アナスタシス・フルム

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第1章 初めてのダンジョン

帰宿

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町に着いてもディタは俺についてきた。それどころかディタの用事があるとある建物の前で待たされた。それはあの俺が泊まるのを諦めた?宿の前だった。


「どんだけ金持ちなんだよ。・・・っていうか俺がここで待ってる理由なくないか?」


そう思い自分の宿へと歩を進めようとするとエミンが頭に乗ってくる。


「ロガはん、そんないけずなこと言わへんどぉくれやす。ウチの可愛いディタを待っとってください。」


足を進めることができない。それどころか首の骨が折れそうだ。レクスよりはるかに重い。この小さい体に何が詰まっているのかと思うほどに重い。ただ、それを直接言ったらどうなるか、レクスのように簡単にはいかない。


「わ、わかった。だから頭から降りてくれないか。」


「ふふふっ。そうどすか。乗り心地がええさかい、もっと乗っときたいけど、しゃあないな。ただ、逃げるようやったら、また乗るさかい。堪忍な。」


「ははははっ。」


遠慮していただきたい。ディタが執拗にエミンに何か頼んでいるところがあったがこのことだったのか。勘弁して欲しいよ。そんなやり取りをしているとディタが建物から出てくる。大荷物を引き連れて。


「おい、なんだよ。その荷物は?」


「別にいいでしょ。それより早くここから離れるわよ。」


ディタは俺を尻目に歩を進める。


「おい、待てよ。ていうか俺が行くとこわかってるのかよ。」


「ああ、そういえばわからなかったわね。案内して。」


図々しいな。ダンジョンでのあの一瞬見せた弱弱しさはなんだったのか。


「ぷっ。ロガが尻に敷かれてる。」


ボカ


何か言ってくるレクスを無視して歩を進める。まあ、俺もここに長居したくないしな。


「わかったよ。」


俺はディタの前に出た。




ヒルさんの宿屋に着きディタに”着いたぞ”というと呆然としていた。


「わ、私やっぱり・・・いえ、何でもないわ。」


そのあともディタはなにやらブツブツ呟いている。俺はそんなディタを尻目に中に入っていく。入り口にはヒルさんが待っていた。


「ただいま、ヒルさん。」


「おっ。おかえり。その様子だと攻略したんだね。」


ヒルさんは暖かく迎え入れてくれる。そして俺の表情なのかわからないがなにかで読み取ったらしい。そんなわかりやすい顔してるはずないんだけどな。


「うん。してきたよ。そんなことよりちょっといいかな?」


「ん?そんな改まってどうかしたのかい。」


俺は隣に視線を向けると誰もいなかった。いると思ったのだが。それで後方を見ると少し後ろにまだブツブツ呟いているディタがいた。


「おーい、ディタ。大丈夫か?ほら、聞かなくていいのか?」


俺の声でようやく正気を取り戻したのか慌てて俺の横に来る。


「私、ディタって言います。あの今日ここに泊めてもらえませんか?」


俺の時とは違い丁寧な言葉遣い。こいつ猫を被ってやがる。


「ああ、大丈夫だよ。空き室はまだまだ沢山あるしね。・・・それにしても女の子ね。ロガ君も隅に置けないね。」


ヒルさんがジト目でこっちを見てくる。俺はそれを無視して自分の部屋に足を進める。


「俺部屋に一旦戻るよ。ご飯できたら呼んでくれないかな?」


「疲れてるもんね。わかったよ。ああでも、あとで絶対話聞かせてよ。」


俺は何も言わず手だけ振った。遠くでヒルさんとディタの会話が聞こえてくる。



「ふふふっ。なんだかロガ君。明るくなったような。君のおかげかな。」


「そんなことはないと思いますよ。」


「まあ、いいや、ディタちゃんの部屋はこっちね。」


「あ、はい。」



ボカ


「な、何で叩くんだよ。ボク何も言ってないじゃないか。」


「なんとなく。」


「むう。」



なぜか、レクスを殴ってしまった。申し訳なく思いつつも、謝りはしなかった。
なんとなくレクスが考えていることがわかったから。
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