【完結】パンでパンでポン!!〜付喪神と作る美味しいパンたち〜

櫛田こころ

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第84話 ミキサー登場

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 生地は、手でこねるんじゃなくて……パワーアップした、ままごとキッチンの中に、すごいのが出来たので作るって言われたんだけど。


美濃みのさん、これなあに?」

攪拌機ミキサーじゃよ』

「……これ、ミキサー?」


 ハンドミキサーとか、おかあさんやおばあちゃんが使うミキサーとは全然違うの。おじいちゃんくらい大きくて、ピンクで可愛いけどかっこよくも見える不思議な機械。

 おっきなボウル、おっきなカギみたいなの。それを支えるおっきな機械……あたしの知ってるミキサーじゃないわ。


桜乃さくの。父さんもそれに似たの使ってるぞ?」

「え?」


 どこで? と思い出してみるんだけど……ルーブルのちゅーぼーにはあんまり入ったことがないのよね。大きくはなったけど、オーブンとかのあぶない道具や重い鉄板があるからって。

 だから、全然思い出せなくてうんうん言っていると、美濃さんがくすくす笑った。


『覚えがないのなら仕方がない。これで生地をこねて作るのじゃ。手で作るより早いし、多く作れる』

「……このカギみたいなので出来るの?」

『うむ。まずは計量した材料を入れるのじゃ』


 やり方を教えてもらって、ボタンを押したら……ゴウンゴウンってカギのとこがくるくる回って、材料を混ぜていくの。すっごい!!


「すご~い」

『まとまってきたら、少しずつつまみで早くしていくのじゃ』


 お手本に、美濃さんが目盛りを動かしていくと……どんどん生地になっていくの。すごいすごい!! 思わず、ぱちぱちしたら……美濃さんは、指をくるんと動かして細長い棒がついてる何かを出したの。


「それなあに?」

『温度計じゃ。人力とは違い、機械でこねた生地は温度管理と言うものが必要での? 先を生地に当てれば……ほれ』


 生地にさしたら、上にある目盛りが動いて……体温計のように数字が出たわ。今は……二十五度くらい? こまかい数字も出てたので、よくわかんない。


「……高いの?」

『ちょうど良いな? あとはこれを普通のボウルに移し……いつものように、発酵などをしていくだけじゃ』

「! はやーい!」

『店を継ぐのであれば、大量に作るであろう? これしきのことで驚いててはならん』

「うん!」


 将来はルーブルをついで、美濃さんと一緒にいることだもん。知らないことは多いけど、がんばらなくちゃ!

 食パンのせーけーははじめてだから大変だったけど……おとうさんたちが起きる前に、おじいちゃんも一緒にがんばって『モーニング』のセットを作ったわ。

 スープとパンだけをここで作ってくれる……あとは、おうちで作るの。

 美濃さんは、残ったパンとスープをここで食べるから行っておいでって言ってくれたけど……。


(……ちょっと、さみしいな)


 美濃さんもおじいちゃんやあたしだけじゃなくて、おとうさんたちとも一緒に食べてほしいときがあるんだ。

 でも、美濃さんは……それが嫌かもしれない。

 なんでだろう??
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