僕がサポーターになった理由

弥生 桜香

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第一章

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 あの後実は、良子さんとはあまり話せなかった。
 それは良子さんの携帯が鳴ったからだった。
 良子さんは不満そうにしていたけど、僕は少しほっとしたんだよね。
 あの後一緒に居たらまた無茶なお願いとかを言ってきそうな気がしたから。
 で、帰ってから中途半端で終わっていたアイテムを完成させた。
 そして、ゴールデンウイーク三日目、僕は宿題を進めるために図書館に来たんだけど。

「何で、お前がここにいるんだ。」
「……。」

 何故かムッとした顔のひょうちゃんと遭遇してしまった。

「何でって宿題をしに来たんだけど。」
「……。」

 僕は宿題を詰めた手提げ袋を掲げ、彼に見せる。

「……。」
「何か問題でもある?」
「……。」

 ……おい、誰がストーカーだよ。

 ひょうちゃんがぼつりと呟いた言葉ははっきりと僕の耳に届いていた。
 そりゃ、必要があれば盗聴とか盗撮とかするけど、それは私利私欲ではなく必要に応じ出だし。
 そもそも、君のストーカーができれば苦労しないよ、いまだに君の住んでいる場所だって突き止められていないのに…。

「君も宿題……じゃなさそうだね。」

 手ぶらのひょうちゃんを見て、僕は首を傾げる。

「詮索か?」
「単純な疑問だよ。」
「……。」
「答えたくなければ別にいいよ、僕は僕で宿題があるし。」

 昔の君だったら家に居たくなかったというところだろう。
 幼い頃から彼は自分の家なのに居心地悪そうにしていた。

 昔は分からなかったけれども、もしかしたら、ひょうちゃんは「前」の記憶を持っていたのかもしれない。
 だから、今の家を本当の家だと思えなかったのだろう。

 昔の君ならば分かるのに、今の君はまるで壁が一枚あるように感じる。
 それをぶち壊したいけれども、僕はその壁の壊し方が分からなかった。

 ガラスならば素手で打ち敗れれば早いけれども、多分その氷は彼自身が生み出す氷だ。
 僕が拳で打ち砕いても、すぐに再生するように彼は生み出す。
 ズタボロになっても、僕は諦めない自信はあるけれども、それでは根本の解決にはならない。
 根負けする気は全くないけれども、それは向こうも同じだろう。

 今僕が出来るのは二つ、一つはあの人を探し、その口を割らせることだ。
 もう一つはじわじわとひょうちゃんを追いつめる事だけど、前者は努力でなんとかなるけど、後者はそうもいかない。

 どうしてやろうか…。

「おい。」

 僕はノートの上で無意識に動かせいていたシャーペンを止める。

「どうしたの?」

 僕は考え事をしている間にちょうどいい席を確保して、宿題をしていたようだった。

「そのかばんは四次元空間にでも繋がっているのか?」
「はあ?」

 奇天烈な事を言うひょうちゃんに僕は怪訝な顔をする。

「そんな訳ないだろう、流石の僕も次元を超えるようなアイテムは作れないよ。」
「……。」

 ひょうちゃんは怪訝な顔で僕の鞄を見る。

「だったら、何で辞書が三つも出てくるんだよ。」
「ああ、そういう事ね。」

 僕は机に置かれた辞書が三つ、ノートが五冊、教科書が五冊自分の作業がしやすいように広げてあるのを見て、納得する。
 手提げは小さくもないけれども大きくもない、それなのに、こんなけの量が出てくるとは思ってもみなかったひょうちゃんは奇天烈な考えが浮かんだのだろう。

「この鞄外身では分からないけど、結構収納スペースがあるし、入れ方を考えたらこれくらい簡単だよ。」
「どこがだよ。」
「ひょうちゃんは昔から片付けが苦手だったもんね。」

 昔からおもちゃとか片付けるのは僕の役割だった。
 何せひょうちゃんはおおざっぱなところがあり、片付ける度におもちゃを壊したり、本の端をやぶったりと何度先生を泣かせただろう。

「ひょうちゃん?」
「――っ!」

 不味い、つい気を許してしまったから昔からの愛称が口に出てしまった。

「それに、俺を昔から知っているような口ぶりだな。」

 僕を睨むひょうちゃんにどうするかと、頭を働かせる。

「……君は覚えていないと思うけど、昔会った事あるんだよ、と言ってもうんと小さい頃だけどね。」
「……覚えがない。」
「だろうね、まあ、君にとっては大したことじゃなかったから、記憶に残っていないんだろうね。」
「……。」

 僕は結局正直な言葉を言うしかなかった、下手に誤魔化せば、またどこかでぼろが出た時や、記憶を取り戻した時を考え、少しの本当と皮肉を口にした。
 君が好きで記憶を失ったわけじゃないのは分かっているけど、それでも、僕はショックだったんだからね。
 僕の怒りが少し通じたのかひょうちゃんは居心地悪そうに身じろぎをした。

「さて、お昼までに数学を終わらせたいから悪いけど、黙っていてくれるかな?」

 僕がニッコリと微笑めば、何故かひょうちゃんは青い顔をしてコクリと頷いた。
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