僕がサポーターになった理由

弥生 桜香

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第一章

126

「ねえ、いつまでついてくる気なの?」
「気づいていたのか。」

 僕は人気のない廊下で立ち止まると、振り返る事をせず、後ろに話しかける。

「当たり前だよ、ずっとついてきたよね、御神くん。」
「ずっと、ね。本当にいつから気づいていたんだ。言葉は偽れる。」
「……僕があの施設を…、いや、あの舞台を降りたところかな。」
「……。」
「違った?」

 違ってないよね?
 黙り込むひょうちゃん。
 無言は肯定と同じだよ。

「君は戻った方がいいと思うよ。」
「何故だ。」
「処罰されるよ。」
「お前もそうだろう。」
「バレなければ問題ないよ。」
「……。」

 僕の言葉にひょうちゃんは凍り付いていた。

「……お前は想像以上に目を話せない奴だな。」
「そうかな、これくらい普通だよ。」

 ひょうちゃんは眉を寄せた。

「普通とは何なんだろうな。」
「何?」

 急に何を言っているのだろう?
 僕は分からず首を傾げる。

「御神くん?」
「……こんな所で立ち止まって大丈夫なのか?」
「……。」

 大丈夫ではない、時間が惜しいのにこんな所で足止めを食らうのは正直痛い。
 僕は無言で足を動かす、そして、当然のようにひょうちゃんがついてくる。

「本当に、何でついてくるの。」
「悪いか。」
「悪いよ。」
「そうか。」
「そうか、じゃないよ、停学になったらどうするんだよ。」
「それはお前もだろう。」

 先ほども言われた言葉、でも、僕が最後の警告は聞き入れなかったようだ。
 ならば、僕のする事は決まった。
 僕は足を動かす。

「お前。」
「一緒に行くんだよね、置いて行くよ。」
「……。」

 僕は出来るだけそっけなくそう言う。
 そうじゃないと、僕は僕を保てそうにない。
 望んでいたんだ。
 彼の隣に立ち、そして、一緒に何かの事件などを解決する事を。
 でも、喜んではいけない。
 だって、これはただの成り行きなんだ。
 だから、必要以上に期待してはだめだ、空しくなるだけだから。
 僕は気持ちを切り替える。

「どこに向かうつもりなんだ?」
「メインコントロール室だ。」
「何でそんなところに?」
「僕が何か起こすのならまずシステムを奪う、そして、徐々に事を起こす。」
「……。」
「当てが外れてもいい、そこに行けば全体の隠しカメラが見れるし、敵が何を考えているか読めるだろう。」

 ひょうちゃんは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに口角を上げて笑った。

「他に質問は?」
「お前は何もんだ?」
「僕?僕はただの一生徒だよ。」

 僕の答えにひょうちゃんはぐっと眉間にしわを寄せる。

「嘘だろう。」
「失礼な、僕は僕でしかないよ、今も、昔も、そして、未来もね。」

 僕はそれだけ言うと、右へと曲がる。

「おい、そっちは逆方向だぞ。」
「こっちじゃないと駄目だ、今そっちに行くと巡回の先生と鉢合わせする、こっちは今しがた終わったはずだから、 次の巡回まで時間があるよ。」
「お前、何でそんな事を知っているんだよ。」
「当然だろう?」
「……。」

 僕は特におかしい事を言っているはずなんてないのに、なのに、何故かひょうちゃんは苦虫を嚙みつぶしたような顔をしている。
 何故だ?腑に落ちない。

「お前の常識は一般的に非常識だと言われないか?」
「全く、むしろ、僕の師に言わせたらまだまだだよ。」
「……。」
「さて、ひょうちゃん。この先は私語厳禁、いいね。」
「了解。」

 シッと人差し指を自分の唇に押し当てる。
 ここから先は本当に余裕はない。
 先生の巡回ルートの穴をかいくぐってメインルームに行かなくてはならない、そして、メインルームには確実に警備の人がいるので、一瞬で蹴りを付けないと応援を呼ばれて、バッドエンド。
 僕たちは良くて謹慎、悪くて警察に捕まるだろう。
 まあ、もっと悪ければ敵に見つかって消される可能性もゼロじゃないが、敵だって危険を冒しているのだ、安易な方法を選ばないだろう。
 突発的な対処には確実に穴を作る。
 そうなれば、自分たちの足取りをばらしてしまう恐れがあるだろう。
 さて、僕は時計をいじり、空中にマップを映し出す。
 何か遭った時の為に、作っていたものだ。
 立体の校舎の中に複数黄色の点が動いている。これは今日の先生方の見回りのルートを表している。
 そして、今日の対戦予定の組表とそれのおおよその終わる時刻が出ている。
 頭の中にもしっかりと予定を叩きこんでいるが、念には念を入れてこうやって情報を持ち歩いている。
 勿論自分以外が弄れないように指紋認証や暗証番号を入れるように設定しているのだけれども。
 僕はジェスチャーでひょうちゃんに後数分以内に見回りの先生が来るので、それまでに、地点Aに移動する事を伝える。
 そして、それが伝わったのか、彼は了解と合図してくれる。

「……。」

 彼には完全に僕との記憶がないと思っていたが、違う事が今分かった。
 このジェスチャーは子どもの頃遊び感覚で二人が共有して使っていたものだ、誰にも教えていないし、師たちとは別の合図を使っているのだ。
 色々考えたいが、今は目の前の事に集中する。
 大丈夫、大丈夫だ。
 僕は自己暗示のようにそう自分に言い聞かせ、音を立てずに走り出す。
 ひょうちゃんは僕程うまく足音を消せてはいないが、それでも、持っている手段を使って消音している。
 感度の良い先生にはバレてしまう恐れがある方法だが、幸いにもそこまでの熟練度を持った先生の見回りは別の現場のはずだ。
 問題はない。
 僕たちは無事A地点を通過し、B地点へと向かう。
 少し迂回する事になるが、こちらのルートの方が安全だった。
 まあ、僕一人だったら、危険を冒してでも最短ルートを行っていたかもしれないけど、今回のような隠密活動初心者なひょうちゃんには厳しいのでこっちの方がいいだろう。
 さて、何が出るやら。
感想 7

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