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第一章
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「ふぁ…。」
「林くん、どうしたの?」
「どうしたも、こうしたもないわよ、どこも校長先生とかの話って長いから眠いわね。」
「そうだね…。」
「そういいつつ、貴方は全く眠くそうじゃないわね。」
教室に戻る中、林くんと僕はそんな会話をしていた。
「そうかな?」
「そうよ。」
「ん~、まあ、僕にしては有意義な時間だったからね。」
僕の言葉に林くんはまるで変人を見るような目で僕を見てくる。
「どうしたのかな?」
「どうしたのかな、じゃないわよ、貴方ってあんなくだらない話が面白いと本気で思っているの?」
「うーん、結構為になっていると思うよ?」
「どこがかしら?」
「そうだね、たとえば、端々にあった先生の実体験とか。」
「あったかしら?」
「うん、あったよ、校長先生は水の能力を持っていたから戦闘職じゃなく、回復役(ヒーラー)として活躍していたから、その時の連携の大切さを語っていたし、他にもここの卒業生である担任の先生とSクラスの担当の先生とBクラスの先生の事も話されていたし、結構為になったと思うよ、自分だったらどうするかとか工夫とか考えられるしね。」
「えっ?」
林くんは目を丸くしているが、僕にしたら何故彼が目を丸くしているのかすら分からない。
「何でそんな事まで知っているのよ?」
「ん~?」
僕は完全に呆れている彼に首を傾げる。
「だから、何で貴方が先生たちの事詳しい訳?」
「先生方の経歴を調べるのは普通の事じゃないかな?」
「……。」
絶句している林くんに僕は思わず目を瞬かせる。
「えっ?だって、ここの先生たちは現役ではないけど、結構有名な方々ばかりだし、ちょっと探れば色々分かるけど。」
「そんな暇はないわよ普通は。」
「……。」
僕は彼の言葉に眉を寄せる。
「そんな暇って、それは違うと思うけど。」
「どういう意味?」
「……それは君が気づかないといけない事かな?」
僕としてはかなりのヒントを彼に与えたつもりだ、だから、これ以上僕は何も言えない。
もし、この先彼が誰のサポートとして支えるのならば、きっと彼は今のままではいられない。
僕がそうだったからだ、彼を支えるなら何が必要だろうと、幼い自分は頭をひねった。
まず僕は力が必要だと思った。
だけど、僕は無属性だった。
他の人よりも無力だと思った。
だから、僕は体力をつけ、体術を覚え、他にも剣道、弓道、思いつく限りの格闘技やクライミングなどで体を鍛えた。
ある程度力を付けた後思った、自分は自分の身すら守れないのではないのかと。
その為に自衛する物を探した、でも、その当時販売されていた自衛の商品はそれぞれの属性対応の物しかなく無属性の僕には使えないものばかりだった。
だから、僕は自分の身を守れる物を開発しようと思った、ある程度の物は作れたのだが、問題が起こった。
それは軍資金が足らず、僕が望んでいるほどの威力もなければ、満足するようなものではなかった。
だから、僕はある事を思い出し、思いがけない事が起こったが、おおむね思い通りに事が運んだ。
その後、僕は無知だと知った。
法律や過去の出来事、そして、個人の能力、様々な情報が足らなかった。それからそれを取り入れようとすれば嘘も、本当も混ざり合った情報が僕に押し押せてきた。
そこから取捨選択する方法を独自に覚え、今に至っている。
「おっと。」
僕たちはいつの間にか教室の前までたどり着き、僕はあと一歩で教室の扉を通り過ぎる所だった。
「貴方ってどこか抜けているわね。」
僕のドジに気づいたのか林くんは呆れたような顔でそう言ってきた。
「ははは…。」
僕は乾いた笑いで返し、そのまま教室に入る。
林くんの言葉で僕は彼を思い出してしまった。
幼い頃はもっと僕は危機管理能力とかが乏しくよく彼に迷惑をかけてしまっていた、だから、彼はよく「お前はどっか抜けているな」みたいなニュアンスの言葉漏れていたような気がする。
駄目だ、思い出したら会いたくなる。
嗚呼、早く編集したい。
僕が考え事から浮上した時にはいつの間にやって来たのか担任が黒板の前に立っていた。
「あー、入学おめでとう、一応、お前らの先輩からの忠告が一つあるそれは『気を抜くな』その一言だ。
意味が分からないという顔をしているな、まあ、すぐに訳は分かると思うぞ。」
扇先生の言葉に僕は納得する。
確かに普通の学校ならば普通に勉強をすれば平穏な日常が手に入るだろう。
でも、ここの学校は例え普通科であったとしても、平穏とは言えない授業が組みあわされていたりする、それを考えれば『気を抜く』事をすれば命取りになるだろう。
「と、これから長くて一年は共にするからな、自己紹介をする。
知っている奴はいるかもしれねぇが、担任の扇誠道だ。属性は「火」。
面倒臭い事は起こすな、以上。」
「しつもーん、せんせー、恋人はいますか?」
「早速面倒な質問すんなよ、あー、いねぇ、これでいいか。おっと、窓側の一番最初の奴自己紹介しろ。」
「えっ、えっと、相木(あいき)葛葉(くずは)、属性は「木」で、夢はいつか「バイオレット」さんみたいなアイテムを作る事です。」
僕は自己紹介を聞きながら自分は何を話そうかと考えるが、考える必要もない事に気づく。
目の前の曽我(そが)さんの自己紹介が終わり、僕は立ち上がる。
「空野紫織です、趣味はモノ作りとネットです。夢はある人をぎゃふんと言わせる事です、あっ、ぎゃふんは死語かな?まあ、いいや、そして、ある人を支え続けるのが僕の目標であり、絶対です。」
何故か僕の自己紹介で回りが若干ざわめいた気がするが、まあ、あまり気にする必要はないだろう。
そして、林くんの番まで回ってくる。
「林一平、属性は「闇」………わたしは「バイオレット」何て認めないわ、だから、自己紹介で「バイオレット」みたいなとか、「バイオレット」みたいにとかいう人は絶対にわたしは認めないわ。」
林くんの言葉にこの場の大半の人が怒りだす。
僕はびっくりするが、それ以上に彼の言葉に興味を持つ。
「おーい、何でそんに「バイオレット」を毛嫌いするんだ?」
扇先生の言葉に僕は驚きつつも、林くんの言葉を待つ。
「あんな人の作るモノって誰でも、万人に使えるなんて最初に作った人を侮辱する事じゃない、だから、わたしは許さないわ。」
「……そうか?」
「ええ、人の努力をまるで自分の功績として名声を上げるあんな人大嫌いよ。」
「……。」
扇先生は何か言いたげな顔をしているが、結局何も言う事無く次の日との自己紹介に戻ってしまった。
僕は何で扇先生があんな顔をしたのか。
そして、林くんの言葉の意味を探りながら、BGMとしてクラスメートの自己紹介を聞いていた。
最後の一人が終わると、先生はどこか面倒臭そうに僕たちを見渡し、もう一度何故か僕を見た気がする。
「……。」
「あー、これから長くて一年間共にする仲間だ、切磋琢磨して己を磨き、他人との協調性を持て以上だ。」
「それだけですか~。」
「ああ、どうせ、くそめんどくせぇ行事が明日から始まるからな、今日はここまでだ、明日、明後日はオリエンテーションだ。」
「何をするんですか?」
「明日は北棟と東棟の案内、明後日は南棟と西棟だ。」
「何で二日間もあるんですか?」
「この学校のマップを見りゃわかるが、敷地内がかなり広いからな、一日がかりで案内した所で迷子になる奴らが続出したからな。」
つまりは、今までの経験を踏まえて二日間でみっちりと把握してもらう為にオリエンテーションを設けているみたいだった。
「と言う事で、今日は解散だ。」
さっさと教室から出ていく担任に呆然とする生徒が多数いるが幾人かは思い思いに行動を始めている。
僕は立ち上がり林くんに近づく。
「大丈夫?」
「見苦しい所を見せてしまったわね。」
「そんな事はないよ。」
僕が首を横に振ると彼は弱弱しい笑みを浮かべる。
「はー、駄目ね。」
「……君さえよければ話聞くよ?それですっきりするんならばだけどね。」
「そうね……、ごめんなさいね。今は気分じゃないわ。」
「そっか、なら、今日は帰ろうか?」
「ええ、さて、お迎えに行かないとお姫様がへそを曲げるわ。」
「うん。」
こうして僕の高校生の一日は終わった。
思っていたよりも充実した学園生活になりそうで、僕は楽しんでいた。
でも……、楽しんでいられたのはきっと最初の一週間だけだったと思う。
これから僕は様々な物を目にし、巻き込まれる。
今はまだ序章すら始まっていない……。
「林くん、どうしたの?」
「どうしたも、こうしたもないわよ、どこも校長先生とかの話って長いから眠いわね。」
「そうだね…。」
「そういいつつ、貴方は全く眠くそうじゃないわね。」
教室に戻る中、林くんと僕はそんな会話をしていた。
「そうかな?」
「そうよ。」
「ん~、まあ、僕にしては有意義な時間だったからね。」
僕の言葉に林くんはまるで変人を見るような目で僕を見てくる。
「どうしたのかな?」
「どうしたのかな、じゃないわよ、貴方ってあんなくだらない話が面白いと本気で思っているの?」
「うーん、結構為になっていると思うよ?」
「どこがかしら?」
「そうだね、たとえば、端々にあった先生の実体験とか。」
「あったかしら?」
「うん、あったよ、校長先生は水の能力を持っていたから戦闘職じゃなく、回復役(ヒーラー)として活躍していたから、その時の連携の大切さを語っていたし、他にもここの卒業生である担任の先生とSクラスの担当の先生とBクラスの先生の事も話されていたし、結構為になったと思うよ、自分だったらどうするかとか工夫とか考えられるしね。」
「えっ?」
林くんは目を丸くしているが、僕にしたら何故彼が目を丸くしているのかすら分からない。
「何でそんな事まで知っているのよ?」
「ん~?」
僕は完全に呆れている彼に首を傾げる。
「だから、何で貴方が先生たちの事詳しい訳?」
「先生方の経歴を調べるのは普通の事じゃないかな?」
「……。」
絶句している林くんに僕は思わず目を瞬かせる。
「えっ?だって、ここの先生たちは現役ではないけど、結構有名な方々ばかりだし、ちょっと探れば色々分かるけど。」
「そんな暇はないわよ普通は。」
「……。」
僕は彼の言葉に眉を寄せる。
「そんな暇って、それは違うと思うけど。」
「どういう意味?」
「……それは君が気づかないといけない事かな?」
僕としてはかなりのヒントを彼に与えたつもりだ、だから、これ以上僕は何も言えない。
もし、この先彼が誰のサポートとして支えるのならば、きっと彼は今のままではいられない。
僕がそうだったからだ、彼を支えるなら何が必要だろうと、幼い自分は頭をひねった。
まず僕は力が必要だと思った。
だけど、僕は無属性だった。
他の人よりも無力だと思った。
だから、僕は体力をつけ、体術を覚え、他にも剣道、弓道、思いつく限りの格闘技やクライミングなどで体を鍛えた。
ある程度力を付けた後思った、自分は自分の身すら守れないのではないのかと。
その為に自衛する物を探した、でも、その当時販売されていた自衛の商品はそれぞれの属性対応の物しかなく無属性の僕には使えないものばかりだった。
だから、僕は自分の身を守れる物を開発しようと思った、ある程度の物は作れたのだが、問題が起こった。
それは軍資金が足らず、僕が望んでいるほどの威力もなければ、満足するようなものではなかった。
だから、僕はある事を思い出し、思いがけない事が起こったが、おおむね思い通りに事が運んだ。
その後、僕は無知だと知った。
法律や過去の出来事、そして、個人の能力、様々な情報が足らなかった。それからそれを取り入れようとすれば嘘も、本当も混ざり合った情報が僕に押し押せてきた。
そこから取捨選択する方法を独自に覚え、今に至っている。
「おっと。」
僕たちはいつの間にか教室の前までたどり着き、僕はあと一歩で教室の扉を通り過ぎる所だった。
「貴方ってどこか抜けているわね。」
僕のドジに気づいたのか林くんは呆れたような顔でそう言ってきた。
「ははは…。」
僕は乾いた笑いで返し、そのまま教室に入る。
林くんの言葉で僕は彼を思い出してしまった。
幼い頃はもっと僕は危機管理能力とかが乏しくよく彼に迷惑をかけてしまっていた、だから、彼はよく「お前はどっか抜けているな」みたいなニュアンスの言葉漏れていたような気がする。
駄目だ、思い出したら会いたくなる。
嗚呼、早く編集したい。
僕が考え事から浮上した時にはいつの間にやって来たのか担任が黒板の前に立っていた。
「あー、入学おめでとう、一応、お前らの先輩からの忠告が一つあるそれは『気を抜くな』その一言だ。
意味が分からないという顔をしているな、まあ、すぐに訳は分かると思うぞ。」
扇先生の言葉に僕は納得する。
確かに普通の学校ならば普通に勉強をすれば平穏な日常が手に入るだろう。
でも、ここの学校は例え普通科であったとしても、平穏とは言えない授業が組みあわされていたりする、それを考えれば『気を抜く』事をすれば命取りになるだろう。
「と、これから長くて一年は共にするからな、自己紹介をする。
知っている奴はいるかもしれねぇが、担任の扇誠道だ。属性は「火」。
面倒臭い事は起こすな、以上。」
「しつもーん、せんせー、恋人はいますか?」
「早速面倒な質問すんなよ、あー、いねぇ、これでいいか。おっと、窓側の一番最初の奴自己紹介しろ。」
「えっ、えっと、相木(あいき)葛葉(くずは)、属性は「木」で、夢はいつか「バイオレット」さんみたいなアイテムを作る事です。」
僕は自己紹介を聞きながら自分は何を話そうかと考えるが、考える必要もない事に気づく。
目の前の曽我(そが)さんの自己紹介が終わり、僕は立ち上がる。
「空野紫織です、趣味はモノ作りとネットです。夢はある人をぎゃふんと言わせる事です、あっ、ぎゃふんは死語かな?まあ、いいや、そして、ある人を支え続けるのが僕の目標であり、絶対です。」
何故か僕の自己紹介で回りが若干ざわめいた気がするが、まあ、あまり気にする必要はないだろう。
そして、林くんの番まで回ってくる。
「林一平、属性は「闇」………わたしは「バイオレット」何て認めないわ、だから、自己紹介で「バイオレット」みたいなとか、「バイオレット」みたいにとかいう人は絶対にわたしは認めないわ。」
林くんの言葉にこの場の大半の人が怒りだす。
僕はびっくりするが、それ以上に彼の言葉に興味を持つ。
「おーい、何でそんに「バイオレット」を毛嫌いするんだ?」
扇先生の言葉に僕は驚きつつも、林くんの言葉を待つ。
「あんな人の作るモノって誰でも、万人に使えるなんて最初に作った人を侮辱する事じゃない、だから、わたしは許さないわ。」
「……そうか?」
「ええ、人の努力をまるで自分の功績として名声を上げるあんな人大嫌いよ。」
「……。」
扇先生は何か言いたげな顔をしているが、結局何も言う事無く次の日との自己紹介に戻ってしまった。
僕は何で扇先生があんな顔をしたのか。
そして、林くんの言葉の意味を探りながら、BGMとしてクラスメートの自己紹介を聞いていた。
最後の一人が終わると、先生はどこか面倒臭そうに僕たちを見渡し、もう一度何故か僕を見た気がする。
「……。」
「あー、これから長くて一年間共にする仲間だ、切磋琢磨して己を磨き、他人との協調性を持て以上だ。」
「それだけですか~。」
「ああ、どうせ、くそめんどくせぇ行事が明日から始まるからな、今日はここまでだ、明日、明後日はオリエンテーションだ。」
「何をするんですか?」
「明日は北棟と東棟の案内、明後日は南棟と西棟だ。」
「何で二日間もあるんですか?」
「この学校のマップを見りゃわかるが、敷地内がかなり広いからな、一日がかりで案内した所で迷子になる奴らが続出したからな。」
つまりは、今までの経験を踏まえて二日間でみっちりと把握してもらう為にオリエンテーションを設けているみたいだった。
「と言う事で、今日は解散だ。」
さっさと教室から出ていく担任に呆然とする生徒が多数いるが幾人かは思い思いに行動を始めている。
僕は立ち上がり林くんに近づく。
「大丈夫?」
「見苦しい所を見せてしまったわね。」
「そんな事はないよ。」
僕が首を横に振ると彼は弱弱しい笑みを浮かべる。
「はー、駄目ね。」
「……君さえよければ話聞くよ?それですっきりするんならばだけどね。」
「そうね……、ごめんなさいね。今は気分じゃないわ。」
「そっか、なら、今日は帰ろうか?」
「ええ、さて、お迎えに行かないとお姫様がへそを曲げるわ。」
「うん。」
こうして僕の高校生の一日は終わった。
思っていたよりも充実した学園生活になりそうで、僕は楽しんでいた。
でも……、楽しんでいられたのはきっと最初の一週間だけだったと思う。
これから僕は様々な物を目にし、巻き込まれる。
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