に陥った。
──だめだ、ヴィーは違う! あんなんじゃない! ヴィーは、俺のヴィーはあんな事しないっ!
閨で乱れ、自分に翻弄される女性の姿と、無垢な彼女は全く一致しない。であるにもかかわらず、どうしてもほんの少し覗いた白い肌、ぷるんとした小さな唇に視線が行く。
──ヴィーは絶対に違う! あんな事、ヴィーにだなんて……! ダメだっ!
サヴァイヴが、幼い頃から知っている穢れを知らないイヴォンヌを、夜ごと自分を淫らに誘う女性にように思ってはいけないと思えば思うほど、彼女の吐息の一つすら意識してしまい胸と下半身に熱がこもった。
「あ……!」
サヴァイヴは、さっと立ち上がり、急に立たれたイヴォンヌが目を丸くして見上げているのを、視界にとらえつつ、慌ててそっぽを向く。
「俺、そう、やっぱり、疲れて……。うん、疲れたんだ。ごめん、今日はもう休む、よ!」
やばい……
股間が盛り上がりそうになり、慌ててイヴォンヌに背を向けた。
「大丈夫なの?」
立ち上がり、付き添おうとする優しい彼女の純粋な気持ちが今は眩しすぎて、恥ずかしくて嫌だった。
ともすれば、清らかな彼女を組み敷きたいと思いそうになる汚らわしい自分を絶対に気づかれたくなくて、挨拶もそこそこにイヴォンヌから逃げるようにその場を去って行ったのである。
その時の、イヴォンヌの表情など知らずに。
※※※※
大人の女性の肌を求めている間はイヴォンヌの事を忘れられた。こんな自分を知られたくない、前みたいに何も知らない頃のように彼女の側にいたいと思いながらも、甘い肌と体液、そして、快楽と女を全面に出し男の自尊心をくすぐる言葉に酔いしれていった。
ある日から、ぴたりと彼女がサヴァイヴのベッドに現れる事がなくなった。
「クロヴィス先生、一体どういう事なんですか!」
「入れ込みすぎです。あの女性には領主様から、当初の予定よりも多くの謝礼金が支払われました。……いいですか? 間違えてはいけません。ぼっちゃんがその子種を与えるのは妻になる方です。子が出来れば、好いた女性は愛人になさるといいでしょう。ただ、愛人にするにしてもお相手をお選びください」
「そんな! だって……」
彼の相手の女性は、年下の可愛いサヴァイヴが一心不乱に自分を求めてくるので、恋人のような関係になるよう、彼をもっと自分の体にのめり込ませせるため、言葉を巧みに操り、幼い少年の精神をコントロールしているように見えた。
衝立越しに、小さな囁きほどの彼女の声は、クロヴィスに全て聞こえていたのである。
本来、そうならないように幼い未熟な精神の彼を上手く誘導しなければならないというのに、どういう事だと疑念が沸く。
彼女の目的はなんなのか。事前に調査はしていたが、直ぐ様もっと詳しく調べあげられた。
このまま相手を続けさせると、サヴァイヴにとってよくない事態になりかねない。
どのような些事であっても、戦の絶えないこの辺境の領主となる者、部下や領民にとって弱点や致命傷になる可能性がある物は排除せねばならないのだ。
「今後も、閨の女性は用意致します。ただ、彼女はもうダメです」
「なぜ? 期間限定で、まだその期間中だっただろう? 見知らぬ新しい女性より彼女の方が……。それに愛人など考えた事もない」
「好意を持つお方は今後も現れるでしょう。けれど、彼女のような立場の女性は愛人としてであっても決して側においてはいけません。いずれ、妻になる方を好きになり、愛し慈しんでいただきたい。しかし、心だけはどうにもならないのです。だからといって、最大の支援者になるであろう妻以外に心を寄せすぎて妻を蔑ろにしてはならないのです、絶対に。ですから、彼女の事はお忘れください。いいですね?」
クロヴィスは、お気に入りの女性を引き離されて激昂したり悲しむというよりも、突然の事態に混乱している様子のサヴァイヴにそう諭しながら、執務室で領主と対峙した彼女の様子を思い出す。
「ヴァイスったら、聞いているの?」
「え? あ……。ご、ごめん!」
── 一体、何を考えてんだっ!
慌てて体を揺らし、心は入り乱れて首筋まで真っ赤になる。
「やっぱり、疲れているんじゃない?」
イヴォンヌが、サヴァイヴの邪な考えなどお構いなしに、ただ純粋に心配して手を差し伸べてくる。
白い手が額に当てられ、彼女の体が側に来てしまい、どくんどくんと、まるで体全体が心臓になったかのような感覚に陥った。
──だめだ、ヴィーは違う! あんなんじゃない! ヴィーは、俺のヴィーはあんな事しないっ!
閨で乱れ、自分に翻弄される女性の姿と、無垢な彼女は全く一致しない。であるにもかかわらず、どうしてもほんの少し覗いた白い肌、ぷるんとした小さな唇に視線が行く。
──ヴィーは絶対に違う! あんな事、ヴィーにだなんて……! ダメだっ!
サヴァイヴが、幼い頃から知っている穢れを知らないイヴォンヌを、夜ごと自分を淫らに誘う女性にように思ってはいけないと思えば思うほど、彼女の吐息の一つすら意識してしまい胸と下半身に熱がこもった。
「あ……!」
サヴァイヴは、さっと立ち上がり、急に立たれたイヴォンヌが目を丸くして見上げているのを、視界にとらえつつ、慌ててそっぽを向く。
「俺、そう、やっぱり、疲れて……。うん、疲れたんだ。ごめん、今日はもう休む、よ!」
やばい……
股間が盛り上がりそうになり、慌ててイヴォンヌに背を向けた。
「大丈夫なの?」
立ち上がり、付き添おうとする優しい彼女の純粋な気持ちが今は眩しすぎて、恥ずかしくて嫌だった。
ともすれば、清らかな彼女を組み敷きたいと思いそうになる汚らわしい自分を絶対に気づかれたくなくて、挨拶もそこそこにイヴォンヌから逃げるようにその場を去って行ったのである。
その時の、イヴォンヌの表情など知らずに。
※※※※
大人の女性の肌を求めている間はイヴォンヌの事を忘れられた。こんな自分を知られたくない、前みたいに何も知らない頃のように彼女の側にいたいと思いながらも、甘い肌と体液、そして、快楽と女を全面に出し男の自尊心をくすぐる言葉に酔いしれていった。
ある日から、ぴたりと彼女がサヴァイヴのベッドに現れる事がなくなった。
「クロヴィス先生、一体どういう事なんですか!」
「入れ込みすぎです。あの女性には領主様から、当初の予定よりも多くの謝礼金が支払われました。……いいですか? 間違えてはいけません。ぼっちゃんがその子種を与えるのは妻になる方です。子が出来れば、好いた女性は愛人になさるといいでしょう。ただ、愛人にするにしてもお相手をお選びください」
「そんな! だって……」
彼の相手の女性は、年下の可愛いサヴァイヴが一心不乱に自分を求めてくるので、恋人のような関係になるよう、彼をもっと自分の体にのめり込ませせるため、言葉を巧みに操り、幼い少年の精神をコントロールしているように見えた。
衝立越しに、小さな囁きほどの彼女の声は、クロヴィスに全て聞こえていたのである。
本来、そうならないように幼い未熟な精神の彼を上手く誘導しなければならないというのに、どういう事だと疑念が沸く。
彼女の目的はなんなのか。事前に調査はしていたが、直ぐ様もっと詳しく調べあげられた。
このまま相手を続けさせると、サヴァイヴにとってよくない事態になりかねない。
どのような些事であっても、戦の絶えないこの辺境の領主となる者、部下や領民にとって弱点や致命傷になる可能性がある物は排除せねばならないのだ。
「今後も、閨の女性は用意致します。ただ、彼女はもうダメです」
「なぜ? 期間限定で、まだその期間中だっただろう? 見知らぬ新しい女性より彼女の方が……。それに愛人など考えた事もない」
「好意を持つお方は今後も現れるでしょう。けれど、彼女のような立場の女性は愛人としてであっても決して側においてはいけません。いずれ、妻になる方を好きになり、愛し慈しんでいただきたい。しかし、心だけはどうにもならないのです。だからといって、最大の支援者になるであろう妻以外に心を寄せすぎて妻を蔑ろにしてはならないのです、絶対に。ですから、彼女の事はお忘れください。いいですね?」
クロヴィスは、お気に入りの女性を引き離されて激昂したり悲しむというよりも、突然の事態に混乱している様子のサヴァイヴにそう諭しながら、執務室で領主と対峙した彼女の様子を思い出す。
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