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第二の男
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アーロンは、暫くの間マリアの隣に座りとりとめのない話を続けた。急速に近づく彼らの心の距離。何よりも、これから夫候補して受け入れてくれるという確約を取り付けたアーロンには心の余裕が生まれ、男慣れしていないマリアを巧みに誘導して心の壁を取り除く。
「マリア、名残惜しいけれど時間だ……。次の相手と交代する。また、あとで」
「はい、アーロン」
アーロンから敬称を取るように懇願されて、すでに名前で呼び合うようになった二人の雰囲気はとても自然でほんのりと甘さを感じる。
アーロンはマリアの手の甲にキスを落とすと、頬に手を当てて視線を交り合わせた後、夜を楽しみにしていると言葉を残して、右側の白いドアに戻っていった。
「はぁ……」
マリアは、彼に会って話をする前とは打って変わって随分打ち解けることが出来たと安堵する。テーブルの上には、アーロンが至れり尽くせりで準備された彼の瞳に似ている紅茶と茶菓子が残っていた。紅茶を一口飲むとほっと息を吐いた。
「いい人で良かった……」
どんな相手かわからないまま会って、ひょっとしたらすぐに行為を始めてしまうのかと戦々恐々としていたけれど、彼はマリアの心が欲しいと言った。
愛して欲しい、と。
恐らくはマリアに合わせて話だけにしてくれたのかもしれないと考えて、彼のそんな気遣いに胸がドキッと軽く高鳴りモゾモゾするようなくすぐったさが生まれた。
「うう、チョロいかも……。でも、いいよね? 夫候補だもん……」
マリアは、ソファに置かれていた丸いクッションを抱えて身もだえしてしまった。
そうしていると、アーロンの左隣のドアから同年代くらいの男性が現れた。
すらりとした可愛らしいといった愛嬌のある顔つき。明るい金の髪は柔らかくウェーブを描いている。その瞳は温かな琥珀の色で人の警戒心を自然と取り除いてしまうような雰囲気を持っていた。
彼は、ソファのマリアを認めると、白い頬をほんのりと桃色に染めてはにかむ。視線を合わせたまま目礼をしたあと対面のソファに腰を下ろした。
「こ、こんにちは。僕の事を覚えていますか……?」
「あ、の……。ごめんなさい……」
この人もマリアを知っているようだ。アーロンの時もそうだったが視線を彼の瞳に置いたまま、彼の事を思いだそうとするが、なにせ求婚者が沢山いた彼女の記憶に残っている男はほとんどいない。申し訳なくなり頭を下げて謝罪した。
「あ、そんなに気にしないでください。マリアさんほどの人なら僕みたいな男など覚えていなくて当然なんです。ただ、あの時に優しくしてくれたのは貴女だけでしたし、その……、ほんの少しは覚えてくれているか勝手に期待していただけで……」
「あ……、はぁ……」
「改めまして、僕は、スティーブ・マクガードと言います。マクガードの直系の次男ですがマクガード病院の経営に携わる事になる予定です」
「まぁ、マクガードの……」
マリアは、少し緊張して話出す彼の姿を見て、おや? と思った。
マクガードといえば、名門の侯爵家であり政財界に著名人を輩出している。とりわけ、マクガード家は世界一の医療機関である大病院を経営しており、世界中から医療を求めてやってくるほどの有名な所だ。
その侯爵家の直系子息であれば、こんな風に自信なさげな性格になるなど珍しい。
「僕は貴女と同い年なんです。あの時は、僕も貴女もまだ学園に入ったばかりの頃で……、その……。恥ずかしい過去なのですが、意を決して求婚させていただいた事があります……」
「え、と……」
「ああ、謝罪は必要ありません。あの頃の僕は家の重圧に耐えて必死で。でも、あんな大きな病院の経営など自信がなくて……。だから、周囲の男たちにも、時々会話する女の子たちにも馬鹿にされたり無視されたりしていましたから……」
「まぁ……」
マリアは、まじまじと目の前の青年を観察した。
今の彼は、会話こそ恐る恐るといった感じではあるものの、体から染み出る雰囲気は、とても、苛められた小心者で後ろ向きな人間には見えない。
「マリア、名残惜しいけれど時間だ……。次の相手と交代する。また、あとで」
「はい、アーロン」
アーロンから敬称を取るように懇願されて、すでに名前で呼び合うようになった二人の雰囲気はとても自然でほんのりと甘さを感じる。
アーロンはマリアの手の甲にキスを落とすと、頬に手を当てて視線を交り合わせた後、夜を楽しみにしていると言葉を残して、右側の白いドアに戻っていった。
「はぁ……」
マリアは、彼に会って話をする前とは打って変わって随分打ち解けることが出来たと安堵する。テーブルの上には、アーロンが至れり尽くせりで準備された彼の瞳に似ている紅茶と茶菓子が残っていた。紅茶を一口飲むとほっと息を吐いた。
「いい人で良かった……」
どんな相手かわからないまま会って、ひょっとしたらすぐに行為を始めてしまうのかと戦々恐々としていたけれど、彼はマリアの心が欲しいと言った。
愛して欲しい、と。
恐らくはマリアに合わせて話だけにしてくれたのかもしれないと考えて、彼のそんな気遣いに胸がドキッと軽く高鳴りモゾモゾするようなくすぐったさが生まれた。
「うう、チョロいかも……。でも、いいよね? 夫候補だもん……」
マリアは、ソファに置かれていた丸いクッションを抱えて身もだえしてしまった。
そうしていると、アーロンの左隣のドアから同年代くらいの男性が現れた。
すらりとした可愛らしいといった愛嬌のある顔つき。明るい金の髪は柔らかくウェーブを描いている。その瞳は温かな琥珀の色で人の警戒心を自然と取り除いてしまうような雰囲気を持っていた。
彼は、ソファのマリアを認めると、白い頬をほんのりと桃色に染めてはにかむ。視線を合わせたまま目礼をしたあと対面のソファに腰を下ろした。
「こ、こんにちは。僕の事を覚えていますか……?」
「あ、の……。ごめんなさい……」
この人もマリアを知っているようだ。アーロンの時もそうだったが視線を彼の瞳に置いたまま、彼の事を思いだそうとするが、なにせ求婚者が沢山いた彼女の記憶に残っている男はほとんどいない。申し訳なくなり頭を下げて謝罪した。
「あ、そんなに気にしないでください。マリアさんほどの人なら僕みたいな男など覚えていなくて当然なんです。ただ、あの時に優しくしてくれたのは貴女だけでしたし、その……、ほんの少しは覚えてくれているか勝手に期待していただけで……」
「あ……、はぁ……」
「改めまして、僕は、スティーブ・マクガードと言います。マクガードの直系の次男ですがマクガード病院の経営に携わる事になる予定です」
「まぁ、マクガードの……」
マリアは、少し緊張して話出す彼の姿を見て、おや? と思った。
マクガードといえば、名門の侯爵家であり政財界に著名人を輩出している。とりわけ、マクガード家は世界一の医療機関である大病院を経営しており、世界中から医療を求めてやってくるほどの有名な所だ。
その侯爵家の直系子息であれば、こんな風に自信なさげな性格になるなど珍しい。
「僕は貴女と同い年なんです。あの時は、僕も貴女もまだ学園に入ったばかりの頃で……、その……。恥ずかしい過去なのですが、意を決して求婚させていただいた事があります……」
「え、と……」
「ああ、謝罪は必要ありません。あの頃の僕は家の重圧に耐えて必死で。でも、あんな大きな病院の経営など自信がなくて……。だから、周囲の男たちにも、時々会話する女の子たちにも馬鹿にされたり無視されたりしていましたから……」
「まぁ……」
マリアは、まじまじと目の前の青年を観察した。
今の彼は、会話こそ恐る恐るといった感じではあるものの、体から染み出る雰囲気は、とても、苛められた小心者で後ろ向きな人間には見えない。
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