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第117話 真っ暗な向こうには
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一瞬、バグかと思った藍葉だったが。
クロードに声をかけようにもディスプレイごとブラックアウトしてしまったので、彼の声も届かないでいた。
スマホで番号を確認してからかけたものの、そちらでも着信音が聞こえず停止状態。
きちんと、指示通りにロックの解除コードを打ち込んだだけだと言うのになにがあったのか。
部屋でひとりぼっちの状態になった藍葉は急に心細くなったが、もう一度端末それぞれを起動できないか試行錯誤してみた。
「……ダメ、か」
せっかく、成樹たちの手伝いが出来るかと思っていたのに。これでは振り出しに戻ってしまったのと同じだ。
何もできない。
その不安がだんだんと恐怖へと変換されていく感覚。ああ、これは『障がい』だと藍葉でも本能的にわかってきた。心とからだ、共に不安定になってバラバラになっていく感覚が『病気』以上のものになるのを……昔、よくあったのを思い出してきたのだ。
そしてそれは、この事態になる少し前にも。
あれは、足以上に藍葉自身がずっと抱えていた『障がい』なのだ。
それに対処する頓服薬が今手元にあるわけがないので、ぐるぐる巻きのまま横になることにした。下手に動かなくなった機材を壊したら、弁償以上の金額を請求されても藍葉には払えないし……大事なものだから、美晴たちにも申し訳ない。
(……シゲくん。お兄ちゃん。どこにいるの? ……会いたい!!)
願っても魔法のように現れることはない。彼らはここからどこか、『安全』なところへと確保されてしまったのだ。無事かどうかくらいは、成樹とはあのVRMMOを通じて確認できたから大丈夫。
もしかしたら、その方法でもう一度……と思っても、端末はまだどれも真っ黒のままだ。起動回復すら出来ていないのに、あの緻密なゲームの世界に飛び込む形はとれない。
ピコン。
少し落ち着こうとぼんやりしていたら、どこかから電子音が藍葉の耳に届いた。
どれだ、と体を起こして探してみれば……最初にブラックアウトしたタブレット端末の方だった。真ん中がちかちかと点滅しているように光っていたのだ。何度かタップしてみると、画面がさらに光り……ふたり分の顔が出てきた。ひとつが美晴で、ひとつは初対面の女性。しかし、見覚えがあるような雰囲気ではあった。
『おーい。藍葉、解けたか?』
電子音交じりだが、たしかに美晴の声だったのでタブレットをきちんと持ってから返事をする。
「お兄ちゃん!? 今どこ!!?」
『あ、聞こえたか。身体はわからんねん。それはそうと、お前どこおるん? そこシゲんとこか?』
「頑張って来たんだけど。お兄ちゃんたち……いなかったし」
『そりゃ、面倒なことさせたな? 体は無事なんは確認しとるから、安心しぃ? んで、この子やけど』
と言って、横にいるボブショートの女性の肩を組むようにすると、女性の方は『わ!?』と言いながら驚いているようだった。
『ちょ、み……はるさ』
『俺のパートナーやねん。三富夏奈っちゅーんよ。お前の義姉さん候補!』
「……はい?? ナツ神そっくりだけど……??」
直接会えているようではないが、意識の中だけでも共有できるようにしているのか。ナツ神もそれなりに綺麗だったが、随分と顔の良い女性だ。慌てている様子を見る限り、美晴との関係を受け入れてても恥ずかしいところはあるのだろう。
『そーそー。ハル神の奥さんな? そん人のこっちやから、夏奈がそうやねん』
「え、あ、うん?? あ、そっか……あたしとシゲくんのもたしかそんな感じなのが」
『……異世界ファームね。あたしもモニターさせられてたんだけど。藍葉……ちゃん、に今管理権限ある状態なのわかる?』
「へ? 使おうにもこっち全部端末が真っ暗なんですけど?」
『俺が繋ぐんに、ちょぉ待てや? えーっと、こうしてこうこう』
シャンシャン、と別の電子音が鳴ったかと思えばデスクトップパソコンの方が眩しいくらいに光り始め……出てきたのは、前に一度美晴がいじっていた管理者画面そのままだった。
「……ここから、勝手に触っていいの?」
『ええで。藍葉のクセくらいなら、俺があとでいじくるのはいくらでもなんとかできるし』
「りょーかい。……えっと、夏奈さん。お兄ちゃんをよろしくお願いいたします」
『あ、は、はい。……しっかりした妹ちゃん』
『ははは! こっちはこっちでやること多いから、クロードにはまた繋がるようにしたるわ』
じゃな、と言い終えたあとに、ブラックアウトしていたディスプレイが全回復したのだが。戻って来たクロードとの通話チャンネルでは一分も経っていなかったらしい……。
クロードに声をかけようにもディスプレイごとブラックアウトしてしまったので、彼の声も届かないでいた。
スマホで番号を確認してからかけたものの、そちらでも着信音が聞こえず停止状態。
きちんと、指示通りにロックの解除コードを打ち込んだだけだと言うのになにがあったのか。
部屋でひとりぼっちの状態になった藍葉は急に心細くなったが、もう一度端末それぞれを起動できないか試行錯誤してみた。
「……ダメ、か」
せっかく、成樹たちの手伝いが出来るかと思っていたのに。これでは振り出しに戻ってしまったのと同じだ。
何もできない。
その不安がだんだんと恐怖へと変換されていく感覚。ああ、これは『障がい』だと藍葉でも本能的にわかってきた。心とからだ、共に不安定になってバラバラになっていく感覚が『病気』以上のものになるのを……昔、よくあったのを思い出してきたのだ。
そしてそれは、この事態になる少し前にも。
あれは、足以上に藍葉自身がずっと抱えていた『障がい』なのだ。
それに対処する頓服薬が今手元にあるわけがないので、ぐるぐる巻きのまま横になることにした。下手に動かなくなった機材を壊したら、弁償以上の金額を請求されても藍葉には払えないし……大事なものだから、美晴たちにも申し訳ない。
(……シゲくん。お兄ちゃん。どこにいるの? ……会いたい!!)
願っても魔法のように現れることはない。彼らはここからどこか、『安全』なところへと確保されてしまったのだ。無事かどうかくらいは、成樹とはあのVRMMOを通じて確認できたから大丈夫。
もしかしたら、その方法でもう一度……と思っても、端末はまだどれも真っ黒のままだ。起動回復すら出来ていないのに、あの緻密なゲームの世界に飛び込む形はとれない。
ピコン。
少し落ち着こうとぼんやりしていたら、どこかから電子音が藍葉の耳に届いた。
どれだ、と体を起こして探してみれば……最初にブラックアウトしたタブレット端末の方だった。真ん中がちかちかと点滅しているように光っていたのだ。何度かタップしてみると、画面がさらに光り……ふたり分の顔が出てきた。ひとつが美晴で、ひとつは初対面の女性。しかし、見覚えがあるような雰囲気ではあった。
『おーい。藍葉、解けたか?』
電子音交じりだが、たしかに美晴の声だったのでタブレットをきちんと持ってから返事をする。
「お兄ちゃん!? 今どこ!!?」
『あ、聞こえたか。身体はわからんねん。それはそうと、お前どこおるん? そこシゲんとこか?』
「頑張って来たんだけど。お兄ちゃんたち……いなかったし」
『そりゃ、面倒なことさせたな? 体は無事なんは確認しとるから、安心しぃ? んで、この子やけど』
と言って、横にいるボブショートの女性の肩を組むようにすると、女性の方は『わ!?』と言いながら驚いているようだった。
『ちょ、み……はるさ』
『俺のパートナーやねん。三富夏奈っちゅーんよ。お前の義姉さん候補!』
「……はい?? ナツ神そっくりだけど……??」
直接会えているようではないが、意識の中だけでも共有できるようにしているのか。ナツ神もそれなりに綺麗だったが、随分と顔の良い女性だ。慌てている様子を見る限り、美晴との関係を受け入れてても恥ずかしいところはあるのだろう。
『そーそー。ハル神の奥さんな? そん人のこっちやから、夏奈がそうやねん』
「え、あ、うん?? あ、そっか……あたしとシゲくんのもたしかそんな感じなのが」
『……異世界ファームね。あたしもモニターさせられてたんだけど。藍葉……ちゃん、に今管理権限ある状態なのわかる?』
「へ? 使おうにもこっち全部端末が真っ暗なんですけど?」
『俺が繋ぐんに、ちょぉ待てや? えーっと、こうしてこうこう』
シャンシャン、と別の電子音が鳴ったかと思えばデスクトップパソコンの方が眩しいくらいに光り始め……出てきたのは、前に一度美晴がいじっていた管理者画面そのままだった。
「……ここから、勝手に触っていいの?」
『ええで。藍葉のクセくらいなら、俺があとでいじくるのはいくらでもなんとかできるし』
「りょーかい。……えっと、夏奈さん。お兄ちゃんをよろしくお願いいたします」
『あ、は、はい。……しっかりした妹ちゃん』
『ははは! こっちはこっちでやること多いから、クロードにはまた繋がるようにしたるわ』
じゃな、と言い終えたあとに、ブラックアウトしていたディスプレイが全回復したのだが。戻って来たクロードとの通話チャンネルでは一分も経っていなかったらしい……。
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