僕がサポーターになった理由

弥生 桜香

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第一章

28

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「悔しい、悔しい、悔しいわっ!」
「まあ、まあ。」
「お母様仕方ないですよ。」

 荒れている蘭さんに旦那さんと鈴蘭さんが二人がかりで慰めている。

「仕方ないだろう。」
「そうそう。」
「……仕方なくないわ。」

 蘭さんの言葉に僕は思わず、頷きそうになった。
 あのナイフは普通では売っていない。
 だって、アレは僕が作って、盗まれたものだ。

 アレは試作品だった。
 力を込めれば姿を消す仕組みとなっていた。
 でも、商品化するには色々な問題が出てきてしまったので、没となった。

 しかし、その試作品の一つが誰かに奪われてしまった。
 警察にも届け出をだした、なのに、何故、警察の手元にそれがあるのだろう。

「……。」
「……。」

 アレが僕の物だと知っているのはきっと、知っているのはこの場にいる人で言えば小百合さんと蘭さんの二人だ。
 だから、蘭さんは負けた事にも憤っているが、それ以上に、アレがあの人の手元にあるのが気に喰わなかったのだ。

「蘭さん。」

 僕は彼女の名前を呼び、首を横に振ると、彼女はぐっと唇を噛んだ。

「……そちらは不思議なナイフですね?」
「ああ、これですか。」

 えっ?

 いかにも自然と話し出す小百合さんに僕は思わず絶句する。

「ええ、変わったナイフですね、まるで、手品のように急に出てきたように見えました。」
「こちらはある奴から譲り受けたものですので、自分もあまり知りませんが、こうして、力を流し込めば。」
「まあ、消えるのですね。」
「目ではね。」

 そう言って男は小百合さんに見えないナイフを差し出す。
 恐る恐る触る小百合さんは女優だ。
 あまりの自然さに僕はただただ見ている事しか出来ない。

「あら、確かにそこにあるのですね。」
「ええ。」
「いいですね、護身用に欲しいのですが、頂く事ってできません?」
「……。」

 小百合さんの言葉に男は苦笑する。

「申し訳ないのですが、これ一本しかなくて。」
「そうなんですか。」

 シュンとする小百合さんに申し訳なく思っているのか、男はもう少しナイフを見てみるかと申し出る。

「まあ、ありがとうございます。」

 小百合さんはナイフを持ち、かざしたり、振ったりする。
 一頻り満足したのか、小百合さんはニッコリと微笑み、男にナイフを返す。

「ありがとうございました、本当に素敵なナイフですね、振った時の振りやすさなど、今まで持ったどのナイフよりもずっと扱いやすかったです。」
「そこまで言ってもらえるのなら、貰った奴に一度聞いてみます。」
「まあ、ありがとうございます。」
「……。」

 僕たちは男がある人物を一瞬見た事を見逃さなかった。

 ただ、それ以上にすごかったのはきっと小百合さんの手腕だろう。
 何せ、ナイフを振った時、一瞬、力を込め、すぐに別の何の変哲もない全く同じ形のナイフを作り出し、交換したのだから。

 小百合さんのギフトは武器製造だ。
 その武器の素材、形、それらを頭の中に思い浮かべ、一瞬で作り上げる。

 ただ、その武器はその本来その素材で作った武器と比べればどうしても、性能は落ちてしまうし、劣化も早い。
 だから、彼女は普段は作りはしないが、それでも、今回はその能力を解放した。

「おばあさま~。」
「あら、孫が呼んでいるわね、失礼しますわ。」
「はい。」

 小百合さんはにこやかにこちらに向かい、そして、鈴蘭さんにーー。

「ナイスアシスト。」
「おばあ様もすごいです。」

 ふふふと言いながらこっそりとナイフを取り出す小百合さんに僕は感嘆よりも先に呆れが出てしまう。

「小百合さん、何かあったらどうするつもりですか。」
「大丈夫ですよ。」
「そうそう。」
「そもそも、最初に盗人を働いたのはあいつなんだしね。」

 女性三人はハイエナの男性が見た先にいた人物を睨みつけている。

「さて、一勝一敗だけど、勝てそう?」
「勝てるようには頑張ります。」
「まあ、貴方なら大丈夫ね。」
「まあ、そうだね。」
「どうにか勝ってちょうだいね。」

 僕にプレッシャーを与える女性たちに僕は頷く事しか出来なかった。
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