逆行したら別人になった

弥生 桜香

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第一章

おやすみ

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「……。」

 私は取り敢えず、鞄の中を整理しようと中身を一度出して、それを鞄に仕舞っていたが、ジッと見つめる視線に思わず、手を止める。

「……ジェダイド。」
「何だ?」
「そんなに見られると、恥ずかしい。」

 少し恥ずかしくなった私は唇を尖らせ、そういう。

「何かあるの?」
「……マラカイト。」

 少し低い声に私は彼が何か真剣な事を言いたいのだと理解し、体ごと向き合う。

「何かな?」
「……お前はいつもあんな扱いをされていたのか?」
「あんなって?」
「今日のギルドで起こった事だ。」
「ああ。」

 私はジェダイドの言いたい事が分かり、納得するが、それでも、彼が気にするほどの事じゃないのにと思う。

「そうですね、あんな感じでしたね。」
「……………潰す。」

 物騒な言葉を吐きだすジェダイドに私は少し頬を引きつらせる。
 今の今まであまり気にしていなかったけれども、彼は貴族だ。
 そんな彼が一言言えば平民は首をはねられる。
 もちろん彼はそんな事はしないだろうが、それほどの発言力(ちから)を持っているのだ。

「…そんな言葉を簡単に言っては駄目よ。」
「何故だ。」
「だって、多くの人が巻き込まれてしまう。」
「……。」
「だから、駄目よ。」

 窘める私はそっとジェダイドの手を取った。

「貴方の力は大きい、だから、簡単に使う事を覚えないで。」
「……。」
「貴方は貴方の力で何が伴うのか考えないといけないの。」

 そう、彼の力は貴族としての力だけじゃない。
 ただ人ではありえない破壊の力を宿している。
 それをもし、平然と彼が使えば彼は人の世界に爪弾きに遭ってしまう。

 孤独。

 差別。

 侮蔑。

 恐怖。

 色々な感情が彼を襲うだろう。
 そんな事を慣れて欲しくない。
 今は難しいだろうが、それでも、彼には考えて欲しい。
 自分の力で何が起こるのか。
 しっかりと考えてもらわないといけない。

「マラカイト。」
「何?」
「……それは俺に言うよりも自分でやれよ。」
「……?」

 私は彼が言いたい意味が分からず、首を傾げる。

「分からないか。」
「ええ。」
「……無自覚だとは思っていたが…ここまでとはな。」
「何が?」
「お前は何で自分があんな態度になっているか考えた事はあるか?」
「この見た目でしょうね。」
「……。」
「後は見た目と中身が伴っていない所かと。」
「……。」

 ジェダイドはジッと私を見ますが、私は特にこれ以上思い浮かべるものもなかったが、他にあるのかと考える。

「あの…他にありますか?」
「…逆に聞くがないと思うのか?」
「……。」

 私としては特にないですし、人は見た目から入る、だから、こんな化け物じみた見た目を持つ私にいい印象を持つ人は少ないでしょう。
 マイナスから入ればプラスになるにはどれほどの努力が必要になるだろうか。
 努力は良いですが、その間にその人にもたらす不快感など、負の感情を相手に私の所為で抱かせるのは申し訳ないのだから、私は何もしない方がいいのかもしれませんけど。

「無いと思いますけど。」
「……。」

 絶句しているジェダイドに私は首を捻る。

「何かありましたか?」
「……お前のその力は何だ?」
「…私の力ですか?」

 何の事を指しているのだろうか。

「怪我を治したり、精霊が見えたりしているだろう。」
「ああ、他の人も出来ますよね?」
「……。」
「私の力など、ちっぽけなものですから、大丈夫ですよ。」
「……。」

 目を見開き固まるジェダイドに私は何か変な事でも言ったのかと考えるが、特に何も思い当たるものはなかった。
 何せ、「前」の時は私なんかよりもすごい方がいらっしゃいましたし、今だってきっと私は劣っているはずなのでもっと精進しなくてはなりませんよね。

「……お前、何か変な事を考えているんじゃないか?」
「いえ、私はまだまだ弱い存在なので、もっと精進せねばと思っていただけです。」
「おい、お前はどこまで強くなるつもりだ。ドラゴンでも倒す気か?」
「あっ、そうですね、後々ドラゴンを倒す必要性がありますから、単体で倒せるくらいには強くならねばなりませんね。」
「はぁっ!」

 「前」の時は一番初めにドラゴンを殺してしまいその後も、ドラゴンと戦う必要性が生じてしまった。
 今回はそんな事がないのが一番ですけど、万が一の事を考えれば力をもっと強くしなくてはなりませんね。

「そうと決まれば、もっと、強くなるよう頑張りましょう。」
「……分かった、もう俺は寝る。」
「ああ、そうですね、もう遅いですので、ゆっくりとお休みになってください。」
「ああ。おやすみ。」
「はい、おやすみなさい。」

 布団に潜り込むジェダイドに私もそろそろ寝ないといけないと思い、先ほど中途半端に仕舞い込んでいた荷造りを再開する。
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