満腹マッドサイエンティストはガリガリホムンクルスを満足させたい!〜錬金術の食事を美味いと言わせたいだけのスローライフ〜

櫛田こころ

文字の大きさ
70 / 94

26-5.盛大に祝おう

しおりを挟む





 ★・☆・★







 セリカがこっそり様子見をしに行ったらしく、マールとガイウスは無事にくっついたとわかり。

 今日くらいは祝いの席を設けようかと考えたりもしたが、セリカは普通の料理しか用意してないと言ったので。

 久しぶりに、あれ・・をやってみるかと召喚陣の布をテーブルの上に置いた。


「? 何を召喚するの?」

「俺様が異世界の食文化に興味を持ったきっかけだ!」

「きっかけ??」

「お前に組み込んだ異世界レシピを知るきっかけとなったものだ。ガイウスにとっては懐かしいものばかりだがな?」

「? レシピなら私が」

「そうではない。時間も時間だ。一気に召喚した方がいい」


 時間も限られているので、すぐに召喚せんがためにだいぶ引き締まった両腕を前に出した。


「我が名はクローム=アルケイディス。この陣を創造せし者、創造主也」


 名を告げれば、陣はすぐに光を帯びた。


「我求む。我、望む。この陣の向こう側にありし物を。その物を我が手に届かせん」


 望むものは決まっている。俺の朋友ともとなったガイウスとその婚約者となったマールのために、召喚するものだ。


「このクローム=アルケイディスの手に『パーティーメニュー』を召喚せよ!」


 陣の中央が赤く強く光り、消えた頃には出来立てホカホカの異世界のご馳走が揃っていたのだった。

 ピザ、フライドポテト、寿司、ホールケーキ、その他諸々の文字通りパーティーメニュー!


「わ、わ、わー!? なにこれ、異世界召喚ってこんなことも出来るの!?」

「うむ。ただ、ひとつ欠点がある」

「なーに?」

「……俺様の魔力をかなり消費することだぁあ~」

「わー!? クローム!」


 セリカに鍛えられているとは言え、召喚の魔力消費は相変わらずだった。

 ひとつひとつならば、なんら問題はないのだが。一度に大量に召喚する場合はかなりの魔力を消費するのだ。

 なので、あらかじめ用意しておいた魔力回復ポーションをがぶ飲みした。


「ふぅ。以前だったら体力も消費してヘロヘロだったが、セリカのお陰でそこは改善されたな?」

「へ、えへへへ」

「さて、並べ替えくらいは俺様がしておく。セリカは二人を呼んできてくれ」

「あ、うん」

「まあ……そう言うことはしてないとは思うが」

「何が~?」

「「うわあああああ!?」」


 いきなり後ろに現れたガイウスに、俺様は鉄拳を振り下ろしたのは悪くない!

 が、俺様よりも武に通じた奴にはすぐに避けられてしまったが。


「うっわ!? クローム、久しぶりに召喚してくれたの!?」

「ガイウス様……? う、わ、これ何!?」


 どうやら、敬称でも名前で呼ぶように頼んだのか。マールもやってきて、卓に載せてあるご馳走に目を輝かせた。


「……お前達がめでたく結ばれたと、セリカから聞いてな? たまにはいいだろう?」

「わーい、ありがとー!」

「あ、ありがと……」

「本当ならば、チェストも呼びたいところだが。あいつにはまたの機会でいいだろう」


 あとでマールに聞いたら、絶対詰めよって来るだろうが無茶を言うな、でとどめておこう。

 それから、俺様も久しぶりに飲酒することにして一緒に召喚しておいた冷たいエールで全員喉を潤すことにした。


「「美味しい!」」

「このエールも久しぶりだな~?」

「そうだな。……ところで、ガイウス」

「なーに?」

「あと少しで、俺様の肉体も完成するだろうが。本当に、俺様とセリカの婚約発表だけで洗脳していた連中をもとに戻せるのか?」

「ふふーん。君の婚約だなんて衝撃ニュース。たいていの女の子達が気を失っちゃうだろうから、そこは自覚しなよ?」

「取り巻き連中のことなど知らん」

「ま、それはそうだけど」


 ガイウスは残っていたエールをがぶ飲みしてから、とんっと卓の上にグラスを置いた。


「次期国家錬金術師とも言われてる君には、世間からの注目が高いんだよ? そこに、僕や君の婚約発表をしたら……まあ、その世間の大半が許さない身分差だーかーら。それを利用する連中をあぶり出しするのにちょうどいいんだ?」


 相変わらず、仕事が出来る奴だ。まあ、そうでなくては次期国王となる王太子の地位にはいない。


「なるほど……。その様子だと、宮廷内の国家錬金術師達でも違法者のあぶり出しが出来そうなのか?」

「うん。国家機密どころか、処刑者を増やすだけの調査程度で済んだけど。ルーイスはもうダメだね? 君を恨み過ぎて壊れてる」

「……未だに、思い出せんが」

「ちょっと。クローム思い出せないの? ガイウス様と同じ金の髪の小さな男の子が、あんたに懐こうとしてたのに……あんたうざいって跳ね返してたじゃない?」

「あ」


 思い出した。

 ガイウスがいない時に、ガイウスによく似てたがかなり丸っこい体型の男の子供が。俺様の弟子にしてくれとかなんとか言ってくるのが……正直言って当時はわずらわしかった。

 それを、ついてくるなと一蹴しただけで、ついて来なくはなったが。まさか、あれだけで?

 あれだけで、俺様を殺そうとずっと思っていたのか?


「きっかけは些細なことでも、ルーイスの自尊心を打ち砕くには十分だったらしいよ? だから、ディスケットの手を使うことにして君を殺そうとしてるんだ」

「……謝罪は、もう無理か?」

「無理無理。聞く耳持たないよ? だから、処罰は王太子として下すさ。あいつも、ディスケットにも」

「……わかった」


 ……セリカを作らねば、俺様とて自分勝手な人間のままだった。

 ただひとつのきっかけのお陰で、変われたのだがもう周囲はどうにもならない。

 それからひととおり食事した後に、ガイウスが転移でマールを送ると去っていき、俺様は片付けを手伝いながらも自己嫌悪にするしか出来なかった。


「んもぉ、クロームは今の方がずっと素敵だよ!」


 辛気臭い気持ちでいると、セリカの手に頬を挟まれて上向かされた。


「ちゃんと、自分で反省してるんだし。悪いことをしてる人達には、ちゃんと罰を与えなきゃってあの王子様も言ってたじゃない。だから、いいの。クロームは今のままで」

「……いい、のか?」

「クローム?」

「俺……は、俺で、いいの……か?」


 俺様だなんて仮面をつけて。

 母に似た美しさを、仮面にして。

 自分を偽って生活していた日々にはもう戻れない。

 今が、楽し過ぎて。

 そして、自ら生み出して自ら好きになったホムンクルスは笑顔で頷いてくれた。


「いいんだよ。もう」


 俺……は、久しぶりに涙を堪えきれず。セリカの腕の中で静かに泣いてしまったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【第一部完結】転生99回目のエルフと転生1回目の少女は、のんびり暮らしたい!

DAI
ファンタジー
【第一部完結!】 99回のさよならを越えた、究極の『ただいま』 99回転生した最強エルフは、のんびり暮らしたいだけなのに――なぜか家族が増えていく。 99回も転生したエルフの魔法使いフィーネは、 もう世界を救うことにも、英雄になることにも飽きていた。 今世の望みはただひとつ。 ――森の奥の丸太小屋で、静かにのんびり暮らすこと。 しかしその願いは、 **前世が日本人の少女・リリィ(12歳)**を拾ったことで、あっさり崩れ去る。 女神の力を秘めた転生少女、 水竜の神・ハク、 精霊神アイリス、 訳ありの戦士たち、 さらには―― 猫だと思って連れ帰ったら王女だった少女まで加わり、 丸太小屋はいつの間にか“大所帯”に!? 一方その裏で、 魔神教は「女神の魂」と「特別な血」を狙い、 世界を揺るがす陰謀を進めていた。 のんびり暮らしたいだけなのに、 なぜか神々と魔王と魔神教に囲まれていくエルフ。 「……面倒くさい」 そう呟きながらも、 大切な家族を守るためなら―― 99回分の経験と最強の魔法で、容赦はしない。 これは、 最強だけど戦いたくないエルフと、 転生1回目の少女、 そして増え続ける“家族”が紡ぐ、 癒しと激闘の異世界スローライフファンタジー。

『推しの「貧乏騎士」を養うつもりでしたが、正体は「王弟殿下」だったようです。

とびぃ
ファンタジー
応援ありがとうございます。 本作は多くの方にお届けする準備のため、2月6日(金)で、一旦、非公開といたします。 今後の展開については、是非、各電子書籍ストアなどでチェックいただければ幸いです。 短い間でしたが、たくさんのハートとお気に入りを ありがとうございました。 〜「管理人のふり」をして別荘に連れ込まれましたが、過保護な溺愛が止まりません〜 【作品紹介】社畜根性が染み付いた悪役令嬢、推しの『モブ騎士』を養うつもりが、国の裏支配者に溺愛されていました!? ◆あらすじ 「貴方を、私が養います!」  前世はブラック企業の社畜、現世は借金のカタに「豚侯爵」へ売られそうになっていた伯爵令嬢エリーゼ。  絶望的な状況の中、彼女が起死回生の一手として選んだのは、夜会で誰の目にも留まらずに立っていた「推し」の『背景(モブ)騎士』への求婚だった!  実家を捨て、身分を捨て、愛する推しを支える慎ましいスローライフを夢見て駆け落ちしたエリーゼ。  しかし、彼女は知らなかった。  自分が拾ったその騎士の正体が、実は冷酷無比な『影の宰相』にして、国一番の権力者である王弟殿下レオンハルトその人であることを――! ◆見どころポイント ① 勘違いが止まらない!「福利厚生」という名の規格外な溺愛  逃避行の馬車は王族仕様の超高級車、新居は湖畔の豪華別荘、家事は精鋭部隊(暗殺者)が神速で完遂!  あまりの厚遇に「近衛騎士団の福利厚生ってすごいのね!」と斜め上の解釈で感動する元社畜のエリーゼと、そんな彼女を「俺の全権力を使って守り抜く」と誓うレオンハルト様の、噛み合っているようで全く噛み合っていない甘々な新婚(?)生活は必見です。 ② 伝説の魔獣も「わんこ」扱い!?  庭で拾った泥だらけの毛玉を「お洗濯(浄化魔法)」したら、出てきたのは伝説の終焉魔獣フェンリル!  「ポチ」と名付けられ、エリーゼの膝の上を巡ってレオンハルト様と大人気ないマウント合戦を繰り広げる最強のペット(?)との癒やしの日々も見逃せません。 ③ 迫りくる追手は、玄関先で「お掃除(物理)」  エリーゼを連れ戻そうと迫る実家の魔手や悪徳侯爵の刺客たち。  しかし、彼らがエリーゼの目に触れることはありません。なぜなら、最強の執事と「お掃除スタッフ」たちが、文字通り塵一つ残さず「処理」してしまうから!  本人が鼻歌交じりにお菓子を焼いている裏で、敵が完膚なきまでに叩き潰される爽快な「ざまぁ」展開をお楽しみください。 ◆こんな方におすすめ! すれ違い勘違いラブコメが好き! ハイスペックなヒーローによる重すぎる溺愛を浴びたい! 無自覚な主人公が、周りを巻き込んで幸せになる話が読みたい! 悪役たちがコテンパンにされるスカッとする展開が好き!

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

処理中です...