完結 R18 さっぱり記憶にございませんっ!〜眼の前のだらし騎士(ナイト)は、私の婚約者らしい

にじくす まさしよ

文字の大きさ
13 / 21

11 ※R要素の続き

しおりを挟む
 タッセルに抱えられて脱衣所に向かう。体を拭くために、一旦降ろされた。ちらっと彼を見ると、腰に当てていたタオルは落ちたままなので、当然のことながら全裸だ。

 足の付根には、自分にはないものがぶら下がっている。すぐに手で顔を隠すが、気になって指に小さな隙間をつくってこっそり見てしまった。初めて見る(実際は初めてじゃないらしいけれども)彼の象徴の大きさと、見慣れない存在そのものにドキドキした。

「カティちゃん、シャツがずぶ濡れだね。拭いてあげるから、脱いで」
「あ、オカマイナク。ジブンでフキマス」

 側にあったバスタオルを手に持つ。そのバスタオルを取ろうとされたが、渡さなかった。

「んしょ……」

 濡れてしまったシャツが、肌にはりついていて脱ぎづらい。なんとか脱ぐと、どぼどぼと水が滴り落ちた。水着もずぶ濡れだが、彼の側では脱ぐのは恥ずかしすぎたため、着たままどうしようか悩んでいると、あっという間に服を着た彼が、にこにこ服を差し出してきた。

「カティちゃん、僕外で待ってようか?」

 記憶を失う前は、全てを見せ合っていたようなので、彼がこう言ってくれるとは思わなかった。

(ターモくん、私の着替えのために配慮してくれるんだ。やっぱり、優しいなぁ)

 当然のように着替えさせられるかもと身構えていたのだが、肩の力が抜ける。少し残念なような気もしたが、彼が外に出ている間に服を着た。

「お待たせ」

 ドアを開くと、少し離れたところに彼はいた。湯上りの体は、まだまだ温かいようで、肌が桃色に染まっていて色気があると思う。

「カティちゃん、髪の毛が乾いてないじゃないか。すんごく色っぽくて素敵だけど、風邪ひくよ。早く部屋に戻ろう」
「うん」

 あっという間に横抱きにされた。侍女たちが言うには、以前の彼は、ここまで力も体力もなかったらしくて、私を抱えるとぷるぷる震えていたらしい。
 今は、一年前とは比べものにならないほど力強くてがっしりしている。安定している彼の腕の中は、とても安心できる場所になった。

「重いから降りるわ」
「軽いよー。カミングアウトするとね、前はさ、大きいのは肉だったし、完全に見かけだけでひ弱だったんだ。今ほど力がなかったからやせ我慢で抱っこしていたんだよね。僕、鍛えて良かったと思う。体調もものすごく良くなったんだよ」
「ふふふ、ターモくんが嫌々訓練してなくて良かったわ。かなり苦しそうだったけど。体にとっても良い結果なら、私と一緒に長生きしてね」
「うん、そうする」

 幸せそうに微笑む彼に、ちゅっとキスをされる。彼よりも幸せなのは自分のほうだとキスを返した。

 部屋に戻る途中、すれ違う人たちからびっくりして二度見された。我ながら、ここまで彼と甘い雰囲気になったのは初めてだ。しかも、全員母からそれとなく知らされているのだろう。そそくさと立ち去っていく。

「わぁ……」

 一体、いつの間に準備したのだろうか。もしかして、陰で見られていたかと思えるほど、部屋の中は普段とは違っていた。

「ベッドに花びら? カティちゃん、最近は花びらをまいて寝るのが、女の子たちの間で流行っているの?」
「……流行ってない、と思う」

 花びらだけでは絶対にありえない、甘い香りが部屋にほのかに漂っている。ベッドに散りばめられているのは、バラだけでなく、イランイランなどの花もあった。恐らく、媚薬効果があるとされる花の香りを仕込んだに違いない。

(お母様ー。孫の催促が最近あまりないと思ったら、実力行使に出たのね?)

「ははは、ちょーっと、お花の香りが強いかしらー。換気する?」
「気にならないよ。甘くていい香り……。風呂上りだからかな……」

 すんすんと、部屋に漂う花ではなく、カーテの首筋の香りをかぐ。鼻息と熱い吐息がかかりくすぐったい。紛らわせるために、もじもじ足をこする合わせた。

「カティちゃん、僕、なんだか、ちょっとあつくなってきた……」
「はえぇ? そんな、速攻で効くとか! ターモくん、ちょっと新鮮な空気を吸おう!」
「空気よりも、カティちゃんを吸いたい」

 せっかく静まった桃色の雰囲気や、体の変化が色づいたようだ。オイルや香水に慣れている自分とは違い、彼は、こういう香りには弱いのだろう。

 ぎゅうっと抱きしめられて、キスをされた。完全に媚薬にやられてしまっているようだ。

 さっきよりは太陽は沈みかかっている。だが、まだまだ明るい。

「た、ターモくん。御飯がまだ、だから。ね?」
「ごはん……?」

 タッセルは、なんだかんだで食べることが大好きなのだ。トレーニングしていても、たくさん食べていたし、空腹の時には、若干気分が下がっている。そんな彼は、ごはんというワードに反応した。

「うん。おいしそうなごはん……」
「そう、ご、ひゃぁんっ!」

 彼は、いただきまーすと小声で言ったと同時に、カーテの首筋をぱくっと食べた。軽く歯を当ててはむはむしている。

「美味しい……もっと」
「お、美味しくないと、おもうんだけぇ、どっ!」

 媚薬のせいで、彼は錯乱状態になっているのかもしれない。ちゅうっと首筋を吸い付かれてチクリと肌が痛む。なんとか正気に戻したいとばたばた手足を動かすが、効果は全くなかった。

(うう、彼が正気じゃないときにハジメテだなんて……。こんなことなら、さっき露天風呂でいたしちゃったほうがよかったー)

「はぁ、カティちゃん。僕、あつい……」
「ターモくん……。落ち着いてぇ……って言ってもこうなっちゃったら、もう無理かな……」

 さっきよりも、彼の吐息が熱い。しゅんとしていたはずの、彼のカレも元気に立ち上がっていた。普段は優しい声がとても苦しそうで、少しでも楽になって欲しくなる。

「あついんだ……」
「うん、ターモくん。私も熱い、よ」

 本当なら、とっくに結ばれていた人だ。媚薬によって苦しそうにしている彼の唇を覆うようにキスを返した。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

旦那様は、転生後は王子様でした

編端みどり
恋愛
近所でも有名なおしどり夫婦だった私達は、死ぬ時まで一緒でした。生まれ変わっても一緒になろうなんて言ったけど、今世は貴族ですって。しかも、タチの悪い両親に王子の婚約者になれと言われました。なれなかったら替え玉と交換して捨てるって言われましたわ。 まだ12歳ですから、捨てられると生きていけません。泣く泣くお茶会に行ったら、王子様は元夫でした。 時折チートな行動をして暴走する元夫を嗜めながら、自身もチートな事に気が付かない公爵令嬢のドタバタした日常は、周りを巻き込んで大事になっていき……。 え?! わたくし破滅するの?! しばらく不定期更新です。時間できたら毎日更新しますのでよろしくお願いします。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

聖女は秘密の皇帝に抱かれる

アルケミスト
恋愛
 神が皇帝を定める国、バラッハ帝国。 『次期皇帝は国の紋章を背負う者』という神託を得た聖女候補ツェリルは昔見た、腰に痣を持つ男を探し始める。  行き着いたのは権力を忌み嫌う皇太子、ドゥラコン、  痣を確かめたいと頼むが「俺は身も心も重ねる女にしか肌を見せない」と迫られる。  戸惑うツェリルだが、彼を『その気』にさせるため、寝室で、浴場で、淫らな逢瀬を重ねることになる。  快楽に溺れてはだめ。  そう思いつつも、いつまでも服を脱がない彼に焦れたある日、別の人間の腰に痣を見つけて……。  果たして次期皇帝は誰なのか?  ツェリルは無事聖女になることはできるのか?

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

二度目の初恋は、穏やかな伯爵と

柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。 冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。

【完結】ハメられて追放された悪役令嬢ですが、爬虫類好きな私はドラゴンだってサイコーです。

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
 やってもいない罪を被せられ、公爵令嬢だったルナティアは断罪される。  王太子であった婚約者も親友であったサーシャに盗られ、家族からも見捨てられてしまった。  教会に生涯幽閉となる手前で、幼馴染である宰相の手腕により獣人の王であるドラゴンの元へ嫁がされることに。  惨めだとあざ笑うサーシャたちを無視し、悲嘆にくれるように見えたルナティアだが、実は大の爬虫類好きだった。  簡単に裏切る人になんてもう未練はない。  むしろ自分の好きなモノたちに囲まれている方が幸せデス。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

処理中です...