異界の編集は、世の中と隣り合わせ

櫛田こころ

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第27話 意外と暇な編集長

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「……暇ぁ」


 AKIRA本体は、左右から伸びた袖で壁をきちんとコントロールしなくてはいけないので。基本的に異界との境界線である『門前』で待機していなくてはいけない。

 他の兄弟や縁者らがこちら側まで到達するまでは、姿形も『子ども』でいる必要があるとされている。兄弟らがこちら側へと到達した後にこそ、AKIRAの褒賞が到着すると言われ続けてきたのだ。

 左右反転。

 後方にあるが、見えないとされている『異界』と。

 表側の現実世界とその裏側を守護するのが、AKIRAの務め。

 ただの『孤児』と思わされ。

 忌み嫌われる存在として、現実側では生きていたとされていたが。


「あははは! おばあちゃんとおじいちゃんが見守っているじゃないかい?」
「と言って! 手を貸してくれないんでしょう?」
「ある程度のところまで来たら、さ。おばあちゃんの先代も同じ事をしてくれたさ」
「ほんと?」
「ほんとさ。だから、おばあちゃんが今ここにいるんだ」
「……わかったわ。師範」


 師範の上の、総代表。祖母の言うことが本当であれば、その存在こそが異界の創始者。

 異界をさらに延長させて、地球の救済の先々をすべて編纂してきた張本人。

 ある意味で、敵対してきた王。

 ある意味で、全てを掌握してきた王。

 どんな人物かは記憶に残されていない。AKIRAが『明』の外側を揃えて編集者として認識したときには、その地位には後ろの祖父らが担当していた。

 分断された魂たちをかき集め、王の末裔に君臨したのはAKIRAが久しい。

 地球と名がついたのは、あちらではごく最近でも。AKIRAが分断されたのは、もう少し昔。

 時代の激動と揶揄された『江戸』と『明治』の境だ。

 切り刻まれた魂の欠片を、少しずつ少しずつ、溶かして広げて、また集めて。その繰り返しを縁者である政と成にさせたくなかったので、頑張るばかりだった。

 親類縁者で、何万年前に組み分けた『お互い』を突き放すための編集部を、もう二度とさせないために。


「どんなゲームルートにもない『全てハッピーエンド』。形をギリギリまで、朱里にも知らせなかったからには相応の覚悟をしたのかい?」


 祖父らでも出来なかった『全ての正解』に繋がる、最愛の到達。

 全てを完了させて、終わらせるためにAKIRAも全てを投げ打ったのだ。愛も魂も、命も何もかも。

 ただひとつ、最後の最後を掴んで欲しい願望だけは留めて、いつ来るかわからない自分の最愛を待つことを決意したのだ。


「……絶対終わらせるって、決めたの。あたしのクーに、向こうの情報は預けたから」


 ここまで来るために全部預けたのだから、本来の『死』など誰にも二度もさせたくない。本質的な『心の死』なんて、誰にも二度とさせたくなかったのだから。


「いつまでかかるか、誰にもわからない。でも、見守る存在がいるのはいいことだ。私の頃は、じいさんもいなかった」
「……うん」


 全くのひとりでないようにしたのは、総代表と祖母たちのおかげ。ここまでAKIRAが辿り着けたのも、間違いなく彼らのおかげなのは間違いない。

 微妙な左右の力のズレを調整しながら、AKIRAは門前に座って待つのを再開させた。

 まずは、あの龍の皮を、こちらまで運ばれないと次が何も出来ないのだから。
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