僕がサポーターになった理由

弥生 桜香

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第一章

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「……。」

 視線が痛い。
 フィールドの端に行きたかったが、だいぶと真ん中に立っている僕。
 そして、その周りは殺気立つ人々。
 チリチリと首筋が違和感を覚える。
 無意識に手が動きそうになるけど、ぐっと堪える。
 駄目だ。
 まだ、動いてはいけない。
 幸いにもこの中にいる人の中で知り合いはいない。
 まあ、居たところで変わらないかもしれないけど。

『アーアー、テステス。』

 上の方から声が降ってくる。

『さあさあ、始まりました、水無月祭っ!』
『熱い戦いが今始まります。』
『本日は五グループによるバトルロワイアルっ!』
『それぞれ二十人の中で一人だけが翌日の出場権を獲得する事が出来ます。』
『一体誰の元に女神は微笑むのかっ!』
『それぞれ申請による武器は使用可ですが、申請漏れの武器を使用した場合基本は即退場ですが、相手の武器を奪って使用するなど、状況によっては、退場はありません。出場者には事前にこちらの本をお渡ししております。』
『おいおい、そんな分厚い本誰にも見られていないのに掲げるなよ。ただの凶器だぞ、その厚さは。』
『注意書きです、因みに六百ページあります。』
『……誰が呼んでいるんだよ。』
『選手の皆んさんです。』

 僕は女生徒の言葉にうんうんと頷く。
 あれには色々な反則事項などの注意点が書かれていた。
 持ち込む武器にしても基本は登録のされている既製品、もしくは事前に教師に見せて安全だと確認されたものだけ。
 他にも持ち込み可能なアイテムは十点まで。
 刃物に関しては潰されているもの。
 などなど、色々な事が書かれていた。
 勿論、今回僕が持ち込んだ武器は全部許可をもらっている。
 ただ、その武器やアイテムを見てくれた扇先生は複雑な顔をしていた。
 ピクピクと引きつられる頬。
 何か言いたげな目。
 でも、結局、扇先生は何も言わなかった。
 何だったのか分からないけど、僕が出て行くときお腹を押さえていたので、多分僕はまた扇先生の何かに触れてしまったのだろう。
 今度よく効く胃腸薬でも渡すべきなのかもしれない。

『時間も押してきましたので、説明は以上です。』
『それでは……皆さん良いですか?』
『『レディーゴーっ!』』

 その合図とともに場外にあった筒から白煙が噴出した。
 刹那、僕に向かって武器が振り下ろされる。
 僕は跳躍してそれをかわす。
 次の瞬間には、ナイフが飛んでくるが、それを手持ちの武器で払い落す。

「……。」

 集中的に狙われている。
 視界は白煙より奪われている。
 だけど、それは相手も同条件。
 僕は地面に向かってそれを打つ。
 ワイヤーを軽く引くが固い反応だった。
 下準備は行けた。
 僕はそこからフィールドを縦横無尽に走り回る。
 可能ならば敵の意識を奪う。
 駄目ならば軽く触れて近くにいる人と同士討ちにする。
 白煙が消えるごくわずかの間に人数は半分くらいに減ったかな?

『やーっと、晴れましたねー。』
『どうやら噴出する白煙の量を間違ってしまったようで、観客の方にはご迷惑をおかけいたしました。』
『さてさて、どうなっているかー…って、半分くらいの人がうつ伏しているぞ。』
『この数分の間に何があったのでしょう。』
『えっと、今回注目の選手……空野紫織選手は生き残っているようですね。』
『そうですね、彼は――。』

 僕のあたりさわりのないプロフィールがさらされる。
 内心ため息を吐きながらナイフをくるりと回す。
 さて、どうやって対処をするか。
 煙が晴れてしまっているので、先ほどまでの奇襲攻撃は避けるべきだ。
 かといって半分近く残っているのに正々堂々倒すのは骨が折れる。
 攻撃をかいくぐりながら僕は考える。
 そして、腕のワイヤーホルダーに違和感を覚える。
 どうやら、ワイヤーが切れたようだ。
 つまり、仕込みは終了。
 僕は次の段階として、ワイヤーにとある液体を垂らす。
 それはワイヤーを伝い、他の選手に付着する。
 それだけだと、弱いかもしれないので、近くにあるワイヤーにも同じ液体を垂らしていく。
 そして、ワイヤーの入っていたブレスレットを捨てる。
 しばらくして、液体の効果が表れる。

「何だこれっ!」
「くっついて、離れない。」

 僕が垂らしたのは接着剤だ。
 まあ、水をかければすぐに落ちるし、液体を垂らして一分くらいで効果がでるものなので、それよりも後はワイヤーに触れても問題はない。
 動けない人が続出するかな、僕は駆け抜け手刀や、ナイフの柄で相手の意識を刈り取っていく。
 特に手ごたえがないまま僕は最後の一人を倒し終える。

『Aコート、試合終了っ!』
『勝者、空野紫織っ!』

 ワ~と観客が沸く。
 だけど、僕にしたら少し物足りなかった。

『流石、空野選手ですね。』
『そうですね、空野紫織さんは翌日の試合の出場権を獲得いたしました。
 明日はSクラスを交えての一対一の戦闘となります。
 本日はゆっくりと体を休まれて、明日に備えてください。』

 周りの観客は一人、一人と席を立つ。
 そして、救護班がフィールドに入ってくる。

「ちょっと、このワイヤーは離れないんだけど。」
「うわ、綺麗に技が決まってんな。」
「もう、こんがらがってやばい。」
「うげー、酷い打撲痕だ。」

 ワイワイとしながら処理を進めるが、僕のワイヤーの所為で手を止めさせてしまっている。

「あっ、すいません、水をかければそのワイヤーは取れます。」
「そうなの?」
「はい。」
「誰かー、水持ってきて。」
「はーい。」
「その間、無事な人だけでも、移動させましょう。」
「あの、手伝います。」

 僕がそう声をかけるとほどんどの人が苦笑する。

「いやいや、お前選手だろ?」
「しかも、明日も試合があるんだからゆっくり休んで。」
「そうだそうだ。」
「気にするな。」
「明日勝ってよね。」
「何なら優勝しちゃえ。」
「そりゃいいや。」

 和気あいあいとしている人たちに僕は本当にすることがないのだと悟り、苦笑する。

「善処させていただきます。」
「おい、頑張れよ。」
「応援しているわ。」
「頑張ります。

 僕はそう言い残すと踵を返す。
 応援してくれる人がいる。
 少し、頑張ってみようと思えた。
 明日はどうなるかな?
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