ヒレイスト物語

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第五章 旅立ち

襲撃者と逃げ道

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予想通りこの前のようにはならなかったが、アシオンの視線が気になる。何だか物足りなさそうにこちらを見てくるのだ。それに手持無沙汰なようで、何か仕掛けてきそうで気が気ではない。ここはもう本題に入るか


「アシオンとメイユはここに来たことがあるんだよな?」

「ん?ああ、ビスたちと会う前に一度な」

「ええ」


これを問うことは、正しいことなのかわからないが聞かなければ始まらないだろう


「・・・二人ともこのことを知っていたのか?」

「知らねぇよ」

「ワタクシも知らなかったわ」


間髪入れずに答えた。“このこと”というだけで、伝わったということは、二人ともそのことを気にしていたらしい


「タドの仕業か」

「・・・かもしれないし、そうじゃないかもしれない。うちの国も一枚岩じゃないからな」

「何でそう思うんだ?」

「あいつだったら、とっくに手に入れているだろうし、ここは更地だろうな。まあ、あいつじゃない根拠にはならないがな」


確かにタドの実力だとそうなるかもしれない。あれから数日経っているし、やろうと思えば俺たちと相対する前にこの地を更地にすることも可能だったはずだ。そっちの方が効率的だろう


「誰であろうとオレは気に食わねぇ。ビスも見ただろ。エルフたちが疲弊しているのを。こんなに弄ぶように攻撃しやがって。遊んでやがるんだ」


アシオンの言う通り、里のエルフたちは疲れ切っていた。人出がいることは容易に想像できる。なのに、俺たち全員ではなくソエルのみに、力を借りようとしているのは気がかりではある。おそらく掟というものが関係しているのだろうが。まあ、それを今考えても仕方ないか


「心当たりはないのか?」

「多分“ラオザム”じゃないかしら」

「あいつか。やりそうだな」

「“ラオザム”?」

「国の幹部の一人よ。ラオザムは悪魔族の長。いつも笑顔でいるやつよ、見た目はどこにでもいそうな気弱そうなおじさんってとこかしら。でも、力も強いし、性格は残忍。見た目で判断すると痛い目に合うわよ」

「アシオンやメイユよりも強いのか?」

「悔しいが、オレやメイユより強いぜ」

そんなやつがいるのか。ここに残って戦うべきなのか、それとも早々にここから離脱した方がいいのか。今夜もしくは明日の早朝襲ってこないという保証はない


「・・・サジュさんが言っていたのだけれど、ワタクシたちの部屋はぞれぞれ外に通じる道の近くらしいわよ。ビスの部屋はドアを開けて右に真っ直ぐ行けば辿り着くと言っていたわ。それに出入口も外からでは絶対にわからないように魔法がかけられているから安全だと言っていたわ」


「それって⁉」

「何かあったら早々に立ち去って欲しいということでしょうね。」

「なんだよそれ」
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