完結 R18 セフレ呼ばわりされた私は、不器用な大柄医師に溺愛される 

にじくす まさしよ

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「はぁ、び……っくりしたぁ!」

 部屋に戻り、扉を閉めた。胸がドキドキする。首から上が熱くなっていて、鏡を見ると思った通り真っ赤になっていた。寝る前だからお化粧はしていないから雪で遊んでいる小さな子供の頬っぺたのよう。

 いつもは、すっぴんを省吾さんに見せるなんて事は絶対にしない。さっき、大先生から省吾さんに湿布を渡すように頼まれたから、彼の部屋に向かった。ノックしても反応がないため、お風呂場に行ってみると、脱衣所で誰かが着替えている音がしていたから待つ。音が止み声をかけると、省吾さんがそこにいた。

 省吾さんは、さっきご飯を食べた時よりも顔が腫れていて、とても痛そうだと思った。思わず指を伸ばすと、平然としていた彼の顔が歪む。

 私の想像以上に痛いのを堪えていたんだと思うと、堪らなくなった。すぐに湿布を貼ってあげなきゃいけないという思いでいっぱいになり、自分でするから大丈夫だと断る彼をひっぱった。

 初めて入る彼の部屋は、分厚い医学書やラグビーのグッズでいっぱいだ。

  綺麗に片付けられた部屋の壁には、八郎丸という私でも知っている有名なラガーマンのポスターが貼られている。ボールを持って走るワンシーンは、力強い生命力と躍動感にあふれていて、まるで省吾さんのようだと思った。
 他にも、省吾さんと一緒に見るようになったラグビーの試合でやっていた、どこかの国のハカとかいう踊りのようなパフォーマンスなど、部屋中がラグビーで溢れかえっていた。

 ベッドに彼を座らせ、大先生から聞いた打撲の場所に湿布を貼っていく。パジャマが邪魔だったから、普通に脱がせた。肩や腕も、筋肉の盛り上がりだけでなく腫れている。
  スースーするハッカのようなにおいのする、冷たくてぶ厚い湿布をペタッと貼ると、彼が湿布を貼るだけで生じる痛みを堪えているのか顔を背けていた。ちらっと見ると、彼の耳まで真っ赤になっていて、とても痛いのかと思ってそうっと優しく貼る。

 背中を確認しようと、うつ伏せになった彼のランニングシャツを思いっきりめくりあげる。すると、逆三角形の見事に鍛え上げられた体が目の前に飛び込んできた。庭で筋トレをしている姿を何度も見ていたけれど、ここまではっきりした体型を見た事はない。
 思わず見惚れてしまい、そっと手を当てた。お兄ちゃんの背中よりも分厚くて硬い背中は、無駄な贅肉が全くなく腰できゅっと締っている。

「……っ!」

 省吾さんの体が大きく揺れて、さらに筋肉が硬く張り詰めた。彼の打撲の処置をしている事を思い出し、無遠慮に触った自分に恥ずかしくなる。

「あ、やっぱりここも打っていたんですね? ここはどうですか?」

 慌てて、自分は打撲の確認をしていただけですよーといった体を取りつくろうように誤魔化しつつ、彼が痛そうにしている個所にペタペタ湿布を貼っていった。

「下半身は自分で出来るから!」
「もうついでですし、太腿とかは貼っちゃいますね」

 決して邪な考えはない。貼り辛いだろうと思ってした、れっきとした看護なのだと言い聞かせつつ、胸がドキドキして湿布の透明のビニールをはがすのも手間取る。
 太腿に貼ろうとすると、ズボンが邪魔になる。裾から託し上げようとしても、太い足がそれを邪魔した。

 ここまできたら、もう引く事はできないと、その時はなぜか頑なになっていた。さっとズボンをずらして湿布を貼る。トランクスの薄い布地が視界にチラチラ入って来て、もう何が何やらわけがわからなくなった。何枚貼ったのだろうか思い出せない。
 気が付けば、省吾さんの体は湿布まみれになっていた。今更はがすわけにもいかず、おやすみなさいと言い捨てて逃げるように部屋まで戻って来たのだった。

「……私の馬鹿馬鹿馬鹿ー。どうしよう。絶対、省吾さんに変な女だって思われちゃったよー……」

 今すぐ記憶を消し去りたい。特に省吾さんの記憶を。過去に戻れるのなら、背中だけパパッと貼って部屋から出て行くのにと、頭を抱えてベッドに潜り込んだ。

 痛そうな省吾さんの姿を見るのは嫌だ。でも、それよりも。昼間のパワフルに動く彼の姿や、さっき見た彼の逞しい肉体ばかりが頭を占める。

「省吾さんはもう寝ちゃったかな……」

 最近、彼の事ばかり考えてしまう自分がいる。資さんを思い出さなくなった代わりどころか、大事な授業中まで省吾さんを思い出してとても困っていた。

 悶々とした居心地の悪さのせいで、ちっとも眠れず目をぎゅっと閉じる。夜がこんなにも長いと思ったのは、1月以来かもしれない。

「おやすみなさい……」

 古い日本家屋の薄暗い光の中でひとり横になっているのに、すぐ側に省吾さんがいてくれるような、そんな安心感と温もりに包まれる。
 いつしかうとうと睡魔がやってきて、その日はとても幸せな夢を見た気がしたのであった。

 翌朝、目が覚めると、おばあちゃんがもう起きていて朝食の準備や玄関の掃除をしていた。

「おばあちゃん、おはようございます!」
「彩音ちゃん、おはよう。いつも悪いわね。もうちょっと眠ってていいのに」
「ふふ、早寝早起きがモットーなんです。今日は、何を作りましょうか?」
「うーん、いつも作りながら適当に考えてるからねぇ……。私が作るとかわり映えがしないから、彩音ちゃんが手伝ってくれるようになって、お父さんも息子たちも喜んでいるから任せていい?」
「はい」

 冷蔵庫を開けると、日本の常備している食材がたくさんあった。しらす入りの卵焼きに、きゅうりとわかめの酢の物、豆腐としめじの白みそのお味噌汁とゴマをたっぷりまぶしたサバの塩焼きを作った。

 関東の味付けは、私にはとても濃く感じる。醤油であとから味を調える事が出来る料理を作ると、やっぱり磯上家の皆は醤油をかけていた。

「彩音ちゃんも大学があるんだから、あまり無理しないようにね」
「彩音ちゃんが苦にならないなら、母も助かるし、美味しいから無理のない程度に作ってくれると嬉しいけどね」
「うちの男たちは、患者さんに塩分控えろって言いつつ、たっぷり醤油をかけちゃってるからねぇ……。彩音ちゃんの料理はそのままでも十分美味しいのに、全く」
「ふふ、どうしても味の好みはありますもんね。もうちょっと味の工夫頑張ります」

 皆で囲む食事はとても楽しい。私から見ると、醤油をドバドバかけている大先生たちの高血圧とかが気になって仕方がない。醤油ぶっかけコースをやめてもらえるような料理を考えないとと思った。

 相変わらず平然としている、省吾さんの顔がまともに見る事が出来ない。湿布は、背中と腰だけ張り替えるのを手伝ったものの、ドキドキして仕方がなかった。

  こんな風に意識しているのは私だけなんだろうなと、ちょっとがっかりして、そんな自分に戸惑ったのであった。

 









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