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10 無垢に戻った婚約者 ※R要素あり
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本当なら、とっくに愛する人と最後までしていたはずだった。でも、スタートラインどころか、マイナスから始まった彼女との関係。
手を握ることすら恥ずかしがられてしまい、もっと深く触れたいのにと毎日ヤキモキしていた。
王子のおかげで、待ちに待ったその日がようやく来ると思うと、下半身が制御ぎりぎりになっていた。訓練に精を出してそれを発散していたものの、まさか、彼女のほうからお誘いが来るとは思わなかった。
嬉しさのあまり、がっつきそうになるのを抑えて、からかってしまった。
恥ずかしがり屋の彼女のことだ。本当に露天風呂に水着で来るだなんて、完全に想定外だった。しかも、百貫以上のぽっちゃりだったころの、伸びに伸びた生地が薄くなった自分のシャツつきで。
ただでさえ、夜のことを思うと、体を洗いながらも股間が大きくなっていたのに、ぎゅんっと天を向いたのは言うまでもない。
待つように、彼女が側に来るのを止めた。たしかに止めたのに、ずかずか近づいて、背中を洗ってきた。
んしょ、んしょと、かわいい声で一生懸命背中を流してくれる彼女の姿が嬉しくて、そのまま洗ってもらっていたのが失敗だった。いや、この場合、大成功というべきか。
背中だけでなく、別の場所にまで手が伸びてきた。ふにゃっと柔らかい胸が背中に押し付けられる。
泡のついた白く細い腕が見えて、もうがまんの限界がさらに振り切れたのは言うまでもない。
前もだが、鍛えた僕の力に適うはずもなく、彼女の小さな体を膝の上に乗せた。後ろから、前のように胸をかわいがると、前と同じ反応を見せてくれる。
ますます嬉しくなって調子に乗り過ぎたと後悔したのは、血が出たと言われた瞬間だった。
彼女にとっては、僕に触れられるのはハジメテも同然だったのに。結局、がっついたみっともない男になってしまったと、下半身も含めて体中の血の気がひいた。
「カティちゃん。さっき僕が言ったのは、女性の大切な日のことじゃないんだ」
「じゃあ、なんなの? 水でも泡でもないんでしょ?」
「んー……」
どう説明したものか迷う。あのまま、とろとろにとろけさせてしまえば良かったのかもしれない。口で説明するには少々憚られるため、彼女を抱いたまま湯船につかった。
ふたりとも、すっかり、色めいた気分は引っ込んでしまった。さっきまでのアレが嘘のようだ。
タッセルが手を見せたあと、彼女は自分でも足の間を確認してホッとしていた。
「カティちゃん。血なんて出ていないでしょ?」
「うん」
こういうことの教育を、僕にまかせっきりだった彼女の周囲を少々恨んでしまう。以前は、少しずつ触れていた。だから、彼女も徐々に知っていったことが多い。
前には聞かれたことがない内容に、どう説明すればいいのか内心、頭を抱えた。
「あれは、女性が、男性を受け入れるための準備なんだよ」
「準備?」
「うん。カティちゃんが、僕を受け入れてくれている証拠。つまり、僕たちの赤ちゃんを授かるための大事なものなんだ」
「そうなの?」
箱入り娘の彼女の友達も、類友で遊んでいないから、こういうことには考えられないほど疎いのは知っていた。ふと、一抹の不安が彼を襲う。
「あー……もしかして、赤ちゃんがどうやって授かるのか知らなかったり?」
せめて、基本的なことは知っていて欲しいと、恐る恐る訊ねてみる。すると、彼女は彼を振り返り、少し恥ずかしそうにしながらも、自信満々で答えた。
「いくらなんでも知ってるわよ。結婚した男女が、結婚してなくても、一緒のベッドで眠ることでしょ? あ、えっと。友達がこっそり貸してくれた大人の本には、さっきみたいに、お胸に触れたり、裸で、おしりとおなかをくっつけている挿絵があったわ」
「まさかの、そこからかー! そうか、僕との記憶がなくなったから……え、ふりだしにもどる感じ?」
恥ずかしさのあまり、頬に手をあてつつ答えた彼女の言葉に、タッセルはかわいいと思いつつ叫んでしまった。
「ターモくん? ひょっとして違うの?」
「違わなくもないけど、それだけじゃないんだよー」
「えっと。お母様や友人たちは、ターモくんに任せておけばいいって言ってたから……。やっぱり、詳しい先生に習っておくべきだったかしら?」
タッセルは、カーテが授業と称して慣れた男にアレコレされる想像をしてしまった。そんなこと許せるはずがない。
「そんなもの、必要ない。ああ、そうだとも。お義母様やご友人たちの言う通り、僕に任せておけばいいからね」
「うん……あのね、忘れちゃっててごめんなさい」
「謝らないでね。こういうことも、カティちゃんにとってはハジメテだってことを忘れてた僕だけが悪い。ごめんね。でも、安心して。僕が、これから全部教えてあげるから」
「うん。お願いします」
ふふっとふたりで微笑み合う。温まった体と心のままに、ふたりは露天風呂からあがった。
手を握ることすら恥ずかしがられてしまい、もっと深く触れたいのにと毎日ヤキモキしていた。
王子のおかげで、待ちに待ったその日がようやく来ると思うと、下半身が制御ぎりぎりになっていた。訓練に精を出してそれを発散していたものの、まさか、彼女のほうからお誘いが来るとは思わなかった。
嬉しさのあまり、がっつきそうになるのを抑えて、からかってしまった。
恥ずかしがり屋の彼女のことだ。本当に露天風呂に水着で来るだなんて、完全に想定外だった。しかも、百貫以上のぽっちゃりだったころの、伸びに伸びた生地が薄くなった自分のシャツつきで。
ただでさえ、夜のことを思うと、体を洗いながらも股間が大きくなっていたのに、ぎゅんっと天を向いたのは言うまでもない。
待つように、彼女が側に来るのを止めた。たしかに止めたのに、ずかずか近づいて、背中を洗ってきた。
んしょ、んしょと、かわいい声で一生懸命背中を流してくれる彼女の姿が嬉しくて、そのまま洗ってもらっていたのが失敗だった。いや、この場合、大成功というべきか。
背中だけでなく、別の場所にまで手が伸びてきた。ふにゃっと柔らかい胸が背中に押し付けられる。
泡のついた白く細い腕が見えて、もうがまんの限界がさらに振り切れたのは言うまでもない。
前もだが、鍛えた僕の力に適うはずもなく、彼女の小さな体を膝の上に乗せた。後ろから、前のように胸をかわいがると、前と同じ反応を見せてくれる。
ますます嬉しくなって調子に乗り過ぎたと後悔したのは、血が出たと言われた瞬間だった。
彼女にとっては、僕に触れられるのはハジメテも同然だったのに。結局、がっついたみっともない男になってしまったと、下半身も含めて体中の血の気がひいた。
「カティちゃん。さっき僕が言ったのは、女性の大切な日のことじゃないんだ」
「じゃあ、なんなの? 水でも泡でもないんでしょ?」
「んー……」
どう説明したものか迷う。あのまま、とろとろにとろけさせてしまえば良かったのかもしれない。口で説明するには少々憚られるため、彼女を抱いたまま湯船につかった。
ふたりとも、すっかり、色めいた気分は引っ込んでしまった。さっきまでのアレが嘘のようだ。
タッセルが手を見せたあと、彼女は自分でも足の間を確認してホッとしていた。
「カティちゃん。血なんて出ていないでしょ?」
「うん」
こういうことの教育を、僕にまかせっきりだった彼女の周囲を少々恨んでしまう。以前は、少しずつ触れていた。だから、彼女も徐々に知っていったことが多い。
前には聞かれたことがない内容に、どう説明すればいいのか内心、頭を抱えた。
「あれは、女性が、男性を受け入れるための準備なんだよ」
「準備?」
「うん。カティちゃんが、僕を受け入れてくれている証拠。つまり、僕たちの赤ちゃんを授かるための大事なものなんだ」
「そうなの?」
箱入り娘の彼女の友達も、類友で遊んでいないから、こういうことには考えられないほど疎いのは知っていた。ふと、一抹の不安が彼を襲う。
「あー……もしかして、赤ちゃんがどうやって授かるのか知らなかったり?」
せめて、基本的なことは知っていて欲しいと、恐る恐る訊ねてみる。すると、彼女は彼を振り返り、少し恥ずかしそうにしながらも、自信満々で答えた。
「いくらなんでも知ってるわよ。結婚した男女が、結婚してなくても、一緒のベッドで眠ることでしょ? あ、えっと。友達がこっそり貸してくれた大人の本には、さっきみたいに、お胸に触れたり、裸で、おしりとおなかをくっつけている挿絵があったわ」
「まさかの、そこからかー! そうか、僕との記憶がなくなったから……え、ふりだしにもどる感じ?」
恥ずかしさのあまり、頬に手をあてつつ答えた彼女の言葉に、タッセルはかわいいと思いつつ叫んでしまった。
「ターモくん? ひょっとして違うの?」
「違わなくもないけど、それだけじゃないんだよー」
「えっと。お母様や友人たちは、ターモくんに任せておけばいいって言ってたから……。やっぱり、詳しい先生に習っておくべきだったかしら?」
タッセルは、カーテが授業と称して慣れた男にアレコレされる想像をしてしまった。そんなこと許せるはずがない。
「そんなもの、必要ない。ああ、そうだとも。お義母様やご友人たちの言う通り、僕に任せておけばいいからね」
「うん……あのね、忘れちゃっててごめんなさい」
「謝らないでね。こういうことも、カティちゃんにとってはハジメテだってことを忘れてた僕だけが悪い。ごめんね。でも、安心して。僕が、これから全部教えてあげるから」
「うん。お願いします」
ふふっとふたりで微笑み合う。温まった体と心のままに、ふたりは露天風呂からあがった。
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