満腹マッドサイエンティストはガリガリホムンクルスを満足させたい!〜錬金術の食事を美味いと言わせたいだけのスローライフ〜

櫛田こころ

文字の大きさ
37 / 94

14-3.副ギルマスの心境(ライネス視点)

しおりを挟む





 ★・☆・★(ライネス視点)







 ああ……ああ。

 あの、秀麗の権化とも謳われていた『クローム=アルケイディス』が。

 何故……何故、またこんなオークにも似た豚のようにまで激変してしまったのか!? しかし、この姿でもマールドゥ曰く、だいぶマシになったと言うことは、約一年前はどれだけ変わり果てていたのか……想像したくないが、今はそれを考えているべきではない。

恵の豊穣フィーク・シャイン】もこの目で確認しましたし、クローム=アルケイディスには真実の一端をお教えしなくては。

 気持ちを仕事に切り替えて、麗しきホムンクルスであるセリカ嬢の手で、また美味しい紅茶を淹れていただいてから、ギルマスから預かってきたクリスタルボールを卓の中央に置いた。


「これは記録した映像でしかないので、何を話しかけても無意味です」

「ん」

「了承した」


 そして、ギルマスより教わった解除言葉パスワードを口にするとクリスタルが一瞬赤く染まった。

 そして、煙が上がって、中央に二人の男女の映像が。

 片方が、顔に似合わない大きな眼鏡をかけているビーツ。

 もう一人は。


「……誰だ、この女は?」


 噂に違わず、本当に興味のない人間の名前を覚えようとはしないんですね、クローム=アルケイディス。

 マールドゥが呆れたため息を吐いているので、代わりに私が話すことにした。


「ギルマスから聞いているかもしれませんが、ビーツが懸想している相手のミリアム=カリウスですよ」

「知らんな?」

「こんな綺麗な子でも、覚えていないのがあんたらしいわ!」

「秀麗であれば、俺様が創ったセリカの方が上だぞ?」

「!?」

「ヒュゥ!」

「……ほう?」


 どうやら、性格は昔よりいくらか緩和されているようですね?

 以前でしたら、『俺様以外に美しい者などない!』と傲慢たれた言葉を発してはギルド内外に敵を作ってはいたものの。

 どうやら、違法とは言え、例のエーテル生成液で創り出したエーテル培養液で素晴らしいホムンクルスを生み出したのですね。そして、見た目以上に絆されている様子。……これは恋に違いありません!


(ホムンクルスと製作者との恋は別に禁忌ではありませんからね!? はー……はー……ときめきの出会いがここに!?)


 私ライネスは、可愛いもの美しいものに目がありませんが。同時に他者の恋についても応援したい自他共に認める変わり者です。

 自分については、今のところ縁がありませんがそれはそれ。

 とりあえず、映像の続きをクローム=アルケイディス達に見てもらうことにしました。


『ふふ。よくやってくださいました、ビーツ』

『は、はい。こ、これでミリアムさんのお手伝いは出来ましたか?』

『ええ、間違いなく。クローム様には、とびっきり上等なエーテル生成液をお届けしましょうね?』

『はい!』


 その時のミリアムの表情は。

 明らかに、クローム=アルケイディスを亡き者にしようとしているような蠱惑的な微笑みを浮かべていたのだった。


「む、この女が操っている奴?」

「ええ、セリカ嬢。ギルマスがおっしゃるには血に誓って……と」

「……失礼だが、俺様はこの女に何かしたのか?」

「自覚全くないね!? けど、私もミリアムがクロームの取り巻きの一人だったとしか知らないなー? こーんなこっわい奴だったなんて知らなーい」

「そちらは、ギルマスが取り急ぎ血の内部調査で調べています。が、この二人だけでは違法のエーテル生成液を用意するのは普通に考えて不可能ですね」

「……だろうな」

「なので、今日伺った内容は。これを見てあなたに恨みのある錬金術師などを合致させるために、マールドゥとお邪魔させていただいた次第です」

「……自分で言うのもなんだが、キリがないぞ?」

「自己中だった、クロームが悪いんだからね!」

「すまん……」

「あら、珍しい?」

「む……」


 おやおや、こんなにも素直に謝罪が出来る人間だとは思っていませんでしたが。

 やはり、セリカ嬢と過ごしてきたこの半年くらいで劇的な変化……つまり、『恋』が関係しているのでしょう。非常に喜ばしいことですが、今は黒幕をピックアップしなくてはいけません。


「こちらのリストアップですが……」


 だいたいの錬金術師はクローム=アルケイディスを敵視しているので、ギルマスとも話し合って名簿を作ってきた。それをクローム=アルケイディスに手渡すと、彼は真剣な面持ちで紙を凝視する。その表情は、丸っこい顔立ちではあるものの、素が良いので過去の彼とすぐに重なった。


(ああ、ああ……。おいたわしや……)


 セリカ嬢のおかげで、例の錬成料理で蓄積した体にとっての悪いものはだいぶ軽減されたとは言え。

 これが、あの眉目秀麗と謳われて、美女を周りに侍らせていた麗しき青年だとは誰も思いはしないだろう。

 私も今日、約一年ぶりに会ったときには、開いた口が塞がりませんでしたしね!


「……ふむ。ディスケット=ライツ。こいつが怪しいな……」

「「「その根拠は??」」」

「露骨に俺様の能力を妬んでいた。と言うのも、昔たまたまだがトイレから出たそばで俺様の悪口を散々なくらいに言ってたからだが」

「あー、あいつなら言いそう」

「どんな人ですか?」

「「まさに、根暗の塊」」

「であれば、彼の能力なら、クローム=アルケイディスを亡き者にしようとしてもおかしくはありませんね?」


 ギルマスの方でも、そろそろターゲットが絞れたでしょうし、今のクローム=アルケイディスの発言と照合すればディスケット=ライツに行き当たるかもしれません。

 さて、ここまでは副ギルマスとしての仕事を終えたも同然ですが。……マールドゥに目配せをすれば、待ってましたと言わんばかりに顔を輝かせた。


「ね、ね、クローム! ここまでの情報提供といつもの労いも兼ねて……私と副ギルマスにセリカちゃんお手製のパフェを食べさせてもらえなーい?」

「む??」

「今から……ですか?」

「え、難しい?」

「いえ、一昨日作ったパフェの残りの材料があるので。……マスター、許可をもらえれば作れるけれど」

「……俺様には?」

「……ほんの少しだけなら」

「なら、作って……いや、少し手伝おう」

「え、クロームが!?」


 たしかに、昔チェスト=ポティロンと酒場で調理補助はやっていたらしいですが。彼の性格からして、進んで手伝うと言い出すような人間ではないはず。これはもしや!


(両、片想い!?)


 なんと言う、見守りたい人間にとってはご馳走様な光景なのでしょう!?

 とりあえず、セリカ嬢が頷いたので二人でキッチンに行かれるのを、未だ呆然中のマールドゥと見送るしか出来ませんでした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!

DAI
ファンタジー
【第一部完結!】 99回のさよならを越えた、究極の『ただいま』 99回転生した最強エルフは、のんびり暮らしたいだけなのに――なぜか家族が増えていく。 99回も転生したエルフの魔法使いフィーネは、 もう世界を救うことにも、英雄になることにも飽きていた。 今世の望みはただひとつ。 ――森の奥の丸太小屋で、静かにのんびり暮らすこと。 しかしその願いは、 **前世が日本人の少女・リリィ(12歳)**を拾ったことで、あっさり崩れ去る。 女神の力を秘めた転生少女、 水竜の神・ハク、 精霊神アイリス、 訳ありの戦士たち、 さらには―― 猫だと思って連れ帰ったら王女だった少女まで加わり、 丸太小屋はいつの間にか“大所帯”に!? 一方その裏で、 魔神教は「女神の魂」と「特別な血」を狙い、 世界を揺るがす陰謀を進めていた。 のんびり暮らしたいだけなのに、 なぜか神々と魔王と魔神教に囲まれていくエルフ。 「……面倒くさい」 そう呟きながらも、 大切な家族を守るためなら―― 99回分の経験と最強の魔法で、容赦はしない。 これは、 最強だけど戦いたくないエルフと、 転生1回目の少女、 そして増え続ける“家族”が紡ぐ、 癒しと激闘の異世界スローライフファンタジー。

『推しの「貧乏騎士」を養うつもりでしたが、正体は「王弟殿下」だったようです。

とびぃ
ファンタジー
応援ありがとうございます。 本作は多くの方にお届けする準備のため、2月6日(金)で、一旦、非公開といたします。 今後の展開については、是非、各電子書籍ストアなどでチェックいただければ幸いです。 短い間でしたが、たくさんのハートとお気に入りを ありがとうございました。 〜「管理人のふり」をして別荘に連れ込まれましたが、過保護な溺愛が止まりません〜 【作品紹介】社畜根性が染み付いた悪役令嬢、推しの『モブ騎士』を養うつもりが、国の裏支配者に溺愛されていました!? ◆あらすじ 「貴方を、私が養います!」  前世はブラック企業の社畜、現世は借金のカタに「豚侯爵」へ売られそうになっていた伯爵令嬢エリーゼ。  絶望的な状況の中、彼女が起死回生の一手として選んだのは、夜会で誰の目にも留まらずに立っていた「推し」の『背景(モブ)騎士』への求婚だった!  実家を捨て、身分を捨て、愛する推しを支える慎ましいスローライフを夢見て駆け落ちしたエリーゼ。  しかし、彼女は知らなかった。  自分が拾ったその騎士の正体が、実は冷酷無比な『影の宰相』にして、国一番の権力者である王弟殿下レオンハルトその人であることを――! ◆見どころポイント ① 勘違いが止まらない!「福利厚生」という名の規格外な溺愛  逃避行の馬車は王族仕様の超高級車、新居は湖畔の豪華別荘、家事は精鋭部隊(暗殺者)が神速で完遂!  あまりの厚遇に「近衛騎士団の福利厚生ってすごいのね!」と斜め上の解釈で感動する元社畜のエリーゼと、そんな彼女を「俺の全権力を使って守り抜く」と誓うレオンハルト様の、噛み合っているようで全く噛み合っていない甘々な新婚(?)生活は必見です。 ② 伝説の魔獣も「わんこ」扱い!?  庭で拾った泥だらけの毛玉を「お洗濯(浄化魔法)」したら、出てきたのは伝説の終焉魔獣フェンリル!  「ポチ」と名付けられ、エリーゼの膝の上を巡ってレオンハルト様と大人気ないマウント合戦を繰り広げる最強のペット(?)との癒やしの日々も見逃せません。 ③ 迫りくる追手は、玄関先で「お掃除(物理)」  エリーゼを連れ戻そうと迫る実家の魔手や悪徳侯爵の刺客たち。  しかし、彼らがエリーゼの目に触れることはありません。なぜなら、最強の執事と「お掃除スタッフ」たちが、文字通り塵一つ残さず「処理」してしまうから!  本人が鼻歌交じりにお菓子を焼いている裏で、敵が完膚なきまでに叩き潰される爽快な「ざまぁ」展開をお楽しみください。 ◆こんな方におすすめ! すれ違い勘違いラブコメが好き! ハイスペックなヒーローによる重すぎる溺愛を浴びたい! 無自覚な主人公が、周りを巻き込んで幸せになる話が読みたい! 悪役たちがコテンパンにされるスカッとする展開が好き!

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...