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2017年8月29日ーーDOKIDOKI☆焼肉パラダイスpart2

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 ◆◇◆








「ひぃぇええええ⁉︎」

 速い速い速いーーーー⁉︎
 僕と姫林檎を抱えてるエディオスさん、大して重さを感じないのか全力で森の中をダッシュされています。
 とにかく、あのグリズリーみたいな魔獣から逃げおおせると言うより対決するために場所移動してるそうな。

「あんま叫ぶな、舌噛むぞ!」
「ふぇええ!」

 たしかにフィーさん以来の絶叫系お運びに焦っちゃったけど、あれよりはいくらかゆるいと自覚すれば姫林檎の袋を抱え直してお口をチャック。
 正面には、距離はあっても魔獣が血眼?にして僕らを追いかけてきている。獲物は絶対逃すか!って感じにぃいいいい⁉︎

「ーーーーうっし、この辺ならいいか」

 ある程度の追いかけっこ劇が続いた中、エディオスさんが急にブレーキをかけて止まった。魔獣からはそこそこ距離があるのですぐには追いつけれないけど、かなり開けた場所に来たってことはここで出迎えるのかな?

「カティア、お前は適当な茂みに隠れてろ。絶対出てくんなよ?」
「りょ、りょーかいです!」

 降ろしてもらいながら受けた説明に、僕はこくこくと頷いた。
 地面に足がついたら速攻茂みに向かって走っていく。姫林檎の袋を落としそうになるとか、お運びで足がよたつくけど気にしてられない!
 僕がしっかり茂みの向こう側に入った途端、エディオスさんは剣を抜いて魔獣がいつ来てもいいように構えた。

「鈍ってんが、いい腕慣らしにさせてくれよ?」

 ピンチなのは僕だけだったみたい。
 エディオスさんノリノリでやる気満々。きっと退却したのは僕が怪我する事とかを気遣ってくれたんだろうね。

「ぐがぁああああああ‼︎」
「うひぃ⁉︎」

 なんかより一層獰猛になってる気がするぅう⁉︎
 僕からは距離があっても、魔獣は四つ足で駆けながらやって来たと思えば、エディオスさんの前に着くと前足を蹴って威嚇するように立ち上がった。
 エディオスさん怖くないのかなぁと心配になるけど、全然堪えてないでふ。むしろ、面白いおもちゃを見つけたかのように背中からオーラが出てるように見えるよ。

槐熊アシャグリーの個体に巡り会えるたぁ、良い肉になりそうだな?」

 あ、やっぱりこれ狩るんですね?
 んでもって、バーベキューの食材になるんですね!
 でも、熊さんのお肉って焼肉に向くかなぁ?   漬け込み用のタレとかも一応ファルミアさんと作ってきたけれど。
 僕は戦闘よりも、その後の調理工程に考えが逸れていく。だって僕料理人だからそれくらいしかお役に立てないし、目の前の戦闘風景を説明しようにエディオスさん速すぎて目で追えないんでふ。
 とにかく、ガキンガキンって鍔迫り合いが続く音しか聞こえない。

「結構やるなぁ、お前!」
「がるるるるるるっ!」

 エディオスさん、倒すどころか戦闘自体を楽しみまくってる。なんか心なしかアシャグリーって魔獣の方も同じような?   意気投合しちゃマズイでしょエディオスさん!   

「……何をしてるんだあれは」
「ぴょ⁉︎」

 この低くてよく通るお声は!
 肩を跳ね上がらせながら上を見れば、真っ黒な長髪にエディオスさんと同じような軽装姿のセヴィルさんが呆れながら肩を落としていた。
 いったいいつ着たんだろう?と思ってたら、彼が僕の頭に手を乗せた。

「怪我はないようだな?」
「エディオスさんに運んでいただいただけです」
「その袋は?」
「ちっちゃな林檎メロモを見つけたんで、エディオスさんが採ってくれました」
「なるほど……槐熊アシャグリーの狙いはそれだったかもしれないな?   ああ言った魔獣は基本雑食だからな」
「え」

 じゃあ、大人しく渡しちゃえば良かったかな?と口に出せば、セヴィルさんはゆっくり首を振った。

「いくらか匂いがついてるはずだ。あれはとにかく何でも・・・喰らう」
「おうふ」
「だが、その分肉の質は良い。あれくらいになれば、野営する場合ならこぞって取り合いになる程の極上品だろうな」
「ふぉお」

 思わず、エディオスさん頑張れと内心エールを送ったよ。
 だけど、苦戦してるかどうかわかんないけど未だ戦闘中。血は出てないから僕でもまだ見ていられる範囲内。

「……何を遊んでるんだ」

 またセヴィルさんは小さくため息を吐いた。
 どうやら、すぐに仕留めれるのをエディオスさんが『腕慣らし』と宣言したから準備運動するようにして魔獣の体力を削ってるみたい。
 見ててじれったくなったのか、セヴィルさんの額に青筋が立っていくように見えるよ……。

「エディオス!   刻限が限られているのだからさっさとしろ!」
「んだよ、ゼル。もうちぃっとくらいいいだろー?」

 本当に余裕そうにグリズリーの攻撃を躱しながらセヴィルさんの声に反応していた。
 ふむ、このままトレーニングしてストレス発散されるのもエディオスさんには必要かもしれないけど、あんまりお城から離れ過ぎてもいけない。僕も何か言おうっと。

「エディオスさーん、美味しい焼肉パーティ出来る時間短くなりますよー?」
「それはいかんなっ!」

 僕が出来るだけ大きな声で言うと同時に、エディオスさんは態勢を整えて魔獣に剣を振りかざした。
 その時に僕はセヴィルさんの大っきな手で視界を覆われたが、耳は無理だったのでザシュザシュっと剣が肉を裂く音は丸聞こえだった。でも、これくらいは映画なんかの効果音で聞き慣れてるから大丈夫……と思いたいけど、そこから解体するような生々しい音には腰が震えちゃいました。

「うっし、血抜きと骨も取ったし、肉と臓物は魔術袋クード・サップに入れたぜ。もうカティアが見ても平気だぞ」
「ふぇー……」

 セヴィルさんの手を外してもらっても、辺り一帯に広がってる血の臭いは半端ない。処理済みのお肉とかは時間が経ってるからあんまりしないけど、いかに贅沢な環境でいたか自覚しました。
 すると、セヴィルさんがエディオスさんの後ろにある骨や毛皮なんかのとこにまで歩いて行き、何をするかと思いきや手をスライドさせてそれらを炎で焼却処分しました。

「臭いで群がる可能性もある。灰にすれば問題なかろう」

 と言う言葉が終わる頃には、本当に灰だけになっちゃった。

「ところで、ゼルの方はどうだった?」
「空振りだ。おそらくだが、ここ一帯はこの槐熊アシャグリーの縄張りだったのかもな。サイノス達はかなり奥まで行ったようだが木の実や野草しか無理とかで戻っていった」
「んで、方向変えてこっちに来たのか?」
「それと途中アナにカティアが遅いと識札で知らせてきてな」
「ご、ごめんなさい」

 お手洗いと姫林檎の収穫だけのつもりが、魔獣遭遇のハプニングで戻れなくなったから皆さんにご心配おかけしちゃったよね。シュンとしていると、ぽんぽんとあったかい手が優しく髪を撫でてくれた。
 顔を上げると、手つきと同じくらい優しい表情のセヴィルさんが僕を見下ろしていた。

「無事ならいい」

 これにときめかないわけがないよね!
 心臓がばくばくで顔とか絶対真っ赤っかだ!

「おーい、俺はー?」
「お前は遊んでただけだろうが」
「ちゃんと肉獲っただろー?」

 従兄弟さんには遠慮なく一蹴されました。
 素敵微笑みがすぐに引っ込んだので、僕的にはホッ。
 とりあえず、お肉が調達出来たので時短も兼ねてセヴィルさんの転移魔法でキャンプ地に戻ります。









 ◆◇◆








 戻ったらたっくさんご心配おかけしてましたが、無事だったのと収穫内容に納得していただけたので早速調理開始!

「こーんな極上肉をお目にかかれるなんて久しぶりねぇ?」
「霜降りすっごいですね……」

 エディオスさん自ら解体してくださった熊肉。
 牛肉に勝るも劣らないくらいの高級霜降り肉でした。どの部位も調理次第ですっごく美味しく出来そうです。

「モツとかは四凶達が臭み消しと味付けをやってくれるし、魚はフィーとリースとサイノス。私達はこの肉をひたすらカットね」
「熊肉って、臭みすごくないですか?」
「この魔獣は血抜きしてあれば大丈夫よ。熟成させればより美味しいけど、今回はいいわ。焼肉ダレに漬け込むのと塩ダレと何もなしで分けましょう。カティアは漬け込みをお願い。私が切ってくから」
「はーい」

 分担が決まれば作業開始!
 他の方はと言うと、エディオスさんはファルミアさんに扱かれて木の枝下にロープで吊るされてます。理由は、僕の身の安全を確保出来ても遊び半分で狩りを長引かせたからと。
 これには全員一致して準備が出来るまであのままだそうです。本人堪えてないのか余裕そうに口笛吹いてますが。

「お野菜と果物を洗ってきましたわ」

 アナさんには出来る範囲だと水洗いしか出来なかったのでお願いしてました。セヴィルさんも同じで、護衛も兼ねて同行してくれてたよ。
 それからは、エディオスさんにこんこんとお説教してくださってるんで手隙にはならないです。

「ふゅゆー」

 クラウは僕がいなくなってからずっとしょんぼりしてたようで、頭から離れません。時々撫でてあげながら僕はトングでお肉をどんどん二種類のタレに漬け込んでいく。ただタレにお肉入れてるだけだけど。

「ふぅー、一頭分あるからなかなか減らないわね」
「そろそろ焼きに移ります?」
「そうね。時間もあまりないし、カティが持ってきてくれた姫林檎を焼くとかもしたいもの」
「あとはマシュマロサンドを!」
「欠かせないわ!」

 お肉が非常に多くあるので、半分以上をフィーさんの亜空間収納に入れておいていよいよ焼肉本番に!
 エディオスさんもちゃんと下ろしてから焼肉パーティを開始します。

「炭の具合もいいわ。さーて、焼くわよ!  フォークじゃかっこつかないけど、私とカティだけしか箸は使いないからしょうがないわね」

 箸の需要自体がこの世界じゃないようなので、仕方がないみたい。
 とにかく、ファルミアさんがトングで焼肉ダレの漬け込みから網に乗せれば、ジュワジュワっといい音がし出した!
 もちろん、僕も一緒に玉ねぎやニンジンにカボチャなどのバーベキュー定番の野菜を乗せてくよ。
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