アナスタシス・フルム

文字の大きさ
35 / 98
第3章 祭壇の謎

祭壇

しおりを挟む
俺はフォルクさんが指差したところに来ていたはずだった。フォルクさんが指さしたのは山だったはずなのに、目の前には山などどこにもなく、あるのは小高い丘に祭壇らしきものだけだった。


「ここでいいんだよな?」


「ロガ道間違ったんじゃないの?」


「そんなはずはないんだがな。」


徐にレクスが近寄ってきた。どうかしたのだろうか。


「それにしても、なんか徐々に寒くなっている気がするよ。」


俺はここまで走ってきたからだろうか。そんなに寒さは感じられなかった。むしろ暑いくらいだった。


「そうか?」


そんな話をレクスとしていると声が聞こえてくる。


「はあ、はあ。やっと追いついた。待ちなさいって言ったのに。」


疲れているからなのか、それとも怒っているのか皺を寄せたすごい形相のディタがいた。おそらくどっちもというのが正しいだろう。ここは謝って話題を変えるのが得策か。


「ごめん。それより見てくれよ。フォルクさんが指さしたのはここのはずなんだけど山がないんだ。」


「本当ね。なぜかしら?」


ディタは何か考え込んでいた。それにしても、今になってレクスが言っていたことが感じられてきた。


「寒いな。」


震えが出てきた。暑さで出てきた汗が急激に冷やされてより寒さを感じる。


「ほらね。言ったとおりでしょ。」


その言葉になにか納得したのかディタは目を見開いていた。


「なるほどね。そういうことか。」


「なんだよ。もったいぶらずに教えてくれよ。」


俺は気になって仕方なかった。だが、ディタの表情は一瞬曇った気がする。言いたいことはなんとなくわかった。


「はあ、まあいいわ。”蜃気楼”よ。それも”上位蜃気楼”。地上の方が冷えていて上空に上がれば上がるほど気温が高いとあの時みたいに物体が大きくなったように見えることがあるの。まあ、ほかにも条件は色々あるんだけどね。今日みたいな晴れた日とか。長くなるからそこら辺は省くけど。」


「そうなのか。勉強になったよ。」


ディタはもう何を言っても意味がないと思ったのか俺の言葉を気にせずに続けた。


「場所がここなのは間違いないわね。ただ、ダンジョンの入り口が見当たらないわね。」


ディタの言う通り、周りを見渡しても入り口らしきものがない。あるのは、祭壇まで続く階段だけだった。


「もしかしたら、頂上のところにあるかもな。言ってみようぜ。」


俺は祭壇へと続く階段を駆け上がる。疲れてはいたが、こうしておかなければ寒くてどうにかなりそうだった。


「だから待ちなさいって。・・・本当に寒いわね。」


振り返るとディタも駆けてついてきた。そうこうしているうちに頂上に着いた。だが、そこにあるのは祭壇だけで入り口らしきものはどこにもなかった。前提条件から誤っているのではないかと不安になる。


「あれ~?こんなところにボタンがあるよ~。」


間延びした声がする方に視線を向けると、そこにはわかりやすく出っ張ったボタンと押そうとしているレクスの姿があった。嫌な予感がする。


「お、押すなよ。レクス。」カチ


しかし、言うのが遅かった。言葉を言い終わる前には、レクスはもうボタンを押し切っていたのだ。


「ふぇ?もう押しちゃったよ。」


次の瞬間、ボタン部分が思い切り跳ね上がりボタンを押したレクスは空中に投げ飛ばされていた。


「ひええええええ‼」


「言わんこっちゃない。」


空中に投げ出されたレクスは頂点まで飛び終わり下降していく。徐々にスピードを上げながら。



「ロガ~。助けて~。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...