今世ではのんびりしたいのですが…無理ですか…

弥生 桜香

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第二章

《薬草》

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 あれからすぐにセイラたちは森に向かった。

「えっと、薬草が五本で一束になって、それが三束で50Gか。」
「何本摘めばいいんだ?」
「いっぱいだよ。」
「間違っていませんけど…、50G得ようとすれば、十五本摘まねばなりませんね。」
「ミラ、凄いねすぐに計算出来て。」
「お母様に鍛えられましたから。」

 まだ、五つの子どもなのに掛け算の計算の出来るミラにセイラは本気で驚く。

「そうなの?」
「はい、お買い物に出た時に幾らになるか聞いてきましたから。」
「そうなのね。」

 セイラはレミラの事を思い出し、懐かしく思う。
 そんなに前の話しじゃないのに、色んな事が起こりすぎてもう何年も経っている気がしてしまった。

「あっ、今度図書館に行きましょうか。」
「図書館ですか?」
「ええ。」

 ついこの間セイラは五つになった。
 だから、図書館に行くことが許される。

「もっといろいろと勉強しないといけないから。」
「……。」
「難しいの嫌い。」

 セイラの言葉にカルムとレラが顔を顰めているが、セイラとミラは乗り気だった。

「セイラ様、お供します。」
「ありがとう、ミラ。」
「……セイラが行くんなら…。」
「仕方ないです。」

 結局四人で行く事になりセイラは微笑む。

「楽しみだね。」
「はい。」
「それよりも、今はクエストだろう。」
「そうだよ。」

 さっさと仕事に切り替える二人にセイラとミラはクスクスと笑う。

「二人は勉強が嫌いなのね。」
「レラはそうでしょうね。」
「えっ?カルムもじゃないの?」
「あいつは違うと思われます。」
「……。」

 ミラの言葉にセイラは意外だというような顔をしている。

「本当はセイラ様もお気づきなのでしょう?」
「ええ。」

 ミラに誤魔化しがきかないと分かったセイラは大人しく頷く。

「やはり。」
「だって、カルムは体が動かすのが好きなだけで、勉強は苦手ってわけじゃないわ。」
「何故。」
「だって、私が常時クエストだけで一日分になると言って彼は疑いもしなかったわ。」
「考えなしという可能性もありますけど?」

 ミラの言葉にセイラは苦笑する。

「違うわ。」

 きっぱりと否定するセイラにミラは顔を顰める。

「もう、すぐにそんな顔をしないの。」

 セイラは苦笑しながら軽くミラの頬を引っ張る。

「せいらひゃま。」
「ふふふ。」
「わりゃいひょとしゃありましゃん。」

 クスクスと一頻り笑ったセイラはそっと彼女の頬を離す。

「セイラ様。」

 咎めるように睨むミラにセイラは慣れているのは平然としている。

「さて、先ほどの考えの答えをいいましょうか。」
「はぐらかさないでください。」
「はぐらかしてはいないわよ。」

 セイラがそう言えばミラは不服そうな顔をするが、それ以上突っ込む事はなかった。

「もし、本当に勉強が嫌いならそもそも文字すら覚えようとしないわ。」
「……。」
「それにカルムのお母さんなら間違いなく勉強させていそうだしね。」
「どのような方なのですか?」
「……。」

 ただ単に気になっているのだとは分かっているのだと、セイラも分かっている、だけど、母を喪っている彼女にはよくよく考えれば酷な話だったかもしれないと今さらながらにセイラは不安になる。

「セイラ様、確かにまだ完全には母の死は乗り越えられておりません、ですが、こうして貴女様に悲しい顔を指せない程度には乗り越えているつもりです。」
「ミラ…。」
「で、どのような方なのです、あのような方の奥方になり、あの息子を育てる猛者は。」
「も、猛者?」

 セイラは若干顔を引きつらせるが、ミラはそれに気づいてワザと無表情を作っているのか、気づいていなくて普段の表情をしているのか。
 分からないながらでも、多分後者なのではないかとセイラは思いながら口を開く。

「しっかりされた方だと思うわ。」
「で?」
「自分の能力を把握し、それをコントロールされておられましたし、息子を信用しているようでした。」
「……ふむ。」
「お綺麗な方でいつでも私に相談してくれて構わないともおっしゃっておられましたし、素敵な方だと思うわ。」
「おーい、お前ら、着いて来いよ。」
「そうですよ。」

 いつの間にかかなり先に言っている二人にセイラとミラは互いに顔を見合わせ、苦笑する。

「はーい。」
「今行きます。」

 返事をしたセイラとミラはカルムとレラの元に小走りで向かった。
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