転生夫婦～乙女ゲーム編～

第一章

１７

「――であるからして。」

　授業を受けている最中、私は異様な感覚に襲われる。

　何か嫌な予感。

　それが近づく。

　警鐘が鳴り響く。

　私は目を瞑る。

　駄目だ……。

　私の力は水と光…。

　うまく感知する事が出来ない……。

　思わず舌打ちしそうになるが、長年の勘が私を急かす。

　私が立ち上がるのと同時に、同じく椅子が動く音がした。

「……。」
「……。」

　音の先を見れば、彼だった。

　視線が交わる。

　そして、同時に頷く。

「どうしたんだ。」
「緊急事態です。」
「すぐに生徒を安全な場所に避難させてください。」

　私たちはそう言い残すと、彼は校庭に。
　私は屋上に向かった。
　そして、屋上に着いた私が見たのは空を舞う魔物の群れだった。

「……………アルファード。」

　胸に手を置き、私は下を見た。
　彼はもうすでに入り込んでいた地上の魔物と対峙していた。

「大丈夫……、彼は強い。」

　自分に言い聞かせるようにそう呟き、私は天に向かって手をかざす。

「降り注げ、氷の雨　氷雨（アイスレイン）っ！」

　氷柱が空にいる魔物の翼や体を貫く。
　何匹かの魔物が私を狙うようにこちらを睨むが、それよりも早く私は次の攻撃を仕掛ける。

「……《光（リヒト）》」

　私の手に先日彼から返してもらった弓矢が現れ、すぐさま私は弓に矢を番える。

「――っ！」

　狙いを定め、そして、放つ。

「《光（リヒト）っ！》」

　私の願いに《光（リヒト）》は応えてくれる。
　放ったのは一本だった矢は空中で数本に分かれ、魔物を射抜く。
　氷の魔法と《光（リヒト）》のお蔭で徐々に魔物の数は減っていく。
　私は眼下に視線を移し、そして、彼の背を狙う魔物を見て目の前が真っ赤に染まる。

「触れるなっ！」

　吠える私はそのまま《光（リヒト）》を放つ。

「……。」

　矢は真っ直ぐに飛んでいき、彼を押そうとしていた魔物は射抜かれ、塵となる。

　視線が交わる。

　彼は案ずるように私を見つめる。

　大丈夫よ。

　そう答えるように私は弓矢を番える。

　大丈夫。

　そう思いながら、私は彼を援護しながら矢を放ち続ける。

　魔物に知性があったのか、勝ち目がないと理解したのかじりじりと後退を始める。
　私たちは深追いはせず、最後の一匹が塵に消えるまで戦い抜いた。
　サラリと風が私の髪を浚う。
　天を仰ぎ、陽の光が私たちを照らす。

　勝った。

　勝利を勝ち取った私たちは同時に己の武器を掲げる。
　その瞬間、私たちを称えるかのように歓声が上がった。