僕がサポーターになった理由

弥生 桜香

文字の大きさ
75 / 128
第一章

73

しおりを挟む
 僕は取り敢えず飲み物を頼んでから二人の待つ席に向かった。

「遅くなってごめんね。」
「ううん、タダで入れてくれた人がピンチだったらしょうがないよ。」
「ごめんなさいね、それなのに勝手に出てきて、ちゃんと展示とか見れた?」
「うん、凄かったよね。」

 僕は嘘を吐いた。

 展示なんて全く見ていない。

 七割は僕の作品、研究内容などなどが展示されているし、二割はもうすでに見せてもらったり共同開発したものとかもある。

 残り一割は正直僕の概念と外れてしまう。

 固有の能力の底上げのアイテム開発だから。

 僕は自分が使うのを重視しているのでどうしても万人向けに考えてしまう。

 万人向けにするからそれを敵視する人がいなくはない。

 睨まれ。

 疎まれ。

 それでも、僕は僕の為にやるしかないのだから。

 そして、ふっと思った。

 もしかして、林くんのバイオレット嫌いは固有の能力を生かすアイテムづくりをする人が身近にいたのかもしれない。

 僕は一瞬にして林くんの身内で該当する人物を幾人かピックアップする。

「ええ、凄かったわ、特にシュウ兄さんの作品は一番ね。」
「シュウ兄さん?」

 嫌な予感がした。

「あっ、空野くんは知らないのよね、宮野(みやの)秀太郎(しゅうたろう)さん『技術者』でシュウと名乗っているわ。」

 やっぱりと、僕は頭を抱えたくなる。

 固有の能力重視者代表、その人だった。

 確かに身近に固有能力重視者が居れば僕のアイテムが受け入れられるはずがなかったのだ。

 彼らにしたら僕、バイオレットは泥棒だから。

 彼らにしたら僕は自分たちが必死で見つけた独自のコードを勝手に紐解き、そして、独自に作り替えた犯罪者。

 決死って許されるべき存在じゃないと唱えているくらいだ。

 僕としては色々話したいと思った時期もあったのだが、あんなにもあからさまに無視などをされれば関わりたくないと思うのは自然だと思いたい。

「でも、シュウ兄さんの作品が少なくて残念、何であんな人の作品ばっかりなのかしら。」
「あはは…。」

 僕は乾いた笑いしか出ない。

「一平、そんなこと言ったらあんまりよくないよ。」
「でも。」
「……わたしもシュウさんの作品はすごいと思った、だけど、空野くんはシュウさんのアイテムはどうやっても使えないんだよね。」
「それは…。」

 何とも言えない顔をする林くんに僕はこの話を止めようと思った。
 だけど、それは少し遅かったのかもしれない。

「それに、一昨日、シュウさんに空野くんが使えるようなアイテムがないか聞いたの。」
「メグ?」

 少しくらい顔をする藤井さんに林くんは訝しみ。
 僕は彼がなんて言ったのか理解した。

「藤井さん、僕は自分で開発するから大丈夫だよ。」
「………ごめん…勝手だったよね。」
「ううん、藤井さんの気持ちは嬉しいよ。」
「…もしかして、シュウ兄さん断ったの?」

 信じられないという顔をする林くんに藤井さんは唇を噛む。

「うん。」
「嘘よ、シュウ兄さんはそんな事を言うはずがないわっ!」
「でも…。」
「ちょっと待って、聞いてみるから。」

 林くんの言葉に僕も藤井さんも慌てる。

「一平っ!」
「林くん、駄目だ。」

 だけど、それは遅く、林くんは彼に電話をしてしまった。
 僕はこれから林くんが言われる言葉も、藤井さんが言われた言葉もどちらも彼らの心に傷を残さないように祈る事しか出来なかった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!? 学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。 ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。 智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。 「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」 無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。 住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!

BLゲームの脇役に転生したはずなのに

れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。 しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。 転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。 恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。 脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。 これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。 ⸻ 脇役くん総受け作品。 地雷の方はご注意ください。 随時更新中。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

笑って下さい、シンデレラ

椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。 面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。 ツンデレは振り回されるべき。

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

異世界召喚チート騎士は竜姫に一生の愛を誓う

はやしかわともえ
BL
11月BL大賞用小説です。 主人公がチート。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 励みになります。 ※完結次第一挙公開。

幼馴染み

BL
高校生の真琴は、隣に住む幼馴染の龍之介が好き。かっこよくて品行方正な人気者の龍之介が、かわいいと噂の井野さんから告白されたと聞いて……。 高校生同士の瑞々しくて甘酸っぱい恋模様。

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

処理中です...