125 / 128
第一章
123
しおりを挟む
「……。」
視線が痛い。
フィールドの端に行きたかったが、だいぶと真ん中に立っている僕。
そして、その周りは殺気立つ人々。
チリチリと首筋が違和感を覚える。
無意識に手が動きそうになるけど、ぐっと堪える。
駄目だ。
まだ、動いてはいけない。
幸いにもこの中にいる人の中で知り合いはいない。
まあ、居たところで変わらないかもしれないけど。
『アーアー、テステス。』
上の方から声が降ってくる。
『さあさあ、始まりました、水無月祭っ!』
『熱い戦いが今始まります。』
『本日は五グループによるバトルロワイアルっ!』
『それぞれ二十人の中で一人だけが翌日の出場権を獲得する事が出来ます。』
『一体誰の元に女神は微笑むのかっ!』
『それぞれ申請による武器は使用可ですが、申請漏れの武器を使用した場合基本は即退場ですが、相手の武器を奪って使用するなど、状況によっては、退場はありません。出場者には事前にこちらの本をお渡ししております。』
『おいおい、そんな分厚い本誰にも見られていないのに掲げるなよ。ただの凶器だぞ、その厚さは。』
『注意書きです、因みに六百ページあります。』
『……誰が呼んでいるんだよ。』
『選手の皆んさんです。』
僕は女生徒の言葉にうんうんと頷く。
あれには色々な反則事項などの注意点が書かれていた。
持ち込む武器にしても基本は登録のされている既製品、もしくは事前に教師に見せて安全だと確認されたものだけ。
他にも持ち込み可能なアイテムは十点まで。
刃物に関しては潰されているもの。
などなど、色々な事が書かれていた。
勿論、今回僕が持ち込んだ武器は全部許可をもらっている。
ただ、その武器やアイテムを見てくれた扇先生は複雑な顔をしていた。
ピクピクと引きつられる頬。
何か言いたげな目。
でも、結局、扇先生は何も言わなかった。
何だったのか分からないけど、僕が出て行くときお腹を押さえていたので、多分僕はまた扇先生の何かに触れてしまったのだろう。
今度よく効く胃腸薬でも渡すべきなのかもしれない。
『時間も押してきましたので、説明は以上です。』
『それでは……皆さん良いですか?』
『『レディーゴーっ!』』
その合図とともに場外にあった筒から白煙が噴出した。
刹那、僕に向かって武器が振り下ろされる。
僕は跳躍してそれをかわす。
次の瞬間には、ナイフが飛んでくるが、それを手持ちの武器で払い落す。
「……。」
集中的に狙われている。
視界は白煙より奪われている。
だけど、それは相手も同条件。
僕は地面に向かってそれを打つ。
ワイヤーを軽く引くが固い反応だった。
下準備は行けた。
僕はそこからフィールドを縦横無尽に走り回る。
可能ならば敵の意識を奪う。
駄目ならば軽く触れて近くにいる人と同士討ちにする。
白煙が消えるごくわずかの間に人数は半分くらいに減ったかな?
『やーっと、晴れましたねー。』
『どうやら噴出する白煙の量を間違ってしまったようで、観客の方にはご迷惑をおかけいたしました。』
『さてさて、どうなっているかー…って、半分くらいの人がうつ伏しているぞ。』
『この数分の間に何があったのでしょう。』
『えっと、今回注目の選手……空野紫織選手は生き残っているようですね。』
『そうですね、彼は――。』
僕のあたりさわりのないプロフィールがさらされる。
内心ため息を吐きながらナイフをくるりと回す。
さて、どうやって対処をするか。
煙が晴れてしまっているので、先ほどまでの奇襲攻撃は避けるべきだ。
かといって半分近く残っているのに正々堂々倒すのは骨が折れる。
攻撃をかいくぐりながら僕は考える。
そして、腕のワイヤーホルダーに違和感を覚える。
どうやら、ワイヤーが切れたようだ。
つまり、仕込みは終了。
僕は次の段階として、ワイヤーにとある液体を垂らす。
それはワイヤーを伝い、他の選手に付着する。
それだけだと、弱いかもしれないので、近くにあるワイヤーにも同じ液体を垂らしていく。
そして、ワイヤーの入っていたブレスレットを捨てる。
しばらくして、液体の効果が表れる。
「何だこれっ!」
「くっついて、離れない。」
僕が垂らしたのは接着剤だ。
まあ、水をかければすぐに落ちるし、液体を垂らして一分くらいで効果がでるものなので、それよりも後はワイヤーに触れても問題はない。
動けない人が続出するかな、僕は駆け抜け手刀や、ナイフの柄で相手の意識を刈り取っていく。
特に手ごたえがないまま僕は最後の一人を倒し終える。
『Aコート、試合終了っ!』
『勝者、空野紫織っ!』
ワ~と観客が沸く。
だけど、僕にしたら少し物足りなかった。
『流石、空野選手ですね。』
『そうですね、空野紫織さんは翌日の試合の出場権を獲得いたしました。
明日はSクラスを交えての一対一の戦闘となります。
本日はゆっくりと体を休まれて、明日に備えてください。』
周りの観客は一人、一人と席を立つ。
そして、救護班がフィールドに入ってくる。
「ちょっと、このワイヤーは離れないんだけど。」
「うわ、綺麗に技が決まってんな。」
「もう、こんがらがってやばい。」
「うげー、酷い打撲痕だ。」
ワイワイとしながら処理を進めるが、僕のワイヤーの所為で手を止めさせてしまっている。
「あっ、すいません、水をかければそのワイヤーは取れます。」
「そうなの?」
「はい。」
「誰かー、水持ってきて。」
「はーい。」
「その間、無事な人だけでも、移動させましょう。」
「あの、手伝います。」
僕がそう声をかけるとほどんどの人が苦笑する。
「いやいや、お前選手だろ?」
「しかも、明日も試合があるんだからゆっくり休んで。」
「そうだそうだ。」
「気にするな。」
「明日勝ってよね。」
「何なら優勝しちゃえ。」
「そりゃいいや。」
和気あいあいとしている人たちに僕は本当にすることがないのだと悟り、苦笑する。
「善処させていただきます。」
「おい、頑張れよ。」
「応援しているわ。」
「頑張ります。
僕はそう言い残すと踵を返す。
応援してくれる人がいる。
少し、頑張ってみようと思えた。
明日はどうなるかな?
視線が痛い。
フィールドの端に行きたかったが、だいぶと真ん中に立っている僕。
そして、その周りは殺気立つ人々。
チリチリと首筋が違和感を覚える。
無意識に手が動きそうになるけど、ぐっと堪える。
駄目だ。
まだ、動いてはいけない。
幸いにもこの中にいる人の中で知り合いはいない。
まあ、居たところで変わらないかもしれないけど。
『アーアー、テステス。』
上の方から声が降ってくる。
『さあさあ、始まりました、水無月祭っ!』
『熱い戦いが今始まります。』
『本日は五グループによるバトルロワイアルっ!』
『それぞれ二十人の中で一人だけが翌日の出場権を獲得する事が出来ます。』
『一体誰の元に女神は微笑むのかっ!』
『それぞれ申請による武器は使用可ですが、申請漏れの武器を使用した場合基本は即退場ですが、相手の武器を奪って使用するなど、状況によっては、退場はありません。出場者には事前にこちらの本をお渡ししております。』
『おいおい、そんな分厚い本誰にも見られていないのに掲げるなよ。ただの凶器だぞ、その厚さは。』
『注意書きです、因みに六百ページあります。』
『……誰が呼んでいるんだよ。』
『選手の皆んさんです。』
僕は女生徒の言葉にうんうんと頷く。
あれには色々な反則事項などの注意点が書かれていた。
持ち込む武器にしても基本は登録のされている既製品、もしくは事前に教師に見せて安全だと確認されたものだけ。
他にも持ち込み可能なアイテムは十点まで。
刃物に関しては潰されているもの。
などなど、色々な事が書かれていた。
勿論、今回僕が持ち込んだ武器は全部許可をもらっている。
ただ、その武器やアイテムを見てくれた扇先生は複雑な顔をしていた。
ピクピクと引きつられる頬。
何か言いたげな目。
でも、結局、扇先生は何も言わなかった。
何だったのか分からないけど、僕が出て行くときお腹を押さえていたので、多分僕はまた扇先生の何かに触れてしまったのだろう。
今度よく効く胃腸薬でも渡すべきなのかもしれない。
『時間も押してきましたので、説明は以上です。』
『それでは……皆さん良いですか?』
『『レディーゴーっ!』』
その合図とともに場外にあった筒から白煙が噴出した。
刹那、僕に向かって武器が振り下ろされる。
僕は跳躍してそれをかわす。
次の瞬間には、ナイフが飛んでくるが、それを手持ちの武器で払い落す。
「……。」
集中的に狙われている。
視界は白煙より奪われている。
だけど、それは相手も同条件。
僕は地面に向かってそれを打つ。
ワイヤーを軽く引くが固い反応だった。
下準備は行けた。
僕はそこからフィールドを縦横無尽に走り回る。
可能ならば敵の意識を奪う。
駄目ならば軽く触れて近くにいる人と同士討ちにする。
白煙が消えるごくわずかの間に人数は半分くらいに減ったかな?
『やーっと、晴れましたねー。』
『どうやら噴出する白煙の量を間違ってしまったようで、観客の方にはご迷惑をおかけいたしました。』
『さてさて、どうなっているかー…って、半分くらいの人がうつ伏しているぞ。』
『この数分の間に何があったのでしょう。』
『えっと、今回注目の選手……空野紫織選手は生き残っているようですね。』
『そうですね、彼は――。』
僕のあたりさわりのないプロフィールがさらされる。
内心ため息を吐きながらナイフをくるりと回す。
さて、どうやって対処をするか。
煙が晴れてしまっているので、先ほどまでの奇襲攻撃は避けるべきだ。
かといって半分近く残っているのに正々堂々倒すのは骨が折れる。
攻撃をかいくぐりながら僕は考える。
そして、腕のワイヤーホルダーに違和感を覚える。
どうやら、ワイヤーが切れたようだ。
つまり、仕込みは終了。
僕は次の段階として、ワイヤーにとある液体を垂らす。
それはワイヤーを伝い、他の選手に付着する。
それだけだと、弱いかもしれないので、近くにあるワイヤーにも同じ液体を垂らしていく。
そして、ワイヤーの入っていたブレスレットを捨てる。
しばらくして、液体の効果が表れる。
「何だこれっ!」
「くっついて、離れない。」
僕が垂らしたのは接着剤だ。
まあ、水をかければすぐに落ちるし、液体を垂らして一分くらいで効果がでるものなので、それよりも後はワイヤーに触れても問題はない。
動けない人が続出するかな、僕は駆け抜け手刀や、ナイフの柄で相手の意識を刈り取っていく。
特に手ごたえがないまま僕は最後の一人を倒し終える。
『Aコート、試合終了っ!』
『勝者、空野紫織っ!』
ワ~と観客が沸く。
だけど、僕にしたら少し物足りなかった。
『流石、空野選手ですね。』
『そうですね、空野紫織さんは翌日の試合の出場権を獲得いたしました。
明日はSクラスを交えての一対一の戦闘となります。
本日はゆっくりと体を休まれて、明日に備えてください。』
周りの観客は一人、一人と席を立つ。
そして、救護班がフィールドに入ってくる。
「ちょっと、このワイヤーは離れないんだけど。」
「うわ、綺麗に技が決まってんな。」
「もう、こんがらがってやばい。」
「うげー、酷い打撲痕だ。」
ワイワイとしながら処理を進めるが、僕のワイヤーの所為で手を止めさせてしまっている。
「あっ、すいません、水をかければそのワイヤーは取れます。」
「そうなの?」
「はい。」
「誰かー、水持ってきて。」
「はーい。」
「その間、無事な人だけでも、移動させましょう。」
「あの、手伝います。」
僕がそう声をかけるとほどんどの人が苦笑する。
「いやいや、お前選手だろ?」
「しかも、明日も試合があるんだからゆっくり休んで。」
「そうだそうだ。」
「気にするな。」
「明日勝ってよね。」
「何なら優勝しちゃえ。」
「そりゃいいや。」
和気あいあいとしている人たちに僕は本当にすることがないのだと悟り、苦笑する。
「善処させていただきます。」
「おい、頑張れよ。」
「応援しているわ。」
「頑張ります。
僕はそう言い残すと踵を返す。
応援してくれる人がいる。
少し、頑張ってみようと思えた。
明日はどうなるかな?
0
あなたにおすすめの小説
アイドルくん、俺の前では生活能力ゼロの甘えん坊でした。~俺の住み込みバイト先は後輩の高校生アイドルくんでした。
天音ねる(旧:えんとっぷ)
BL
家計を助けるため、住み込み家政婦バイトを始めた高校生・桜井智也。豪邸の家主は、寝癖頭によれよれTシャツの青年…と思いきや、その正体は学校の後輩でキラキラ王子様アイドル・橘圭吾だった!?
学校では完璧、家では生活能力ゼロ。そんな圭吾のギャップに振り回されながらも、世話を焼く日々にやりがいを感じる智也。
ステージの上では完璧な王子様なのに、家ではカップ麺すら作れない究極のポンコツ男子。
智也の作る温かい手料理に胃袋を掴まれた圭吾は、次第に心を許し、子犬のように懐いてくる。
「先輩、お腹すいた」「どこにも行かないで」
無防備な素顔と時折見せる寂しげな表情に、智也の心は絆されていく。
住む世界が違うはずの二人。秘密の契約から始まる、甘くて美味しい青春ラブストーリー!
BLゲームの脇役に転生したはずなのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。
しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。
転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。
恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。
脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。
これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。
⸻
脇役くん総受け作品。
地雷の方はご注意ください。
随時更新中。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが
松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。
ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。
あの日までは。
気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。
(無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!)
その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。
元日本人女性の異世界生活は如何に?
※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。
5月23日から毎日、昼12時更新します。
【完結】ハーレムラブコメの主人公が最後に選んだのは友人キャラのオレだった。
或波夏
BL
ハーレムラブコメが大好きな男子高校生、有真 瑛。
自分は、主人公の背中を押す友人キャラになって、特等席で恋模様を見たい!
そんな瑛には、様々なラブコメテンプレ展開に巻き込まれている酒神 昴という友人がいる。
瑛は昴に《友人》として、自分を取り巻く恋愛事情について相談を持ちかけられる。
圧倒的主人公感を持つ昴からの提案に、『友人キャラになれるチャンス』を見出した瑛は、二つ返事で承諾するが、昴には別の思惑があって……
̶ラ̶ブ̶コ̶メ̶の̶主̶人̶公̶×̶友̶人̶キ̶ャ̶ラ̶
【一途な不器用オタク×ラブコメ大好き陽キャ】が織り成す勘違いすれ違いラブ
番外編、牛歩更新です🙇♀️
※物語の特性上、女性キャラクターが数人出てきますが、主CPに挟まることはありません。
少しですが百合要素があります。
☆第1回 青春BLカップ30位、応援ありがとうございました!
第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる