【完結】異世界で小料理屋さんを自由気ままに営業する〜おっかなびっくり魔物ジビエ料理の数々〜

櫛田こころ

文字の大きさ
103 / 108

第103話 愛を告げる①

しおりを挟む

「ヒロ、話がある」


 とある日の営業を終えた時に。

 スインドさんから、真剣な表情で話かけられたのだ。

 なんだろうと思っていると、厨房でなく裏口で話せないかとも告げてきたのだ。


「……どうしました?」


 これだけ真剣であることと言えば……ひとつしか私は思い浮かばない。

 彼が……この里から去ると言うこと。

 チルットにある、自分のお店に戻ると言うことだ。

 随分と滞在してくれたが……彼の本来の仕事はあちらだ。私が引き留めてはいけない。

 私が質問すると、スインドさんは何度か目を泳がせたが……何故かいきなり、私の両肩に大きな手を置いたのだ。


「……言葉は、飾らない」

「はい?」

「……率直に言う。俺は……ヒロ。お前のことが好きだ! 異世界人とかの興味からじゃない……ひとりの女性として!!」

「え?」


 今……信じられない言葉を言われたような?

 びっくりして、変な声で聞き返してしまったが……真っ赤っかなスインドさんは、真剣な目で私を見つめてくるだけ。

 と言うことは……つまり?


「……信じてもらえないか?」


 私が黙っていると……スインドさんは自信がないように、声のトーンを落としていく。どれだけ……勇気を出して、私に告白してくれたのか。

 私の空耳でないことを自覚すると、胸が熱くなり……鼓動が速くなっていく!! 背中から汗がブワッと出てきた!?


「え、え……す、スインド……さんが?」

「……嘘ではない。俺は……ヒロを愛しく思っている」

「えぇえ!?」


 さらに愛の言葉を告げられたので、飛び上がりそうだったが……まだ手は肩に置かれたままなので出来ない。逃げ出すことも。


「料理への姿勢も……人間でもアヤカシでも真摯に向き合う強さも。姿形だけでなく……『ヒロ』だから、好きなんだ」

「…………きょ、恐縮……です」


 いつから……そう思っていたか、聞けば答えてくれるかもしれないが。

 私は……見向きもされていないと思っていたから、べた褒めの言葉達が嬉しくて仕方がない!

 ちんちくりんだし、顔も年齢詐欺くらい童顔だから。

 最初は子供に見られていたのに……今は、違う。

 スインドさんは、『私』をきちんと見てくれている上で……告白してくれているのだ。

 照れ臭くて俯こうとしたら、顎に手を添えられて上を向かされた!? イケメンさんのご尊顔が目の前に!!


「……ヒロがいいんだ。俺の言葉……受けてもらえないか?」


 真剣だけど……どこか不安そうな色が見えた。

 ああ、この人にそんな顔をさせているのは……私なんだと。

 胸が熱い以上に切なく締め付けられる感覚を得る。ここは……応えていいか、告げられる前だったら悩んだけど。

 スインドさんは、真摯に想いを告げてくれたんだ。なら、私も誠意を向けなくては。

 だから……顎に添えられた手に、自分の手を重ねたのだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【完結】憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~

きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。 前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

【完結】うだつが上がらない底辺冒険者だったオッサンは命を燃やして強くなる

邪代夜叉(ヤシロヤシャ)
ファンタジー
まだ遅くない。 オッサンにだって、未来がある。 底辺から這い上がる冒険譚?! 辺鄙の小さな村に生まれた少年トーマは、幼い頃にゴブリン退治で村に訪れていた冒険者に憧れ、いつか自らも偉大な冒険者となることを誓い、十五歳で村を飛び出した。 しかし現実は厳しかった。 十数年の時は流れてオッサンとなり、その間、大きな成果を残せず“とんまのトーマ”と不名誉なあだ名を陰で囁かれ、やがて採取や配達といった雑用依頼ばかりこなす、うだつの上がらない底辺冒険者生活を続けていた。 そんなある日、荷車の護衛の依頼を受けたトーマは――

処理中です...