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時は4989年。この年、異星人が世界に恐怖をもたらした。UMAと呼ばれるこの集団は、身長30mのシロアリの形をしている。
顔だけ人類と同じで、彼らの代表である女王は、愛らしく美しい少女の顔をしていた。
今、わたくしは後輩とともに、UMAを倒すべく人類の希望であるキュービクルに乗り込んでいる。
キュービクルというのは、全長25メートル、総重量3トンの変形ロボットだ。本体から着脱可能な二人乗り飛空艇がコクピットになっており、はるか古の時代、同じような未曾有の危機が訪れた時代に作られたものである。
今回、UMAに立ち向かうために、各国が協力して古代遺跡からキュービクルを発掘した。しかし、数多のキュービクルは草や苔のための老朽化と錆のせいで動かなかった。修復しようにも、古代の精密な技術に現代の科学者や技術者では舌を巻くばかり。
かろうじて2機だけが動いたため、適正のある少女たちを集めて各地で訓練を行っている。
キュービクルの座席は、女性、しかも未成年の少女しか座れない。しかも、動力源となる力の源が、清らかな乙女にしか生み出せないのである。
わたくしは、今年成人になるため選考から外れると思っていた。だが、清らかな少女全員が受けるテストに合格してしまい、数多の訓練生の中から4名を決めるための最終選考まで駆け抜けることができた。
訓練所が発足された当初は5万人いた少女たちは、定期的に行われるテストでことごとく不合格になったり、戦いが嫌な少女の中には純血をわざと失う者も大勢いたようだ。
彼女たちの気持ちはわからないでもないが、全人類の未来を背負った栄誉ある任務を自ら放棄するなど考えられず、残ったわたくしたちは日夜努力を繰り返した。
今残る訓練生は、わたくしと後輩、そして10名だ。正式にキュービクルに乗り込む4人を選ぶべく、最終試験を受けている真っ最中なのである。
レバーやボタンを駆使し、四方八方から迫りくる、敵の攻撃を交わしつつ、コロニーのトップに狙いを定める。
ピピピッという機械の音とともに、前方のロボットに照準をあわせていく。ほとんどオートで照準を決めるのだが、前方のUMAの中にも、こちらの攻撃を予測して避ける凄腕がいるのだ。
己の技術と知識、そして駆け引きと運が勝敗を決める。その一瞬を狙っているものの、なかなか定まらず、小さな舌打ちをした。
キュービクルのコクピットの壁は、360度外の様子を映し出しているモニターで埋め尽くされており、宇宙空間に浮いているかのよう。
「おねえさま、2時の方向、小規模集団が来ています!」
「わかっていてよ、カエリズミ」
今まさに、敵を捕らえて必殺技を放とうとした時、敵のやや小さな雑魚たちの攻撃によって阻まれる。
わたくしは、もう少しで倒せそうだった敵から、一旦雑魚にロボットの向きを変えて、飛来してきたミサイルを根こそぎ薙ぎ払った。
ひとふりの腕の操作だけで、膨大なパワーが失われていく。もっとパワーが必要だ。わたくしは懇親の力を振り絞った。
コクピットが光り輝き、電流のようなものがわたくしたちの体を覆う。
「う”、あ”ああああっ!」
「ん””……お、ねぇ、さまぁっ!」
巨大ロボットを操る動力源は、わたくしたちのエナジーそのものだ。生命力とは違うが、本能のようなその力を解放する必要があった。
全力でその力を解放すれば、あっという間に疲れ果てるため、雑魚ごときになどフルパワーを使うはずがない。とはいえ、多少の疲労がわたくしたちを襲った。
「やった……はぁ、今度こそ、敵を撃ち抜くわよ。あと少し、がんばってカエリズミ」
「はぁ、はぁ……はい、おねえさまっ!」
隣に座るのは、わたくしと同じパイロット候補生のカエリズミ。彼女は、パイロット養成所に入学するなり頭角を表した。
数名や貴重なキュービクルを、無為無策になくすわけにはいかない。
だから、今わたくしたちが戦っているのは、画面に映し出された、シュミレーターなのだ。
UMAのラスボスに似せた少女の額に、渾身の技が決まる。人類と同じ、しかも可憐な少女の顔を撃つのは心が痛む。だが、わたくしにとってはラスボスたちの顔は、好都合以外の何物でもない。私個人の積年の恨みも込めた。
「おねぇさま、いきます、AイントゥーB! コンヴァート!」
「ええ、よろしくてよ。オールオーケー、3.2.1……」
「い…………っけぇえええええっ!」
「超電導攻撃!」
わたくしたちの放った必殺技が、模擬UMAを撃墜する。
「はあはあ、やった、やりました! おねえさま、やったー!」
「ええ、良く頑張ったわね」
コントローラーから手を離して、キュービクルと自身を一心同体にするoneと呼ばれるカチューシャを取った。
「最終選考、合格するでしょうか……」
「わたくしたちは、できるかぎりのベストを尽くしたわ。あとは、発表を待ちましょう」
「はい……」
わたくしだって、他の訓練生も優秀だから、合格するかどうか不安だ。でも、庶民のカエリズミは、わたくしたちと違ってどうしても選ばなければ、金銭などの問題もあって不安が強いのだろう。
わたくしは、自身ありげに胸を張って不敵に微笑み、手のひらを彼女に向ける。
そんなわたくしの笑みに応えて、カエリズミもまた満面の笑みでハイタッチをしたのである。
顔だけ人類と同じで、彼らの代表である女王は、愛らしく美しい少女の顔をしていた。
今、わたくしは後輩とともに、UMAを倒すべく人類の希望であるキュービクルに乗り込んでいる。
キュービクルというのは、全長25メートル、総重量3トンの変形ロボットだ。本体から着脱可能な二人乗り飛空艇がコクピットになっており、はるか古の時代、同じような未曾有の危機が訪れた時代に作られたものである。
今回、UMAに立ち向かうために、各国が協力して古代遺跡からキュービクルを発掘した。しかし、数多のキュービクルは草や苔のための老朽化と錆のせいで動かなかった。修復しようにも、古代の精密な技術に現代の科学者や技術者では舌を巻くばかり。
かろうじて2機だけが動いたため、適正のある少女たちを集めて各地で訓練を行っている。
キュービクルの座席は、女性、しかも未成年の少女しか座れない。しかも、動力源となる力の源が、清らかな乙女にしか生み出せないのである。
わたくしは、今年成人になるため選考から外れると思っていた。だが、清らかな少女全員が受けるテストに合格してしまい、数多の訓練生の中から4名を決めるための最終選考まで駆け抜けることができた。
訓練所が発足された当初は5万人いた少女たちは、定期的に行われるテストでことごとく不合格になったり、戦いが嫌な少女の中には純血をわざと失う者も大勢いたようだ。
彼女たちの気持ちはわからないでもないが、全人類の未来を背負った栄誉ある任務を自ら放棄するなど考えられず、残ったわたくしたちは日夜努力を繰り返した。
今残る訓練生は、わたくしと後輩、そして10名だ。正式にキュービクルに乗り込む4人を選ぶべく、最終試験を受けている真っ最中なのである。
レバーやボタンを駆使し、四方八方から迫りくる、敵の攻撃を交わしつつ、コロニーのトップに狙いを定める。
ピピピッという機械の音とともに、前方のロボットに照準をあわせていく。ほとんどオートで照準を決めるのだが、前方のUMAの中にも、こちらの攻撃を予測して避ける凄腕がいるのだ。
己の技術と知識、そして駆け引きと運が勝敗を決める。その一瞬を狙っているものの、なかなか定まらず、小さな舌打ちをした。
キュービクルのコクピットの壁は、360度外の様子を映し出しているモニターで埋め尽くされており、宇宙空間に浮いているかのよう。
「おねえさま、2時の方向、小規模集団が来ています!」
「わかっていてよ、カエリズミ」
今まさに、敵を捕らえて必殺技を放とうとした時、敵のやや小さな雑魚たちの攻撃によって阻まれる。
わたくしは、もう少しで倒せそうだった敵から、一旦雑魚にロボットの向きを変えて、飛来してきたミサイルを根こそぎ薙ぎ払った。
ひとふりの腕の操作だけで、膨大なパワーが失われていく。もっとパワーが必要だ。わたくしは懇親の力を振り絞った。
コクピットが光り輝き、電流のようなものがわたくしたちの体を覆う。
「う”、あ”ああああっ!」
「ん””……お、ねぇ、さまぁっ!」
巨大ロボットを操る動力源は、わたくしたちのエナジーそのものだ。生命力とは違うが、本能のようなその力を解放する必要があった。
全力でその力を解放すれば、あっという間に疲れ果てるため、雑魚ごときになどフルパワーを使うはずがない。とはいえ、多少の疲労がわたくしたちを襲った。
「やった……はぁ、今度こそ、敵を撃ち抜くわよ。あと少し、がんばってカエリズミ」
「はぁ、はぁ……はい、おねえさまっ!」
隣に座るのは、わたくしと同じパイロット候補生のカエリズミ。彼女は、パイロット養成所に入学するなり頭角を表した。
数名や貴重なキュービクルを、無為無策になくすわけにはいかない。
だから、今わたくしたちが戦っているのは、画面に映し出された、シュミレーターなのだ。
UMAのラスボスに似せた少女の額に、渾身の技が決まる。人類と同じ、しかも可憐な少女の顔を撃つのは心が痛む。だが、わたくしにとってはラスボスたちの顔は、好都合以外の何物でもない。私個人の積年の恨みも込めた。
「おねぇさま、いきます、AイントゥーB! コンヴァート!」
「ええ、よろしくてよ。オールオーケー、3.2.1……」
「い…………っけぇえええええっ!」
「超電導攻撃!」
わたくしたちの放った必殺技が、模擬UMAを撃墜する。
「はあはあ、やった、やりました! おねえさま、やったー!」
「ええ、良く頑張ったわね」
コントローラーから手を離して、キュービクルと自身を一心同体にするoneと呼ばれるカチューシャを取った。
「最終選考、合格するでしょうか……」
「わたくしたちは、できるかぎりのベストを尽くしたわ。あとは、発表を待ちましょう」
「はい……」
わたくしだって、他の訓練生も優秀だから、合格するかどうか不安だ。でも、庶民のカエリズミは、わたくしたちと違ってどうしても選ばなければ、金銭などの問題もあって不安が強いのだろう。
わたくしは、自身ありげに胸を張って不敵に微笑み、手のひらを彼女に向ける。
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