もう一度君と…

弥生 桜香

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第七章

第七章「ハロウィン」1

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 体育祭の後すぐに中間があり、その結果が今日帰って来た。
 撃沈している者。
 思ったよりも成績が良かった者。
 そして、涼也はどちらも属す事無く、ただ、自分の成績を見て安堵していていた。

「…このままいけば合格圏内だな。」

 苦手科目はどうしても平均点より少し上の点数になってしまうが、得意科目は九十点台をキープしている。
 涼也はホッとしているとーー。

「お前、何でオレが教えたのに、こんな成績何だ。」
「えー。」

 運悪く体育祭の後席替えがあり、涼也の目の前は問題児二人が横並びになっていた。

「平均点じゃねぇか。」
「いや、数学は満点だぞ。」
「何で、そこだけはよくて他は駄目なんだ。」
「ん?ああ、理科も今回よかったぞ。」
「理数系だけかっ!「
「まあな。」
「褒めてないっ!」

 胸を張っている碧に樹は突っ込みを入れるが、残念ながら彼にはその言葉は届いていない。

「だって、国語とか意味不明。」
「何処がだよ。」
「何で作者じゃないのに作者がどう思っていいるか、何て分かる訳ねぇだろう。」
「……。」
「それに似たような漢字ありすぎ。」
「……。」
「つーかさ、古文とか今の社会必要ねぇじゃん。」
「……。」
「訳分かんねぇ。」

 文句を言う碧にブチブチと何かが切れるような音が聞こえそうな、そんな不穏な空気を発する人物がいるのだが、残念な事に碧はそこの事に気づいてはいない。

「そうか、そうか。」
「ん?」

 ようやく樹の纏う空気が可笑しい事に気づいた碧だったが、それは少し遅かっただろう。

「お前の言い分はよーくわかった。」
「えっ?あっ……。」

 やばいと碧はようやく理解したのか顔を真っ青にするが、残念ながらここで彼を助けようと思う人物はいなかった。

「そんなにも分からないのならば特別に問題集でも作ってやるとするか。」
「待て、早まるな。」
「早まってなどいない、というか、お前は本気でやる気があるのかっ!」
「……。」

 近くで怒鳴られたのか碧は己の耳を押さえて、若干涙目になりながら樹を見る。

「このままだとお前高校受験だって危ういんだぞ、本当にどうする気なんだお前は本当に。」
「……。」

 樹の言葉に碧はどこか申し訳なさそうに笑う。

「……どうした?」

 碧の視線に気づいたのか樹は不思議そうに尋ねるが、先ほどの笑みが嘘なんかじゃないかと思うほど、一瞬にしていつもの晴れやかな笑みを碧は浮かべていた。

「何がだよ。」
「……。」
「ああ、なんか面白い事ねぇかな、こんな勉強、勉強だなんてマジ死ぬし。」

 涼也は彼らのやり取りを見てそっと溜息を吐く。
 何故碧があそこまでみんなと違って必死で勉強をしない理由を知っていたし、それに彼は他の人と違って別の事を頑張っている事を知っていた。
 勿論それは今の碧が教えてくれたのではなく、前の彼が自分たちが卒業する時にばらしてくれたのだ。
 だから、それを知っている涼也はどこか複雑に思った。

「……そういや、もうすぐハロウィンだよな。」

 これ以上見ていられないというように涼也は視線を彷徨わせた先に見た黒板に書かれた日付からそう口にした。

「えっ、あっ、本当だ、うわ、チビたちに何か用意しねぇといけねぇじゃん。」
「あー、お前んとこはそうだったな。」

 涼也は碧の言葉に苦笑する。
 碧の孤児院では意外にそういうイベントごとが好きな人がやっているのか、子どもたちにお菓子を上げたり、逆に上級生になったら下の子どもたちにお菓子を上げなくてはならない。
 因みにその境目は小学生かそれ以上かの差だった。

「なになに、どういう事?」

 何か楽しい気配がしたのか何人かの女子が碧に集まる。

「あっ、俺んところでさ、ハロウィンパーティーがあるんだけど、チビたちの人数分以上にお菓子を用意しないといけぇんだよ。」
「へー、楽しそう。」
「いや、かなり面倒臭ぇし金はかかるし。」

 げんなりとしている碧に女子は何やらニンマリしている。

「それなら、手作りにしたら?」
「手作り?」
「そうそう、そうすれば材料代だけで結構な量ができるし。」
「小分けにしかも可愛くラッピングすれば女の子にも受けるよ。」
「おっ、それはいいな。」

 乗り気な碧は気づいていない女たちの目が爛々と輝いている事に。

「それじゃ、皆先生に行って調理室の許可をとるわよ。」
「オッケー。」
「わたしはエプロンの準備をするわ。」
「わたしはウィッグね。」
「あたしは仮装の準備ね。」
「わたしはカメラね。」
「あっ、雪美さんにも知らせないと。」
「皆やるわよ。」
「「「「おーっ!」」」」

 乗り気な女子たちにようやく碧は何かに気づいたがもう後の祭りだった。

「もしかして…俺やっちまった?」

 たらりと汗を流す碧に涼也は何も言う事が見つからず、ポンと彼の肩を叩いただけだった。
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