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26-5.盛大に祝おう
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セリカがこっそり様子見をしに行ったらしく、マールとガイウスは無事にくっついたとわかり。
今日くらいは祝いの席を設けようかと考えたりもしたが、セリカは普通の料理しか用意してないと言ったので。
久しぶりに、あれをやってみるかと召喚陣の布をテーブルの上に置いた。
「? 何を召喚するの?」
「俺様が異世界の食文化に興味を持ったきっかけだ!」
「きっかけ??」
「お前に組み込んだ異世界レシピを知るきっかけとなったものだ。ガイウスにとっては懐かしいものばかりだがな?」
「? レシピなら私が」
「そうではない。時間も時間だ。一気に召喚した方がいい」
時間も限られているので、すぐに召喚せんがためにだいぶ引き締まった両腕を前に出した。
「我が名はクローム=アルケイディス。この陣を創造せし者、創造主也」
名を告げれば、陣はすぐに光を帯びた。
「我求む。我、望む。この陣の向こう側にありし物を。その物を我が手に届かせん」
望むものは決まっている。俺の朋友となったガイウスとその婚約者となったマールのために、召喚するものだ。
「このクローム=アルケイディスの手に『パーティーメニュー』を召喚せよ!」
陣の中央が赤く強く光り、消えた頃には出来立てホカホカの異世界のご馳走が揃っていたのだった。
ピザ、フライドポテト、寿司、ホールケーキ、その他諸々の文字通りパーティーメニュー!
「わ、わ、わー!? なにこれ、異世界召喚ってこんなことも出来るの!?」
「うむ。ただ、ひとつ欠点がある」
「なーに?」
「……俺様の魔力をかなり消費することだぁあ~」
「わー!? クローム!」
セリカに鍛えられているとは言え、召喚の魔力消費は相変わらずだった。
ひとつひとつならば、なんら問題はないのだが。一度に大量に召喚する場合はかなりの魔力を消費するのだ。
なので、あらかじめ用意しておいた魔力回復ポーションをがぶ飲みした。
「ふぅ。以前だったら体力も消費してヘロヘロだったが、セリカのお陰でそこは改善されたな?」
「へ、えへへへ」
「さて、並べ替えくらいは俺様がしておく。セリカは二人を呼んできてくれ」
「あ、うん」
「まあ……そう言うことはしてないとは思うが」
「何が~?」
「「うわあああああ!?」」
いきなり後ろに現れたガイウスに、俺様は鉄拳を振り下ろしたのは悪くない!
が、俺様よりも武に通じた奴にはすぐに避けられてしまったが。
「うっわ!? クローム、久しぶりに召喚してくれたの!?」
「ガイウス様……? う、わ、これ何!?」
どうやら、敬称でも名前で呼ぶように頼んだのか。マールもやってきて、卓に載せてあるご馳走に目を輝かせた。
「……お前達がめでたく結ばれたと、セリカから聞いてな? たまにはいいだろう?」
「わーい、ありがとー!」
「あ、ありがと……」
「本当ならば、チェストも呼びたいところだが。あいつにはまたの機会でいいだろう」
あとでマールに聞いたら、絶対詰めよって来るだろうが無茶を言うな、でとどめておこう。
それから、俺様も久しぶりに飲酒することにして一緒に召喚しておいた冷たいエールで全員喉を潤すことにした。
「「美味しい!」」
「このエールも久しぶりだな~?」
「そうだな。……ところで、ガイウス」
「なーに?」
「あと少しで、俺様の肉体も完成するだろうが。本当に、俺様とセリカの婚約発表だけで洗脳していた連中をもとに戻せるのか?」
「ふふーん。君の婚約だなんて衝撃ニュース。たいていの女の子達が気を失っちゃうだろうから、そこは自覚しなよ?」
「取り巻き連中のことなど知らん」
「ま、それはそうだけど」
ガイウスは残っていたエールをがぶ飲みしてから、とんっと卓の上にグラスを置いた。
「次期国家錬金術師とも言われてる君には、世間からの注目が高いんだよ? そこに、僕や君の婚約発表をしたら……まあ、その世間の大半が許さない身分差だーかーら。それを利用する連中をあぶり出しするのにちょうどいいんだ?」
相変わらず、仕事が出来る奴だ。まあ、そうでなくては次期国王となる王太子の地位にはいない。
「なるほど……。その様子だと、宮廷内の国家錬金術師達でも違法者のあぶり出しが出来そうなのか?」
「うん。国家機密どころか、処刑者を増やすだけの調査程度で済んだけど。ルーイスはもうダメだね? 君を恨み過ぎて壊れてる」
「……未だに、思い出せんが」
「ちょっと。クローム思い出せないの? ガイウス様と同じ金の髪の小さな男の子が、あんたに懐こうとしてたのに……あんたうざいって跳ね返してたじゃない?」
「あ」
思い出した。
ガイウスがいない時に、ガイウスによく似てたがかなり丸っこい体型の男の子供が。俺様の弟子にしてくれとかなんとか言ってくるのが……正直言って当時はわずらわしかった。
それを、ついてくるなと一蹴しただけで、ついて来なくはなったが。まさか、あれだけで?
あれだけで、俺様を殺そうとずっと思っていたのか?
「きっかけは些細なことでも、ルーイスの自尊心を打ち砕くには十分だったらしいよ? だから、ディスケットの手を使うことにして君を殺そうとしてるんだ」
「……謝罪は、もう無理か?」
「無理無理。聞く耳持たないよ? だから、処罰は王太子として下すさ。あいつも、ディスケットにも」
「……わかった」
……セリカを作らねば、俺様とて自分勝手な人間のままだった。
ただひとつのきっかけのお陰で、変われたのだがもう周囲はどうにもならない。
それからひととおり食事した後に、ガイウスが転移でマールを送ると去っていき、俺様は片付けを手伝いながらも自己嫌悪にするしか出来なかった。
「んもぉ、クロームは今の方がずっと素敵だよ!」
辛気臭い気持ちでいると、セリカの手に頬を挟まれて上向かされた。
「ちゃんと、自分で反省してるんだし。悪いことをしてる人達には、ちゃんと罰を与えなきゃってあの王子様も言ってたじゃない。だから、いいの。クロームは今のままで」
「……いい、のか?」
「クローム?」
「俺……は、俺で、いいの……か?」
俺様だなんて仮面をつけて。
母に似た美しさを、仮面にして。
自分を偽って生活していた日々にはもう戻れない。
今が、楽し過ぎて。
そして、自ら生み出して自ら好きになったホムンクルスは笑顔で頷いてくれた。
「いいんだよ。もう」
俺……は、久しぶりに涙を堪えきれず。セリカの腕の中で静かに泣いてしまったのだった。
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