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第23話 好きな子の手料理……
しおりを挟む「これでええやろ?」
「……いいんじゃけど」
藍葉と違い、会社員の仕事はあったにはあった。しかし、部下で悪友で幼馴染みに何故か……久しぶりに小鳥遊の家に来いと誘われ、食事は持ち寄りではなく『藍葉の手料理』をご馳走になることに。
幼馴染みとしてなら、昔彼らの母親の夕飯は何度か馳走になったことはあるが。好きだと再認識した女の子の手料理など、小学生だった彼女が家庭科で作ったお菓子程度。
バレンタインはたしか既製品だったはずなので、それ以来の手料理だが。成樹に報告が上がる、栄養をしっかり管理されたかのようなレシピの選出がうまい女の子の手料理は美味いに違いない。足は補助椅子があれば、ある程度の料理は調理が可能だそうで。
なら、期待値が高まるのも仕方がないが、何も手土産なしにお邪魔するわけにもいかず。
「好き嫌い少ないし、シゲのチョイスでええよ」
「……そうは言うけど。味の好みくらい教えろ」
「まあ、甘ったるいのよりは……って感じやな」
「さっぱりか、甘酸っぱい方か」
「お。ドンピシャ」
と言うことで、フルーツタルトでも高めのものを選び。酒は飲める年齢らしいが、杖無しで歩くのがしんどい状態にしてはいかんとコンビニのスムージー程度にしておいた。
それだと、翌日飲みたい気分に冷蔵庫にあれば手に取れるだろうと予想して。いっしょに生活していないのに、好意を持つ相手にはこんなに甘々だったかと自分で苦笑いしたくなるほどだ。
「……俺って、こんな臆病者じゃったか」
「好きな子には調子狂うんは、惚れた男の弱みやろ」
「おまんには出来たんか?」
「まーだやな? 向こうの俺にはいるらしいけど……全然コンタクト取らんし」
「俺が先か、藍葉にとって先じゃったか」
「どっちもちゃう?」
「……見つけろよ」
「とーぜん」
話しながら歩けば、久しぶりの小鳥遊家。両親は数年前から出張勤務が多くなり、ここ三年は美晴が事実上の保護者でマンションと行き来している。マンションはあくまで在宅ワーク用に社宅扱いしているので問題ない。
バリアフリーの行き届いた一軒家に、少し助力したのが成樹だと知ったら、藍葉はどんな反応をするだろうか。女々しい男だと笑われていないが、再会したあの日は目を丸くしていて……成樹は可愛いなと思ったくらいだ。
美人な母親に似て、まだあどけない感じはあるが……大人の美人に成長するのを手助けしたい気力は強くなった。まだ望みがあるのなら、成樹に惚れ直して欲しいと思うくらい。
受け入れる覚悟は出来ているし、足のことも含めて大事にしていきたい。なんなら今日告白まで行きたいところだが、藍葉の成長はまだ途中にも差し掛かっていない。
せめてこちらも、次のモニターが『インターンシップ』にしっかり公表するまで見守ろうと、美晴が家の鍵を開けたあとに『お邪魔します』と続いた。
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