ポイ活で、異世界ファームを育成しよう!

櫛田こころ

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第98話 一方、忘れかけていた『神』は

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 ドシン、と重いなにかを押し付けられたかのような感触。

 何事だと起き上がったら、今いる場所を見渡してから『ああ……』と、ハル神はどこでどうなっているのかを思い出した。


『指示出しの文言……いじったあたりで、寝扱けてたな?』


 並行世界線上でも、『異世界ファーム』の内側と外側の境目に篭もる形で、地球線上を保てるように維持していたのだが。

 思ったよりも、氷雪の勢いがすごくてあちらでは『氷河期手前』まで被害が拡大してしまっている。なので、人間たちの被害への混乱を抑えるべく、ハル神とナツ神の『血』を混ぜて休眠措置を施したのだ。

 寒さに凍え、温まらなくてはという本能から眠りに誘う香りへと。すべてではないが、効いたとの効果もあり、公共交通機関などの停止くらいはあったが年末年始のダイヤということで事故はほとんどなかったようだ。


『これが昼間だったら、まずかったな? カウントダウン前後だったら……まあ、凍ったら即効動けなくなるし?』


 寺社仏閣、コンサート会場には『香り』が飛んですぐ休眠がはじまったとすれば。住宅街やホテルでの『休眠』はもっとゆるやかに進んでいるのだろう。病院は真っ先に眠らせないと『死との境』で迷う意識が乱れてしまうから危ない。


『解凍時のむくみくらいは勘弁してくれよ? そっちの『俺』だって、事実上寝ているしな?』


 意識はこちら側に来ないとなると、もとから計画していた『クロニクル=バースト』側の仕事をしているのかもしれない。本来なら、ファーム側で一部任せたいことがあったが、こればかりはギリギリまで報告しなかったこちら側の責任だ。

 意識を引きずり出すのは簡単だが、まだ彼の妹が呼吸をして『起きて』いるのなら話は別。

 ファームではなく、はじめてのVRMMOにトライしようとしているのならここは説明しようと意識体の分身を小鳥遊家に飛ばした。


「……え?」
『よ? こっち側の妹』


 服装はともかく、見た目がほとんど美晴そっくりの兄貴が目の前に登場したらびっくりしないわけがない。大声を上げても下の階にいる小鳥遊夫妻は休眠しているのを確認しているから、構わず藍葉の横に腰かけてみた。足の障がいで後退は出来なかっただろうが、怖くないと両手を挙げての降参ポーズをしてみる。


『なんや? そこに誰か来たん??』


 PCの方から、関西弁ではあるが美晴じゃない声に誰だかすぐにわからなかったが。並行世界のひとつにあたる藍葉のパートナーだったか、と思い出して返事をしてやることにした。


『おう。クロードか? 美晴と同一の核を持つ『神』だよ。通称、ハル神』
『は? 神? 美晴が??』
『本人じゃないない。今ここにいる藍葉との血縁はないし』
『よぉ、わからんけど。敵さんやないんやな?』
『むしろ、異世界ファーム側では依頼者が俺』
『マジかい』


 PCでモニター通信できるようになっているのか、顔を見せてやればクォーターらしい青年の顔が驚き一色になっていた。服装の異質さもあるだろうが、やはり同一の存在なのでダチとそっくりだからかもしれない。


「……あの。じゃあ、ナツお姉ちゃんの」


 ずっと黙っていた藍葉が興味を傾けたくなる単語を口にした。やはり、夢を介しての回路接触くらいは藍葉と交信を始めたところなのだろう。


『そ。あいつにとっての旦那が俺だけど。お前の兄貴にとっては別の奴な?』
「……お兄ちゃんとシゲくんは、無事……ですか?」
『無事無事。意識とかは今からお前が潜ろうとしていたVRMMOにいるけど……クロード、藍葉は行かすな。外側からのログインくらいにさせとけ。ファームの実質的な管理権限をこの子にさせたい』
『んな!? 無茶ぶりな仕事をバイトくらいの子にさすん??』
『そんくらいしないと。お前ら、飯もろくに食えずに死ぬぞ?』
『……たしかに。ここやと救援物資のフロアにも行けんわ』
『藍葉は怖いかもだけど。腹空いたら宅配弁当のサンプルがあるだろ? 下で温められるか?』
「……お母さんたちは」
『全部終わってから、『起こす』。それは神さんの俺とかナツの担当』
「……わかり、ました」


 その分担を指示してから、分身体を階下に向かってみたが。極寒なのに、布団の中で静かに寝ている壮年の夫婦の姿があったのでそこは大丈夫か。

 次に飛んだのは、『加東奈月』がシェルターに入れられているかを確認するために、『例の病院』へ。本体は異世界ファームの境目から飛び出したが、概ね復興が整っているのでそこは『ナツ神』に預けて問題ないはず。

 地球線上の、災害を落ち着かせるのはここからなので……しばらく会いに行けんなとぼやきながら、本体をファームから脱出させるしかない。

 終わりの始まりとやらは、もう二歩、三歩以上に進んでいたのだから。
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