【完結】【R18】これから、白いドアを開けて体験授業に挑みますっ!

にじくす まさしよ

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私を愛して欲しい~A・T

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「私は、エヴァンスの家で開催されたパーティに参加をした事があるんだ。最近結婚された君のすぐ下の妹さんの婚約披露の時に君に出会い、そしてダンスをした」
「妹の……?」

 マリアは、またもや、あの時のダンスの相手は複数であり、思いだせなくて首を傾げる。その様子は、アーロンの目には蠱惑的で色気があり、そして可愛らしくうつっている。マリアは、勿論無自覚だ。

「ああ、そして、当時は、背が君より低かったせいでホールドがきちんと出来なくてダンスが散々だった。それでも、君は私を嫌がらず、途中でダンスをやめることなく最後まで、焦ってますます動けなくなる私を励ましながら笑顔で付き合ってくれた。その時、私は君の夫にどうしてもなりたくなって、弱い自分を変えたくて、ずっと鍛えてきたんだ」

「あ……、あの時、私の足を何度も踏んだ子……?」

「う……、そういう覚え方をされているのは不本意なのだが……」

「あ、ごめんなさい。でも、とても楽しい時間でしたよ? 最後のほうはきちんと楽しく踊れていたじゃないですか」

「ははは、他の女性なら平手打ちもので、二度と社交界に出られないほどの失態だというのに……。勿論両親にはあとでしこたま怒られて謹慎させられた。でも、部屋でじっとしていると、君の事ばかり考えていて。そんな君だから、私は、自分を鍛えつつ末席でいいからと思って一縷の望みをかけていたんだ。ほとんど諦めていたんだけれどもね」
「え?」

 アーロンも、同じようにリラックスし、マリアが嫌がらない事を見てとると口調を普段に戻していった。そして、マリアが、消し去りたいほど恥ずかしい思い出ではあるものの、覚えてくれていた事に心が沸き踊る。

「君、自覚がないのだろうけれど、とても競争率が高いんだ。男は、エヴァンス家に縁談を持って行こうにも、トップ中のトップクラスにでもならないかぎり歯牙にもかけられない。学園で君になんとか認めてもらえないと絶対に夫になれないから、いっぱい求婚者がいただろう? そのうち、相手が決まってしまうと思っていた」

「アーロンさん……。だって、あなた、中央政府の要人のお家柄でしょう? そんな過去の失態なんてどうでも良くなるほど、あなただって、お相手に不自由なさそうなのに……、どうして、私を?」

「どうしてと言われても、あの時、私の失態をものともせず、笑顔で君がいてくれたから。それからというもの、私の心は君でいっぱいで……。両親もお見合いならなんとかいけるかもと思ってエヴァンス家に何度も申し込みをしていたんだ……。でも、お見合いをしていないからってお断りされてしまって。君は夫を一人も決めていなくて……。だから、今回、きっと、これは私のために神がくれた奇跡だと思った。あの頃より私は体も鍛え上げたし、仕事も順調だ。本音を言えば、私とて夫が私一人ならいいと思っているが、残りの夫たちとも上手くやっていく。だから、マリア・エヴァンス嬢、夫として、私という人間を見て、そして愛して欲しい。そのために私は出来る事は惜しまない」
「アーロンさん……」

「私は、君が欲しい。でも、君の心が伴わない関係は不本意なんだ」

 アーロンは、対面ですわっていたソファから立ち上がる。大きな体が動いた事でギッと頑丈な造りのソファが音を鳴らした。

「マリア、と呼んでいいか? どうか、私を受け入れて欲しい」
「あ……」

 マリアの側に移動した彼は、すっと片膝をついて、優しい口調で名を呼ぶ許可を取ってきたため、マリアは思わず是と応えてしまった。この場で嘘を言う男はいない。嘘がバレれば永遠にマリアの夫として過ごす権利を失うからだ。
 何よりも、彼の誠意ある言葉と人となりに好感が持てる。


 名前を敬称なく呼ぶ許可を与える事は、夫候補として相手を受け入れるという事だ。

 マリアは、膝をついた、大きな彼を見下ろしながら、紅茶色の瞳から視線を逃すことなく頷いたのであった。







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