【完結】ただただ、ボクらは日常に居るだけ

櫛田こころ

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第14話 ズッ友との共有感覚

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「へぇ? 那湖ちゃんにはこんな感覚で見えたんだ?」


 あたしのデザインを見てから、綺洞さんは今染め上げたらしい布を見せてくれた。

 シルクスクリーンって染め方の技法を意識して、印刷したかのようなTシャツは。

 型を剥がしたあとは、淡く輝くホタルの光が下から見えてきた。天の川風に見せて、とっても素敵ぃ!

 そこ以外は型どおりのデザインだけど、幻想的だ!


「ボクが曲を何度か聴いた時はね。じいちゃんらに聞いた『蛍の川』が浮かんだんだー」
「蛍の川?」
「まだ整備中だけど、土砂崩れの工事してるとこであったらしいよ? 町中の、っちょっと大きいとこ」
「こんな感じ、なの?」
「あくまで、ボクのイメージ。今の蛍は賑やか嫌いだから、山行ってるらしいけどぉ」
「なーるー」


 たしかに、ちょっと都会風だと人が変に多くて賑やかすぎるもんねぇ? 虫系は混じりは同種が多くて、よくても妖怪系や神様系とからしい。あたしみたいに、人間が多めにまじったタイプはあんまり聞いたことがないやぁ。


「でも、ボクたちのデザイン。ちょっと似てるねぇ? 『淡い』『幻想』『虹』『光』。別もんだけど、取り入れている題材がそっくり」
「だねぇ!」


 さすが、あたしのデザインを拾ってくれた恩人! そして、このまま……お互いのを使うかどうかを話し合わなくては。綺洞さんのTシャツは作っちゃったし、破棄は勿体無いからここはひとつ!!

 ソウちゃんに、出るかどうかのメッセを入れてみるのだ! 彼女から、いつでもいいよとの許可はもらっているからダメ元で!! あたしと同じアパートだから、すぐ来れるけれど寝ているかもしんない。

 でもでも、あたしたちが受けたインスピの結晶も出来たら見て欲しい!! 祈りを込めるように打てば、起きてるときのスタンプが返ってきた。

 なので、こっちに来てもらえるか打てば大丈夫だって!! これには、とちょっとだけぐちゃぐちゃの作業場はふたりで片付けることにした。あたし、自炊以外は破壊行為は出ないから大丈夫だもん!!


「ナッチぃ? どんなドンナー?」


 あたしがあだ名で呼ぶから、ソウちゃんもあだ名にしてくれた。それはともかくとして、まずはあたしのデザイン画からとスマホを渡しましたぁ!!


「……インスピ、もらったのぉ」
「エェエ!? これ、どの曲!!?」
「ボクのと同じ一曲目らしいよ~」


 綺洞さんの、乾いたTシャツを見せてあげれば。ソウちゃんは、目をキラッキラと輝かせてから……小さい声であの曲を歌った。あたしたちがインスピをもらって、仕事受けでは悪いって言われる男の子の声で。


 ♫
 あざれ~、さえ わずかなとき
 さらさらながるは わがいみな



「「おおおおお!!」」


 祭り風にも聞こえて、実は鈴の音色ってイメージ。

 ふわっと、Tシャツに光の輪がかかったようで幻想的なステージになった気がしたぁ!!


「素敵、デス! ふたりともアリガト!!」


 そしてこのTシャツ。せっかくだからと、色違いであたしたちのルームウェア用にと綺洞さんが染め直してくれたのだ!!


「著作権もらってないけど。料金気にするなら、下のフロアでふたつくらい商品買ってってー?」


 ということで! ちょっと時間のあったソウちゃんとの着せ替えショッピングが始まった!! デザインだけど、あたしの方をジャケットに使えないかと……ソウちゃんがプロデューサーさんに送信してからになりましたぁ。

 そっちは検討で一ヶ月かかるから、と代わりにお願いされたのは。


「仕事用のグッズ。試作品依頼、したいデス!!」


 と、翌日に頼まれたのは……あたしと綺洞さんは土下座して断りました!! ちょこっと調べたけど、ふんわりボイスの方のソウちゃんはとてもとても人気アーティスト。考えてもみ? 個人的にいけてないと思ってる『男性ボイス』が人気出て……グッズの嵐になったら、日常がのんびりと出来ないに決まってる!!

 もち、のんびりベースの仕事したい人間だと話したら……逆に土下座されたの何故だろ??
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