上 下
90 / 94

31-4.義妹との語らい(マールドゥ視点)

しおりを挟む






 ★・☆・★(マールドゥ視点)







 紳士淑女とか言われてる、貴族や王族って。

 思ってた以上に努力されているのね?

 あたし……いいえ、私。淑女教養を受けて、まだ一週間程度だけど。もう燃え尽きそうよ。

 クロームのお母さんの本家に養女になったとは言え、早くもリタイアしそう。


「頑張ってくださいましな、マールお姉様!」

「!? え、え! 王女殿下!?」


 当てがわれた部屋で干物のように溶けていたら、将来の義妹になるミリアム王女殿下がいらっしゃってた!

 え、ノックとか聞こえなかったんですけどぉおおおお!?


「ご安心くださいな? きちんとノックはしましたわ。お姉様が溶けていらっしゃって、お気づきにならなかっただけですわ」

「いや、その……本当に申し訳ありません!」

「大丈夫ですわ。わたくしも行儀作法を始めた頃はお姉様と同じでしたもの。お兄様のために頑張ってくださいましな!」

「は、はい……」


 王女殿下は逆にチェストに嫁入りするのに、婚約期間中定期的にチェストの家に修行をしているらしい。

 私よりも、はるかに楽だと思われがちだが。料理に洗濯、掃除だなんて王族は普通やることがないもの。

 けれど。


「……ですが。お兄様の御親友でいらっしゃる、クローム殿のご血縁がアスペリア公爵家だなんて。あの稀代の美姫でいらっしゃった、アルメリア姫様のご子息だったとは! 世間は本当に狭いですわ~」


 本当に。

 クロームのお母さんが、元貴族だとは聞いていたけども。まさか、大貴族のお姫様だなんて思えるだろうか?

 昔っから、すっごく綺麗だったし。ついこの間、報告した時に養女を提案してくださった時もだけど。本当に、二十歳そこそこの子供一人産んだ親だよね? って思うくらい若々しかった。

 は、さて置き。


「王女殿下は、今日の修行は終わられたのですか?」

「お姉様! わたくし達は、将来姉妹になる間柄ではございませんか? わたくしには敬語は不要でしてよ?」

「え、いや。まだ姉妹じゃ」

「お姉様?」

「……じゃあ。ミアって呼んでいい? こう言う場の時だけ」

「もちろんですわ!」


 王女様だけ敬語はおかしいかと思うけど、彼女の癖らしいのでそこは省き。

 主に、チェストの話題やガイウス様の話にはなったけれど。意外にも、王女様とは言え、普通の女の子だと言うのは理解出来た。

 料理修行とかは大変らしいけど、武器とは違う刃物を扱うのは繊細だが楽しいらしい。まーさか、チェストの腕っ節に惚れるとは思わなかったが。


「ガイウス様が、ガイってお忍びの格好できていた時以外は。割りかし、チェストと一緒だったもの。あいつが、ひょろひょろのイメージの割に腕っ節が強いのはおじさん……チェストのお父さんのお陰かしら?」

「衛兵隊の団長でいらっしゃっいますものね! しかも未だ現役で!」

「私も付き合わされたけど、女には無理……! けど、ミアなら大丈夫かもね?」

「ふふ! 一度、ご教授いただく予定ですわ!」

「おお!」


 綺麗で可愛いらしく、どこかガイウス様に似た雰囲気の立派な王女様だけど。武道関連を色々極めているらしい、ちょっと変わり者の女の子。

 だから、チェストも折れたのかしら?

 あいつが、今の仕事をやりがいに感じているのは私も知っている。それで、貴族にはならずに、ミアを降嫁させることになった。

 それは、クロームとルーイス王子の事件が終わってから、この街では知れ渡ったビックニュースだ。

 問い合わせはもちろん殺到したが、チェストは持ち前のマイペースさでしれっとしているし?


「お姉様も、最近お兄様にあまりお会いになっていないとお聞きしましたが……」

「ルーイス王子がいなくなった穴埋めするのに、大変だもの。電報は毎日やり取りしてるけど」

「……そうですわ! 今から会いにいきましょう!」

「へ?」


 まだ行儀作法の授業が山のようにあるけれど! と言っても、ミアの勢いは止まらずに。

 私は彼女に引きずられるような形で、王宮に向かうことになってしまった。王族御用達の馬車は荷馬車に比べるまでもなく、快適で乗り心地が良かったです。
しおりを挟む

処理中です...