僕がサポーターになった理由

弥生 桜香

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第一章

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 触れるな、その怒声の声の持ち主を僕は知っていた。

 僕の意識は瞬時にそちらに切り替わる。

 彼は女子の手を振り払っている。

 彼の周りは以上に高ぶっている。

 ビキビキと嫌な音がする。

 マズイっ!

 そう思った瞬間には僕は踏み出していた。


 ガガガガガガガガッ


 そんな音が教室中に轟く。
 彼、ひょうちゃんが彼の名の通り、氷で攻撃する。その標的は彼にまとわりついていたAクラスの女子数名だ。

「――っ!」

 僕は反射的に彼の攻撃範囲内にいた女子生徒の前に立つ。

 顔を庇うようにクロスさせ、攻撃をしのぐ。

 彼の冷気が僕を包み込む、だけど、その冷気は確かに冷たいはずなのに、どこか、僕に遠慮しているようだった。

 攻撃をしのぎ、腕を下げた僕が見たのは目の前にそびえたつ氷の壁とその半透明の先にいる彼の姿だった。

 忌々しい壁を睨み、そして、僕はその怒りやら悔しさやらの感情を爆発させながら脚に力を集中して地面を蹴り、飛び蹴りで氷を粉砕する。

 その時、若干教室が煩かったが、僕はそんな事どうでもよかった。

 ざくざくと霜を踏みながら僕はひょうちゃんを睨む。

「何だ。」
「ねぇ、君って子ども?」
「ああ?」

 僕の問いかけにひょうちゃんは切れそうになっている。だけど、彼のそんな怒りよりも僕の方が切れていた。

「イラついているからって能力(ちから)で誇示するって、癇癪を起した子どもと同じだよね?」
「違う。」
「同じだよ。」

 僕は手を伸ばし、その白磁のような頬に触れ、遠慮なく引っ張る。

「――っ!」

 灰色と薄い緑色がかかった灰色の瞳が見開かれる。

「君は人を傷つけようとしたんだよ。」
「……。」
「言う事分かるよね?」

 ジッと目を見れば泳ぐ瞳にようやく自分が悪いのだと気づいたのだと悟った、だから、僕は彼の頬から手をのける。

「悪かった。」
「謝るのは僕じゃないよ。」
「……。」

 ちらりと彼は僕を見て、そして、彼が傷つけようとした女子生徒たちを見た。

「わりぃ。」

 少し心が籠っていないような気がするが、彼にしては及第点だと分かり、僕は頷く。

 ここで、僕は自分たちを見る視線に気づいた。

 好奇心。

 驚き。

 不審。

 様々な感情が僕に向けられている。

「えっ?」

 僕はその訳の分からない視線の意味を探る為に自分の行動を振り返り、顔を真っ青にさせる。

「えっと、あの……。」

 ぼ、僕は何をした。

 怒りのあまり、ひょうちゃんに手を出した。

 やばい

 やばい

 やばい

 この時、僕の頭の中は真っ白になっていた。

「し、失礼しましたっ!」

 脱兎のごとく僕は教室から逃げ出してしまった。

「ま、待て。」
「空野くんっ!」
「まあ。」

 教室の方から色んな声が上がるが、僕は逃げる事しか頭の中になく、気づいた時には人気の少ない自動販売機の所まで逃げ出してた。
 そして、チャイムが鳴るまで僕は多分放心していたのだと思う、だって、その間の記憶がないという事はそういう事だろう。
 この後、教室に戻った僕は針の筵城代だったので、そそくさと逃げるように下校した。





 まさか、あんな事になっているなんて。

 この時の僕は何も分かっていなかった。
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