ポイ活で、異世界ファームを育成しよう!

櫛田こころ

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第97話 託された希望の種を

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 何故、自分に託されたのか。最初は理解出来ていなかったが、事態急変となった外の光景を見てクロードは納得が出来た。

 空が曇ったかと思えば、雪も大して降らない地域なのに窓の縁もだが見える景色すべてが『氷』に包まれていたのだ。会社の窓だが、叩いても簡単に割れるはずもなく、廊下へ出ようにも非常ドアも凍り付いたのかでオフィスに閉じ込められた。

 年末でも交代でのアプデ管理のために寝袋で仮眠を取っていただけなのに、何故こんな事態になったのか。わけがわからないと思いつつも、同期で上司の熊谷成樹が昨日言い残した言葉を思い出した。


『なんかあったら、インターンの小鳥遊妹へメールするんじゃ。俺の彼女じゃから手出しはすんなよ?』


 主任の美晴の妹であることは知っていたが、直接は会えていない。少し身体に障がいを持つ女性とだけは報告書ついでに聞いたことはある。その彼女へ、なにか頼ればいいのか……と、メールをしてみたところ、数分後に『はじめまして』の件名とともに返ってきた。


【小鳥遊藍葉です。熊谷課長から詳しいことはなにも伺っていないのですが、現状、家から出れない状況です。そちらは大丈夫でしょうか?】


 と言った、拙いながらも状況把握にはありがたい内容だった。インターンだから、まだメールの文章に慣れていないのは当然。

 これだと、砕いた言葉で文章を打つ方がいいだろう。業務連絡も必要だが、肝心の熊谷らとは藍葉という少女も連絡が取れないらしい。年末とはいえ、熊谷も仕事をしているとなると仕事場兼自宅に篭もっているのか。何故、彼女である藍葉といっしょじゃないのか気にはなるが……こればかりは確認の仕様がないため、次のメールで個人用の携帯番号を教えた。

 すぐかかってくるか心配だったが、会社用じゃない携帯に着信が来たので通話ボタンを押すと。


『あの……はじめまして。小鳥遊藍葉ですが、クロード=如月さんのお電話でしょうか?』


 典型的な確認だが、きちんと仕事の出来そうな印象が持てた。声が可愛らしいので一瞬熊谷うらやましいとか思ったものの、緊急事態に変わりないので口には出さない。


「はい。自分が如月です。……いきなりですが、敬語を解いても?」
『え? あ、どうぞ』
「ありがと。緊急事態やから、方言出したほうが楽やねん」
『……え? 関西弁??』
「兄貴と同じやろ? 兄貴に教えたんは俺やねん。大学も同期なんよ」
『あ、そですか……』
「せやから、君も敬語ええで。なんなら、クーちゃんとか呼んでもええけど」
『いやいやいや!? あの、緊急事態……だ、よね?』
「せや。窓の向こう全体がこっちから見ても氷河期や」


 スマホを耳に当てながらも外を見るが、高層階なので下の様子まではよく見えない。よくて、ほかのビルの表面がカチコチに凍っているのが見えるくらいだ。


『……こっち、も同じなの。えっと、信じてもらえるかわからないけど。……クーちゃんになら、言ってもいいのかな?』
「おん。熊谷の彼女ちゃんの言葉や。聞いたるで」
『えっと。……ポイ活アプリが、この事態になるための救済措置になってたのって、知ってた?』
「……いや?」

 クロードは会社側でのモニター陣営へのサポート管理くらいしか携わっていないため、熊谷から詳しいことはあまり聞いていなかった。しかし、藍葉を含め、彼らの提出してくる企画書はどれもこれも新鮮で面白いと思っていた程度。

 特に、藍葉の宅配弁当へのレシピについては、自炊もそこそこするクロードにとっては興味惹かれる内容ばかり。左藤を通じて紹介してもらおうとしていたが、左藤は今頃どうなっているのか少し心配にはなってきた。

 それはともかく、自分たちが関わっているのが『救済措置』というのは意味が分からない。


『課長……シゲくんがわざわざクーちゃんに頼る理由は、会社側に誰かが寝泊まりしているのをわかってだと思うの。自分は『起きれない』から、起きているごく少数の人たちでなんとかしなくちゃいけないから』
「待て待て、藍葉。いろいろこんがらがっとるのは俺も分かる。けんど、一般人の俺らでなにすりゃええん? こっちも消防隊とかじゃなくて、ただの企画運営集団やで?」
『そうなの? あのポイ活作った人に近い人物だって思ってた』
「近い? ああ、うちらのトップ……あ」


 モニターの藍葉には、まだ『加東奈月』の存在を知らせていないとしたら。今頃思い出してきた『クロニクル=バースト』の目的などについては、『クリエイター集団』としての意気込みだけだと勝手に思っていただけのクロードだったが。

 今の状況を考えると『絵空事』でないのが明確にわかった。つまり、コロニーとしてポイ活アプリを運営していたのが一旦終わり、現実的に『世界災害』の最初が起きたのだということ。それを藍葉に伝えれば、『ナツお姉ちゃんの……嘘じゃなかった』と、言い淀んでいた内容も聞けたので、合致することが出来た。


『教えて、クーちゃん。あたし、ポイ活アプリくらいでしかサポート出来ないと思うんだけど。なにが出来るのかな?』


 彼氏のところにすぐにでも行きたいだろうに、託されたという思いを無碍にしない気持ちを大事にしているとは。感心してもっとしゃべりたいところだが、まずは『クロニクル=バースト』の経緯と同時に並行世界側のチャンネル利用に使っていたVRMMOに潜れないかで……藍葉の家に機材がないかの確認を取った。

 アプリ運営は一旦離れてもいいように、設計にはクロードも携わっているのでこの後のことは別件扱いになる。会社のだがデスクトップを立ち上げ、藍葉とオンライン通話できるようにもセッティングしていった。
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