満腹マッドサイエンティストはガリガリホムンクルスを満足させたい!〜錬金術の食事を美味いと言わせたいだけのスローライフ〜

櫛田こころ

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15-1.振り返る

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 ★・☆・★





 ビーツに加えて、ミリアナと言う女職員。

 そして、俺様を妬んでいるはずのディスケット=ライツ。この三人により、俺様は命を狙われていた。

 ビーツには仕掛けを施したコーヒーにより、俺様の研究『錬成料理』を話したのだから、何らかの接触でディスケットが知っていても不思議ではない。

 が、問題はどうやって長期的に、協力者にさせた二人を洗脳したのやら。

 以前の俺様だったら、はかりごとなど馬鹿げたことだ……そんな暇があるのなら、錬金術の研究に明け暮れている方がずっといい。と、傍若無人のように振る舞っていただろうが、今は少し違う。

 天才であるが故に、他者を妬むのは人間として普通だ。

 それの度合いも、またヒトそれぞれであるが……ディスケットだけでなく、他の錬金術師やそうでない者も違ってくる。

 であれば、ディスケット以外にも協力している者がいてもおかしくはない。この俺様を妬む輩はごろごろいたしな。むしろ、ディスケットの心の隙につけ込んだ輩がいたっておかしくはない。


「……マスター、考え事?」

「む?」


 気づくと、セリカと畳んでいた洗濯物は空になっていたのだった。


「……悩み事?」

「……ああ。ギルマス達が探っててくれてる連中についてだ」

「……そう。もし、そのヒト達を亡き者にするのなら、遠慮無く命令して構わない」

「冗談でもそんなことを言うな! お前を犯罪者にさせるつもりで造ったんじゃない!」

「……そう?」


 冗談じゃない。

 ホムンクルスを造る理由の大半は、従僕させるために助手以上に奴隷として扱う馬鹿な連中が多いが、俺様はそうじゃない。

 錬金術師の助手として、かつ錬成料理を美味いと共感してほしい同士が欲しかっただけだ。

 今は慕う相手になったとはいえ、こんな可憐な少女にそんな犯罪者と同等の罪など犯して欲しくはない。

 軽く小突くと、痛みはないだろうがセリカが少し落ち込んだように見えた。


「……俺様はそんな馬鹿げたことのために、お前を造ったわけじゃない」

「けど、私の創造主はマスターだから」

「仮に俺様の細胞の一部が加わっても、お前はお前だ。娘とはまた違うが、お前のことを大事にしてないわけがないだろう?」

「!……そ、そう」


 あ、いかん。

 いきなり告白紛いな発言をしてしまったぞ?

 さすがに気づいているのでは……と、セリカを見ても嬉しかったのかはにかんだ笑顔になっていた。



 キュンキュン!



 って、絶対俺様の心臓を撃ち抜いたぞ、この笑顔は!


(あー……、元の姿であれば口説くことも出来るのに!?)


 あと30キロ近く痩せなければ、俺様の見た目もこの醜い体型から元に戻らない。それだけはケジメにせねば、格好がつかない。

 尽くしてくれているセリカにも申し訳ないと思うし、何より俺様が嫌だった。


「つ、次は……どうする? 無心になって運動した方がいいだろう?」

「……ん。じゃあ、床磨き」

「わかった」


 水拭きから乾拭き。

 その両方を端から端まで床の上を低姿勢で走り抜け。

 最初の頃は、すぐに音を上げていたが。ここ最近では少し走るくらいの速度で足を鍛えられてはいる。

 99キロになったとは言え、まだまだ肥えた身体ではあるが多少なりとも鍛えられてはいるのだ。

 冒険者のように鍛えるのとはまた別だが、何も出来ないよりはずっといい。

 街にいた頃の、怠惰にふけった考え方を一新出来るくらい、セリカは俺様に尽くしてくれた。

 それに応える答えは、元の俺様の体に戻ることだ。

 であれば、真剣に取り組もうではないか。


「ぜー……はー、ぜーはー……お、終わった……」

「お疲れ様。お風呂の準備したから」

「すまないな……」


 ほら、今も。

 済まし顔ではあるが、甲斐甲斐しく世話をしてくれていることに変わりはない。

 時折、俺に触れてくる手つきが優しいのに、もしや……と思うところはあるが、創造主が俺様だからひなの刷り込みみたいなものかもしれないと疑ってしまう。

 あと、出会いがある意味セリカにとってはいい思い出ではなさそうだから……ただの憐みかもしれない。

 と、風呂に浸かりながら考えてしまうが、自分で考えてきて悲しくなってきた。


「……好かれて、なくないとは思うが。呆れられてそうだ」


 何せ、出会った当初の俺様は豚オークも真っ青になるくらいの醜い体型であったからな。

 はじめはもっとつんけんどんしていたし、俺様に対してむしろ厳し過ぎた。

 けど、そのおかげでこうして痩せてきたのだから感謝以外何も浮かばない。

 錬成料理も、錬成食材をつくる以外はまずいと立証出来たのだから、もうそこは無理に遂行する必要はない!


「……ふむ。まだ夕飯まで時間があるな。昼寝する気分にもなれないし、ポーションでも作っておくか」


 一昨日チェスト達が来て、一応納品はしたが作り過ぎて困ることはない。

 うちの貴重な財源であるし、材料はマールからの食料調達と同時に仕入れているので有り余るくらいストックは豊富だ。

 それに、セリカの方が効能がいいのが少し悔しくもあるので。初心に返ったつもりで、いつも以上に丁寧に作ってみよう。

 やる気が出てきたら、セリカに呼ばれるまで俺様は調合室に篭るのだった。
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