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第1話 おねえちゃんだから
しおりを挟む「おかあさん、大っ嫌い!!」
言っちゃった。
言いたく……なかったのに。
あたしは、おかあさんに言ってから……返事を聞きたくなくて、お店から出て行った。
水乃町のパン屋、『ルーブル』。そこがあたし、水城桜乃のお家。
おじいちゃんが最初だってしか、あたしはよくわかんないけど。おとうさんがてんちょーさんになっても、お客さんはたくさん来るんだ。
あたしは、学校から帰って……お店を手伝うのをがんばるのが今年からのもくひょー。
しょーらい、パン屋さんになるのが……あたしの夢なんだ。
なんだけど。
「……あたしのバカ」
夢とかもくひょーがあったんだけど。
学校に入学して、二年目になった今年で……変わったことが出来た。
あたしに、弟が出来たの。
小さな小さな赤ちゃん。
可愛くて……ちっちゃくて、あたしの大事な弟なのに。
おかあさんが……ずっとずっと一緒なのが、あたしにとって寂しかった。
弟……宙太は、赤ちゃんだからおかあさんがいなくちゃいけないのは、わかっているのに。
いつもは、学校の宿題やお店のお手伝いをしたら……ほめてくれるおかあさんが、宙太のことばっかり。
夜、一緒に寝てたのに……宙太が『よなき』って言うのをするから、おかあさんもだけどおとうさんも大変。
あたしも……うまく寝れない。でも、赤ちゃんには大事なんだって。
おねえちゃんだから、わかって。
この言葉も何回聞いたのかな?
それが……だんだん嫌になってきて。
多分……おかあさんが大変なことで、一緒に居られないのが嫌で。
宙太がちょっとだけ大きくなった頃には……もう『嫌』がダメだった。
あたしは……おかあさんにいつも言われる『おねえちゃんだから』に、ぷっつんってしちゃって。
言いたくないことを言っちゃって……お店から出て行ってしまった。
すぐに……反省したけど。
「……どうしよう」
走っていたら、おじいちゃん家の方まで来ていた。
おばあちゃんはいないから……お家の中かな?
あたしのお家は、お店以外に二つのお家があるの。おじいちゃん家とあたしのお家。にせたい? って言うんだっけ? そう言うお家。
だから、おじいちゃんのお家にはすぐに来れるんだけど……気づいたら、『蔵』の前まで走ってたみたい。
後ろを見ても、おかあさんはいなかった。
「……来ない、よね」
宙太がいるから走れないもん。
だから……また悲しくなってきたけど、あやまるにもどうしたらいいかわかんなくなって。
とりあえず……一人になりたくて。
あたしは、おじいちゃんのお家にも行く気になれず……蔵の中に入ることにしたのだ。
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