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第4章 得たものとモノ
贅沢な悩み
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そのあと、なんとか、立ち上がりヒルさんが待つ宿へと向かう。最初フォルクさんのところに真っ直ぐ行きたかったが、もうすっかり日が暮れているので、迷惑になるだろうということでディタに止められてしまった。そして今町に着きすれ違う人、すれ違う人こちらに視線を送ってきた。俺の状態もあるのだろう、ただ、それだけではない気がする。この俺とディタの差、この違和感がより一層引き立てているように思えた。
「何不貞腐れてるのよ。」
「不貞腐れてなんかない。ただ、恥ずかしいんだよ」
「え!?何、聞こえない」
「何でもねえよ」
俺は今ディタの肩を借りて歩いている。それでも、聞こえないということはそれだけ小さくそれもモゴモゴ発していたのだろう。
「ほら、着いたわよ」
そう言われて俺は首を真っ直ぐにすることができた。せめてもの救いは人通りが少なかったことだろう。出なければ、恥ずかしさで血液が沸騰していたはずだ。
「ああ、ありがとう。あとは大丈夫、部屋までなら何とかなりそうだ」
「そう、わかったわ」
そして、俺たちは宿のなかに入っていく。あの人の姿を見ると久しぶりに実家に帰ってきたような安心感がある。
「二人ともお帰り・・・ってロガ君大丈夫⁉」
「うん、って言いたいとこだけど、ちょっときついかも。」
「そうか。ディタちゃんは何ともない?」
「ええ、私はそんなにひどい傷はないですから」
「ヒルさん。ごめん、また後ででいい?荷物置いてきたいんだ。」
「あ、ああ、そうだよね。こっちこそごめんね。僕のことは気にしなくていいから部屋でゆっくり休んでいいから」
その言葉を背に俺は自分の部屋へと向かった。
部屋で荷物を下ろし、ベッドに入ろうとした瞬間、ドアがノックされる音が聞こえる。
「ロガ君、ちょっといいかな」
「ヒルさん?」
もしかして、夕食のことで来たのかな。時計を確認するとすでにいつも夕食を取っている時間が過ぎていた。
「夕食?」
「それもあるけど、手当しにきたよ」
ヒルさんは、何も持たずここに来ていた。何も持たずに手当ってどういうことだろう。
「い、いいよ。もうディタに手当してもらったし」
「僕もそう思ったんだけどね。それにさっき言った手前来づらかったんだけど、ディタちゃんに頼まれちゃった。“応急処置しかしてないから、ヒルさんお願いできますか?”って。・・・隠してたわけじゃないけど、何で気付かれたんのかな」
頭に?が浮かぶ。どういうことだろう。
「ほら、ここではなんだし、入ってもいいかな?」
「う、うん」
ヒルさんの細い腕に押され部屋のなかへと入っていく。
「じゃあ、ベッドに座って」
俺はヒルさんの言うとおりにする。
「じっと、しててね。“ヒール”」
ヒルさんが俺の体に手を翳し、その言葉を言った瞬間、俺の体が光り出した。
時間がかかるのか、すぐにその光が消えることはなかった。
「聞いたよ、ロガ君。フォルクさんに頼まれごとをされたって?」
「はい。あの人ひどいんだよ。スッと教えてくれればいいのに。フロワストーン取ってこないと火山の神殿のこと教えてくれないって。」
「はははっ、そうか。フォルクさんがそんなことを。でも、良かったね、フォルクさんが話す気になってくれて。それにフロワストーン手に入れたんだろう、何か気になることでもあるの?」
俺は気になることをヒルさんにぶちまけた。
「うーん。手に入れたのはいいんだけど、本当に教えてくれるかどうか、今になって不安になってる。それにフロワストーンなんだけど、もう一個手に入れたいんだけど、何処を探せばいいのかわからなくて」
「はははっ。フォルクさんは気難しい人だけど、人との約束を破るような人じゃないと思うよ。それにもう一つに関しては贅沢な悩みだね。」
フォルクさんのことについてはなんとなくわかるような気がした。まあ、完全に信じられているわけではないんだけど。ただ、もう一つの件はどうにもしっくりこなかった。
「“贅沢な悩み”?」
「そうだよ‼ワクワクするだろ、新しい困難に立ち向かうのは。それに、それを乗り越えた時の達成感、羨ましいよ。」
そうかな。確かにワクワクはしたけど、あの時はそれどころじゃなかったからな。
「まあ、僕から言えることは一つだけ。そういうのは、楽しんだもの勝ちだよ・・・って僕が言っても説得力ないか。」
そんなことを言うが、ヒルさんの言葉に嘘偽りはないことは、俺に向けてくる顔、それに声から読み取れた気がする。それにいつも楽しそうに仕事をしているヒルさん、それはその言葉を実行しているからこそそう見えるのではないだろうか。
「そんなことない。そうだね、楽しむことにするよ」
「はははっ。・・・はい、終わり!ちょっと体動かしてみて」
「何不貞腐れてるのよ。」
「不貞腐れてなんかない。ただ、恥ずかしいんだよ」
「え!?何、聞こえない」
「何でもねえよ」
俺は今ディタの肩を借りて歩いている。それでも、聞こえないということはそれだけ小さくそれもモゴモゴ発していたのだろう。
「ほら、着いたわよ」
そう言われて俺は首を真っ直ぐにすることができた。せめてもの救いは人通りが少なかったことだろう。出なければ、恥ずかしさで血液が沸騰していたはずだ。
「ああ、ありがとう。あとは大丈夫、部屋までなら何とかなりそうだ」
「そう、わかったわ」
そして、俺たちは宿のなかに入っていく。あの人の姿を見ると久しぶりに実家に帰ってきたような安心感がある。
「二人ともお帰り・・・ってロガ君大丈夫⁉」
「うん、って言いたいとこだけど、ちょっときついかも。」
「そうか。ディタちゃんは何ともない?」
「ええ、私はそんなにひどい傷はないですから」
「ヒルさん。ごめん、また後ででいい?荷物置いてきたいんだ。」
「あ、ああ、そうだよね。こっちこそごめんね。僕のことは気にしなくていいから部屋でゆっくり休んでいいから」
その言葉を背に俺は自分の部屋へと向かった。
部屋で荷物を下ろし、ベッドに入ろうとした瞬間、ドアがノックされる音が聞こえる。
「ロガ君、ちょっといいかな」
「ヒルさん?」
もしかして、夕食のことで来たのかな。時計を確認するとすでにいつも夕食を取っている時間が過ぎていた。
「夕食?」
「それもあるけど、手当しにきたよ」
ヒルさんは、何も持たずここに来ていた。何も持たずに手当ってどういうことだろう。
「い、いいよ。もうディタに手当してもらったし」
「僕もそう思ったんだけどね。それにさっき言った手前来づらかったんだけど、ディタちゃんに頼まれちゃった。“応急処置しかしてないから、ヒルさんお願いできますか?”って。・・・隠してたわけじゃないけど、何で気付かれたんのかな」
頭に?が浮かぶ。どういうことだろう。
「ほら、ここではなんだし、入ってもいいかな?」
「う、うん」
ヒルさんの細い腕に押され部屋のなかへと入っていく。
「じゃあ、ベッドに座って」
俺はヒルさんの言うとおりにする。
「じっと、しててね。“ヒール”」
ヒルさんが俺の体に手を翳し、その言葉を言った瞬間、俺の体が光り出した。
時間がかかるのか、すぐにその光が消えることはなかった。
「聞いたよ、ロガ君。フォルクさんに頼まれごとをされたって?」
「はい。あの人ひどいんだよ。スッと教えてくれればいいのに。フロワストーン取ってこないと火山の神殿のこと教えてくれないって。」
「はははっ、そうか。フォルクさんがそんなことを。でも、良かったね、フォルクさんが話す気になってくれて。それにフロワストーン手に入れたんだろう、何か気になることでもあるの?」
俺は気になることをヒルさんにぶちまけた。
「うーん。手に入れたのはいいんだけど、本当に教えてくれるかどうか、今になって不安になってる。それにフロワストーンなんだけど、もう一個手に入れたいんだけど、何処を探せばいいのかわからなくて」
「はははっ。フォルクさんは気難しい人だけど、人との約束を破るような人じゃないと思うよ。それにもう一つに関しては贅沢な悩みだね。」
フォルクさんのことについてはなんとなくわかるような気がした。まあ、完全に信じられているわけではないんだけど。ただ、もう一つの件はどうにもしっくりこなかった。
「“贅沢な悩み”?」
「そうだよ‼ワクワクするだろ、新しい困難に立ち向かうのは。それに、それを乗り越えた時の達成感、羨ましいよ。」
そうかな。確かにワクワクはしたけど、あの時はそれどころじゃなかったからな。
「まあ、僕から言えることは一つだけ。そういうのは、楽しんだもの勝ちだよ・・・って僕が言っても説得力ないか。」
そんなことを言うが、ヒルさんの言葉に嘘偽りはないことは、俺に向けてくる顔、それに声から読み取れた気がする。それにいつも楽しそうに仕事をしているヒルさん、それはその言葉を実行しているからこそそう見えるのではないだろうか。
「そんなことない。そうだね、楽しむことにするよ」
「はははっ。・・・はい、終わり!ちょっと体動かしてみて」
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