16 / 35
ほら、ゆっくり息をして。俺にあわせて?
しおりを挟む
マリアは、言われた通りに、触れた肌の持ち主の手を求めてそのまま添わせるように腕を動かす。すると、相手がマリアの指先に、自らの指をそっと当てた後、しっかりと絡み合わせた。
体の上から覗き込んでいた彼らの内二人の気配が消えて、ぴたりとついていた体がそっと離れた。その代わりに、ずいっとマリアよりも大きな体が、全体を閉じ込めるように覆いかぶさって来る。
少しだけの触れ合いが、重みを感じるようになって、でも、私に全体重をかけないように気遣うほどよい重さと熱が心地良い。誰だろうと目をうっすらと開けようとした時、マリアの唇にふわりと軽くキスが落とされたのであった。
上に乗っかった彼の動きや、離れていった場所から考えるときっと彼だろうと想像しながら、暗闇の中唇を受け止める。
「ん……」
マリアは、彼から与えられるふんわりと柔らかい唇の感触に吐息を漏らした。何度も離れてはくっついてくる唇は潤った二人の肌をお互いに吸い付いているようで、離れる度にぷるりと震える。
はぁ、と二人の息が至近距離で交わる。すると、近くで声がした。
「焼けるな……」
「ですね……」
「マリア、覚えていて。君と初めて唇を合わせたのは俺だという事を」
「は、はい……、アダム……」
「マリア……、ああ、夢みたい」
思った通り体の上にいるのはアダムのようだ。目を閉じたまま彼の名を呼ぶと、感極まったかのようにちゅっちゅと間髪入れずに軽いキスが嵐のように降って来て目が回るようだ。段々息苦しくなってしまって、口を開けて息を吸い込んだ。
それほど大きく開けたわけではない。けれども、その隙間から、マリアの呼吸を見定めるように、すっと温かい濡れた何かが入り込んできた。
「んんっ?」
「ん、ちゅ……」
驚いて唇を閉じようとするけれど、自分の口よりも大きな何かが口の中まで侵入して、粘膜をゆるく触って来る。
「む……、んん……!」
やがて、唇全体を覆われるように彼の口が吸いついている事を理解する。慌てて、逃れようと顔を横に向けたくても手ががっちり頭を抱えて逃げる事が叶わない。
息も絶え絶えになりながら、手で拳を作り、少し強めに彼の胸を何度か叩くと、口の中からにゅるりとソレが出て行った。
「ぷぁっ! はぁ、はぁ……!」
「はぁ……、かわいい、マリア……。俺を見て?」
マリアは、うっとりと上からの問いかけに素直に目を開けると、とても近い距離で綺麗な赤が潤んでいるのを捕らえた。
吸い込まれそうな澄んだ赤は、幼い頃の自分がサクランボのようだと言ったらしいけれど、とても綺麗で、蕩けており、確かに美味しそうかもしれないと思う。舐めたいとは思わないけれど。
「マリア……、ほら、ゆっくり息をして? 鼻で息をするんだよ?」
「は、鼻で……」
ぼうっとしたモヤのかかったかのような思考は、彼の言葉をオウム返しにするだけで精一杯だ。これまでの教育内容などとうに頭から飛んで何処かに行ってしまっている。
「そう、ちゅっ。このかわいい鼻で。ね?」
鼻先に軽くキスをされたあと、にっこりと微笑まれ、コクリと頷くと、今度はゆっくりと彼の唇が落ちて来るのを見て、そして、口を開けて待ってしまう。
唇と唇が触れ合うのが先か、アダムの舌が口腔内に侵入するのが先かわからない。言われた通りに鼻でしっかり息をしても、縦横無尽に擦られる舌はとても大きくて、必死に合わせるだけでやっとだ。いや、合わせられているのかすらもわからない。
「んっ、ん……んん……」
お互いの唾液が溢れてきて、顎から首に伝う。時々コクリと飲み込んでしまうがそれすら体と心を蕩けさせるほど熱を持たせていった。
いつの間にか、アダムの首に両腕を絡ませて抱き着いていたようで、彼の唇が離れたあと指摘されるまで縋り付いていた。
「マリア……、そんな顔をして見つめて来るなんて……。俺と離れたくない?」
マリアが、アダムの言葉に思わず流されてコクリと頷きそうになった瞬間、二人からクレームが入った。
「おい、やりすぎだ。マリアは今、キスをされて何も考えられていないだろう。彼女の隙をつくような誘導尋問はやめろ」
「そうですよ。あと、いい加減マリアから離れてください。最初は貴方に素直に譲ったのですから」
マリアは、今ここにいるのがアダムと自分の二人だけではない事を思い出した。あのまま頷けば、アーロンとスティーブの立場がない。声をかけてもらってよかったと思うと同時に、まるで酔ったような夢気分が霧散した。
「……。わかった……」
むぅと、舌打ちをしそうなほど、少年が拗ねたような顔をしたあと、マリアに満面の笑みを浮かべて、最後にちゅっと高いリップ音を奏で、マリアの上からアダムが退いた。
上から囲い込まんでいた彼の熱くて程よい重みの体がなくなる。すると、途端に寂しく、冷たく感じて心もとなくなった。
「マリア、次は私と」
「は、はい……」
ドキドキしっぱなしの心臓が壊れてしまうんじゃないかと思うほどの、アダムとの蕩けるひと時が終わったら、次は、マットレスがギシッと沈み込むような重みのアーロンが覆いかぶさって来た。勿論、マリアの体に負担をかけまいと、ふくらはぎよりも太い腕で自重を支えている。
「マリア、愛している」
アーロンがそう言うと、マリアの顔に、自身の大きな影を落として来たのであった。
体の上から覗き込んでいた彼らの内二人の気配が消えて、ぴたりとついていた体がそっと離れた。その代わりに、ずいっとマリアよりも大きな体が、全体を閉じ込めるように覆いかぶさって来る。
少しだけの触れ合いが、重みを感じるようになって、でも、私に全体重をかけないように気遣うほどよい重さと熱が心地良い。誰だろうと目をうっすらと開けようとした時、マリアの唇にふわりと軽くキスが落とされたのであった。
上に乗っかった彼の動きや、離れていった場所から考えるときっと彼だろうと想像しながら、暗闇の中唇を受け止める。
「ん……」
マリアは、彼から与えられるふんわりと柔らかい唇の感触に吐息を漏らした。何度も離れてはくっついてくる唇は潤った二人の肌をお互いに吸い付いているようで、離れる度にぷるりと震える。
はぁ、と二人の息が至近距離で交わる。すると、近くで声がした。
「焼けるな……」
「ですね……」
「マリア、覚えていて。君と初めて唇を合わせたのは俺だという事を」
「は、はい……、アダム……」
「マリア……、ああ、夢みたい」
思った通り体の上にいるのはアダムのようだ。目を閉じたまま彼の名を呼ぶと、感極まったかのようにちゅっちゅと間髪入れずに軽いキスが嵐のように降って来て目が回るようだ。段々息苦しくなってしまって、口を開けて息を吸い込んだ。
それほど大きく開けたわけではない。けれども、その隙間から、マリアの呼吸を見定めるように、すっと温かい濡れた何かが入り込んできた。
「んんっ?」
「ん、ちゅ……」
驚いて唇を閉じようとするけれど、自分の口よりも大きな何かが口の中まで侵入して、粘膜をゆるく触って来る。
「む……、んん……!」
やがて、唇全体を覆われるように彼の口が吸いついている事を理解する。慌てて、逃れようと顔を横に向けたくても手ががっちり頭を抱えて逃げる事が叶わない。
息も絶え絶えになりながら、手で拳を作り、少し強めに彼の胸を何度か叩くと、口の中からにゅるりとソレが出て行った。
「ぷぁっ! はぁ、はぁ……!」
「はぁ……、かわいい、マリア……。俺を見て?」
マリアは、うっとりと上からの問いかけに素直に目を開けると、とても近い距離で綺麗な赤が潤んでいるのを捕らえた。
吸い込まれそうな澄んだ赤は、幼い頃の自分がサクランボのようだと言ったらしいけれど、とても綺麗で、蕩けており、確かに美味しそうかもしれないと思う。舐めたいとは思わないけれど。
「マリア……、ほら、ゆっくり息をして? 鼻で息をするんだよ?」
「は、鼻で……」
ぼうっとしたモヤのかかったかのような思考は、彼の言葉をオウム返しにするだけで精一杯だ。これまでの教育内容などとうに頭から飛んで何処かに行ってしまっている。
「そう、ちゅっ。このかわいい鼻で。ね?」
鼻先に軽くキスをされたあと、にっこりと微笑まれ、コクリと頷くと、今度はゆっくりと彼の唇が落ちて来るのを見て、そして、口を開けて待ってしまう。
唇と唇が触れ合うのが先か、アダムの舌が口腔内に侵入するのが先かわからない。言われた通りに鼻でしっかり息をしても、縦横無尽に擦られる舌はとても大きくて、必死に合わせるだけでやっとだ。いや、合わせられているのかすらもわからない。
「んっ、ん……んん……」
お互いの唾液が溢れてきて、顎から首に伝う。時々コクリと飲み込んでしまうがそれすら体と心を蕩けさせるほど熱を持たせていった。
いつの間にか、アダムの首に両腕を絡ませて抱き着いていたようで、彼の唇が離れたあと指摘されるまで縋り付いていた。
「マリア……、そんな顔をして見つめて来るなんて……。俺と離れたくない?」
マリアが、アダムの言葉に思わず流されてコクリと頷きそうになった瞬間、二人からクレームが入った。
「おい、やりすぎだ。マリアは今、キスをされて何も考えられていないだろう。彼女の隙をつくような誘導尋問はやめろ」
「そうですよ。あと、いい加減マリアから離れてください。最初は貴方に素直に譲ったのですから」
マリアは、今ここにいるのがアダムと自分の二人だけではない事を思い出した。あのまま頷けば、アーロンとスティーブの立場がない。声をかけてもらってよかったと思うと同時に、まるで酔ったような夢気分が霧散した。
「……。わかった……」
むぅと、舌打ちをしそうなほど、少年が拗ねたような顔をしたあと、マリアに満面の笑みを浮かべて、最後にちゅっと高いリップ音を奏で、マリアの上からアダムが退いた。
上から囲い込まんでいた彼の熱くて程よい重みの体がなくなる。すると、途端に寂しく、冷たく感じて心もとなくなった。
「マリア、次は私と」
「は、はい……」
ドキドキしっぱなしの心臓が壊れてしまうんじゃないかと思うほどの、アダムとの蕩けるひと時が終わったら、次は、マットレスがギシッと沈み込むような重みのアーロンが覆いかぶさって来た。勿論、マリアの体に負担をかけまいと、ふくらはぎよりも太い腕で自重を支えている。
「マリア、愛している」
アーロンがそう言うと、マリアの顔に、自身の大きな影を落として来たのであった。
11
あなたにおすすめの小説
幼馴染の勇者に「魔王を倒して帰ってきたら何でもしてあげる」と言った結果
景華
恋愛
平和な村で毎日を過ごす村娘ステラ。
ある日ステラの長年の想い人である幼馴染であるリードが勇者として選ばれ、聖女、女剣士、女魔術師と共に魔王討伐に向かうことになる。
「俺……ステラと離れたくない」
そんなリードに、ステラは思わずこう告げる。
「そうだ‼ リードが帰ってきたら、私がリードのお願い、一つだけなんでも叶えてあげる‼」
そんなとっさにステラから飛び出た約束を胸に、リードは村を旅立つ。
それから半年、毎日リードの無事を祈り続けるステラのもとに、リードの史上最速での魔王城攻略の知らせが届く。
勇者一行はこれからたくさんの祝勝パーティに参加した後、故郷に凱旋するというが、それと同時に、パーティメンバーである聖女と女剣士、そして女魔術師の話も耳にすることになる。
戦いの昂りを鎮める役割も担うという三人は、戦いの後全員が重婚の認められた勇者の嫁になるということを知ったステラは思いを諦めようとするが、突然現れたリードは彼女に『ステラの身体《約束のお願い》』を迫って来て──?
誰がどう見ても両片思いな二人がお願いをきっかけに結ばれるまで──。
【完結】姉は全てを持っていくから、私は生贄を選びます
かずきりり
恋愛
もう、うんざりだ。
そこに私の意思なんてなくて。
発狂して叫ぶ姉に見向きもしないで、私は家を出る。
貴女に悪意がないのは十分理解しているが、受け取る私は不愉快で仕方なかった。
善意で施していると思っているから、いくら止めて欲しいと言っても聞き入れてもらえない。
聞き入れてもらえないなら、私の存在なんて無いも同然のようにしか思えなかった。
————貴方たちに私の声は聞こえていますか?
------------------------------
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
【短編完結】元聖女は聖騎士の執着から逃げられない 聖女を辞めた夜、幼馴染の聖騎士に初めてを奪われました
えびのおすし
恋愛
瘴気を祓う任務を終え、聖女の務めから解放されたミヤ。
同じく役目を終えた聖女たちと最後の女子会を開くことに。
聖女セレフィーナが王子との婚約を決めたと知り、彼女たちはお互いの新たな門出を祝い合う。
ミヤには、ずっと心に秘めていた想いがあった。
相手は、幼馴染であり専属聖騎士だったカイル。
けれど、その気持ちを告げるつもりはなかった。
女子会を終え、自室へ戻ったミヤを待っていたのはカイルだった。
いつも通り無邪気に振る舞うミヤに、彼は思いがけない熱を向けてくる。
――きっとこれが、カイルと過ごす最後の夜になる。
彼の真意が分からないまま、ミヤはカイルを受け入れた。
元聖女と幼馴染聖騎士の、鈍感すれ違いラブ。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる