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第一章
第一章「リスタート」7
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家に帰ると怒鳴り声が聞こえた。
「……何やっているんだろうな。」
涼也は溜息を零し、そして、声のするリビングに向かう。
「あなたはいつもそうよっ!」
「お前だってっ!」
「や、止めてよ。」
両親の間に立つ京也は今にも泣きそうな顔をしている。
それもそうだろう、少し前まで小学生だった彼はまだ心も体も未熟なのに両親の喧嘩を目の当たりにしているのだ。
涼也は冷めた目でその光景を見ていたが、母親が近くにあったガラスでできた灰皿を引っ掴んだのを見て涼也は反射的に体を動かした。
「少しは気づきなさいよっ!」
「お前っ!」
母親が投げた灰皿は本来の狙った相手ではなく、近くにいた京也に向かっていった。
「あっ!」
「嘘っ!」
「――っ!」
両親の悲鳴と京也の息の飲む音を聞きながら涼也は半身を抱きしめた。
ガツンと鈍い音がその場にいた全員の耳に入り、そして、時が止まったかのように誰も身じろぎ一つしない。
感覚で言えば何時間も経った気がしたが、実際は数秒なのか、数分なのかは分からないがそのわずかな沈黙を破ったのは彼だった。
「京也、怪我ないか?」
己の身よりも第一に半身の身を心配する涼也に誰もが絶句する。
涼也は黙り込む京也に怪我があるのかと彼の体を撫でるが、幸いにも彼に怪我はなさそうだった。
「涼也。」
父親の声に涼也は振り返る。
その時、彼は自分の額から何か生ぬるいものが流れている事にようやく気付く。
「ああ、額切ってしまったか。」
「痛くないのか?」
「痛くなくはないけど、それでも、京也の方がショックだろ。」
「えっ…。」
「大好きな両親が怒鳴り合っている姿を見て、ショックじゃない方が可笑しいだろう。」
見た目はまだ少年のはずなのにその眼が発する光は少年では出せない光を発していた。
「二人とも頭冷やせよ。」
涼也は京也の手を引いて、自室に向かって歩き出す。
「待って、手当てを。」
「いい、自分でする。」
「でも……。」
「冷静に話せる気がしないから。」
冷たい声音は微かに震えていた。だが、その事に両親は気づく事はなかった。
「涼也。」
階段に差し掛かった段階でようやく京也が話した。
「怪我。」
「まあ、痛いけど、大丈夫。」
「病院行った方が。」
「無理だな。」
「何で…。」
「事を大きくしたくないんだ。」
涼也の言葉に京也は唇を噛む。
「大丈夫、流石に脳出血とかはないだろうし。」
「分からないじゃないか。」
「大丈夫、大丈夫。」
「何かあってからじゃ、遅いんだからな。」
「分かってるって。」
「……。」
表情を曇らせる京也に涼也は苦笑する。
「京也こそ当たらなかったか?」
「涼也のお蔭で無事だったけど。」
「それなら、よかった。」
「よくないよ。」
唇を尖らせる京也に涼也は肩を竦める。
「しょうがないだろう、体が勝手に動いたんだし。」
「涼也は絶対そんな死に方をする。」
「たとえば?」
「誰かを守る為に身を挺してとか?」
「……。」
涼也はフッと前の自分の事を思い出し、顔を引きつらせる。
「有り得そうじゃない?」
「ああ、そうだな…。」
「だから、自分の体を労わってよね。」
「極力。」
「絶対。」
「まあ、努力。」
「……本当に涼也は。」
京也は完全に脱力している。
「悪いな。」
「そう思うのなら労わってよね。」
「出来たらな。」
「いつもそうだ。」
「そうか?」
「そうだよ。」
涼也は過去の記憶を引っ張り出そうとするが十何年という前の話なので思い出すのがかなり難しかった。
「いつの話だ?」
「惚けてるの?」
「いや、本気で分からない。」
「呆れた。」
本当に呆れた顔をする京也に涼也は罰が悪そうな顔をする。
「仕方ないだろう。」
「はいはい。」
「で?」
「一年前だってさ、ドッチボールで運悪く顔面に当たりそうだった僕を押しのけて自分から当たりに行ったじゃないか。」
「そうだったか?」
「そうだよ、ちょっと前に突き指してボールをどうにかしようとした時に完全に骨を折ったの忘れたの?」
「あ、あーあれ…。」
涼也にしたらかなり昔の記憶だったのだが、幸いなのか分からないがその記憶は覚えていた。
何せあの時ーー。
「お前すごく泣きそうな顔してたもんな。」
「それは涼也が。」
「ははは、悪い悪い。」
必死な表情を浮かべる京也に涼也は思わず笑ってしまう。
「本当に涼也は…。」
「うん、悪いな。」
「……。」
涼也は京也の頭にポンと手を置く。
「急に変わったと思ったのに、変わらない部分もあって、だけど、変わっている、涼也、君は……。」
涼也は彼の言葉に目を細める。
「ん?」
「……やっぱり、何でもないや。」
何かを振り払うように京也は頭を振って笑った。
「何か可笑しい事があったらちゃんと言ってね。」
「了解。」
涼也はそう言うと階段を上り自室の扉を開け、中に入った。
「……はー。」
扉を閉めた涼也はズルズルと扉に凭れ掛かりながら床に座り込む。
「ははは…今になって震えてやがる。」
己の手が小刻みに震えているのを見て涼也は自嘲を浮かべる
「一歩間違えたら死んでたな……。」
あの時咄嗟に体が動いて本当によかったと涼也は思った、
「……死神なんてもんがいるんなら…絶対にあいつを連れて行かせたりなんかしねぇ。」
その強い意志を宿した瞳は爛々と輝いていた。
「……何やっているんだろうな。」
涼也は溜息を零し、そして、声のするリビングに向かう。
「あなたはいつもそうよっ!」
「お前だってっ!」
「や、止めてよ。」
両親の間に立つ京也は今にも泣きそうな顔をしている。
それもそうだろう、少し前まで小学生だった彼はまだ心も体も未熟なのに両親の喧嘩を目の当たりにしているのだ。
涼也は冷めた目でその光景を見ていたが、母親が近くにあったガラスでできた灰皿を引っ掴んだのを見て涼也は反射的に体を動かした。
「少しは気づきなさいよっ!」
「お前っ!」
母親が投げた灰皿は本来の狙った相手ではなく、近くにいた京也に向かっていった。
「あっ!」
「嘘っ!」
「――っ!」
両親の悲鳴と京也の息の飲む音を聞きながら涼也は半身を抱きしめた。
ガツンと鈍い音がその場にいた全員の耳に入り、そして、時が止まったかのように誰も身じろぎ一つしない。
感覚で言えば何時間も経った気がしたが、実際は数秒なのか、数分なのかは分からないがそのわずかな沈黙を破ったのは彼だった。
「京也、怪我ないか?」
己の身よりも第一に半身の身を心配する涼也に誰もが絶句する。
涼也は黙り込む京也に怪我があるのかと彼の体を撫でるが、幸いにも彼に怪我はなさそうだった。
「涼也。」
父親の声に涼也は振り返る。
その時、彼は自分の額から何か生ぬるいものが流れている事にようやく気付く。
「ああ、額切ってしまったか。」
「痛くないのか?」
「痛くなくはないけど、それでも、京也の方がショックだろ。」
「えっ…。」
「大好きな両親が怒鳴り合っている姿を見て、ショックじゃない方が可笑しいだろう。」
見た目はまだ少年のはずなのにその眼が発する光は少年では出せない光を発していた。
「二人とも頭冷やせよ。」
涼也は京也の手を引いて、自室に向かって歩き出す。
「待って、手当てを。」
「いい、自分でする。」
「でも……。」
「冷静に話せる気がしないから。」
冷たい声音は微かに震えていた。だが、その事に両親は気づく事はなかった。
「涼也。」
階段に差し掛かった段階でようやく京也が話した。
「怪我。」
「まあ、痛いけど、大丈夫。」
「病院行った方が。」
「無理だな。」
「何で…。」
「事を大きくしたくないんだ。」
涼也の言葉に京也は唇を噛む。
「大丈夫、流石に脳出血とかはないだろうし。」
「分からないじゃないか。」
「大丈夫、大丈夫。」
「何かあってからじゃ、遅いんだからな。」
「分かってるって。」
「……。」
表情を曇らせる京也に涼也は苦笑する。
「京也こそ当たらなかったか?」
「涼也のお蔭で無事だったけど。」
「それなら、よかった。」
「よくないよ。」
唇を尖らせる京也に涼也は肩を竦める。
「しょうがないだろう、体が勝手に動いたんだし。」
「涼也は絶対そんな死に方をする。」
「たとえば?」
「誰かを守る為に身を挺してとか?」
「……。」
涼也はフッと前の自分の事を思い出し、顔を引きつらせる。
「有り得そうじゃない?」
「ああ、そうだな…。」
「だから、自分の体を労わってよね。」
「極力。」
「絶対。」
「まあ、努力。」
「……本当に涼也は。」
京也は完全に脱力している。
「悪いな。」
「そう思うのなら労わってよね。」
「出来たらな。」
「いつもそうだ。」
「そうか?」
「そうだよ。」
涼也は過去の記憶を引っ張り出そうとするが十何年という前の話なので思い出すのがかなり難しかった。
「いつの話だ?」
「惚けてるの?」
「いや、本気で分からない。」
「呆れた。」
本当に呆れた顔をする京也に涼也は罰が悪そうな顔をする。
「仕方ないだろう。」
「はいはい。」
「で?」
「一年前だってさ、ドッチボールで運悪く顔面に当たりそうだった僕を押しのけて自分から当たりに行ったじゃないか。」
「そうだったか?」
「そうだよ、ちょっと前に突き指してボールをどうにかしようとした時に完全に骨を折ったの忘れたの?」
「あ、あーあれ…。」
涼也にしたらかなり昔の記憶だったのだが、幸いなのか分からないがその記憶は覚えていた。
何せあの時ーー。
「お前すごく泣きそうな顔してたもんな。」
「それは涼也が。」
「ははは、悪い悪い。」
必死な表情を浮かべる京也に涼也は思わず笑ってしまう。
「本当に涼也は…。」
「うん、悪いな。」
「……。」
涼也は京也の頭にポンと手を置く。
「急に変わったと思ったのに、変わらない部分もあって、だけど、変わっている、涼也、君は……。」
涼也は彼の言葉に目を細める。
「ん?」
「……やっぱり、何でもないや。」
何かを振り払うように京也は頭を振って笑った。
「何か可笑しい事があったらちゃんと言ってね。」
「了解。」
涼也はそう言うと階段を上り自室の扉を開け、中に入った。
「……はー。」
扉を閉めた涼也はズルズルと扉に凭れ掛かりながら床に座り込む。
「ははは…今になって震えてやがる。」
己の手が小刻みに震えているのを見て涼也は自嘲を浮かべる
「一歩間違えたら死んでたな……。」
あの時咄嗟に体が動いて本当によかったと涼也は思った、
「……死神なんてもんがいるんなら…絶対にあいつを連れて行かせたりなんかしねぇ。」
その強い意志を宿した瞳は爛々と輝いていた。
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