44 / 84
2017年9月6日ーー風邪に効くのは甘~い純白?part1
しおりを挟む
「カティ、大変だわ!」
「ほぇ?」
いつものように文字の勉強とフィーさんに魔術を教わっていたら、いきなりファルミアさんがノックもなしに扉を開けてそう言いました。
「どうしたのミーア? そんな息切れて?」
「これが急がないわけがないでしょう……」
フィーさんの言うように、ファルミアさん珍しく血相を変えてこれまた凄い勢いで走ってきたのか息切れています。本当にどうしたのかな?
「…………ゼルが」
「「セヴィル(さん)が??」」
「風邪で倒れたのよ!」
「ええぇえ⁉︎」
病気知らずな感じのセヴィルさんが風邪で倒れた⁉︎
いやだって、朝ご飯の時は特に普通だったよ? どこにも風邪の兆候なんて見受けられなかったのに!
「……こりゃ季節外れの雪でも降る?」
「のんきにそんなこと言ってる場合じゃないですよフィーさん!」
お勉強なんかしてられない!
お見舞いに行かなきゃ!
「今お部屋ですか⁉︎」
「ええ、来てちょうだいな!」
まさか、こんな形でお部屋訪問するとは思わなかったよ!
◆◇◆
「…………わぁ」
ゆーっくりお部屋に入らせてもらえば、本当に顔が真っ赤で咳が止まらないセヴィルさんが大人しくベッドで寝てました。
側にはお医者さんみたいな綺麗な白髪のおじいさんが診断していて、隣にはカルテか何かに書き込んでいるお兄さんも一緒。多分、看護士さん的な人かな?
「……ふむ。疲労が溜まり過ぎて弱ってるところに、風邪花粉をどこかで吸い込んだかもしれませんな。治るまで絶対安静ですぞ」
「だ、だが……しつ、げほごほっ⁉︎」
「大人しく寝てろっての!」
「陛下、余計に煽ってはなりませぬ」
「あー、悪い」
そして何故かお仕事中のエディオスさんやほとんどの人が勢揃いされている。ただ、四凶さん達はいないけどね。
「こう言う時じゃなきゃ君は休めないから、医師が言うように安静にしてなよ?」
「で……出来る、か」
「ゼルお兄様、無茶を言われないでください」
「休んどけよ、こんな時は」
「やっぱりそう言うよねー? あ、カティ来たんだ。こっちおいで?」
「ぴ!」
「か、てぃあ……だと?」
ユティリウスさんが来い来いと手招きしてきたんだけど、セヴィルさんが無理に起き上がろうとしたんで行こうかどうか悩んだ。
多分、エディオスさん達があれだけ近くにいるから感染りはしないと思うけど、本人の性格からして感染るから近寄るなって言いそうなんだよね。今は看護士さんに無理矢理布団に戻されて咳き込んでるけど。
「だーいじょうぶだって、おいでおいで」
「は……はい」
クラウを抱っこしたままベッドまで向かい、ユティリウスさんのとこまで行くとお医者さんの隣に立たされた。
「おや、可愛らしいお嬢さんですな」
「えっと……カティアと言います」
「カティアちゃんとは名前も可愛らしい。ん? どこかで聞いたような……」
「先生、中層や下層に爆発的に広まった例のデザート考案者では? たしか、この年齢ほどで名前も同じはずです」
「あ、はい」
看護士のお兄さんの発言に僕はしっかり頷いた。ティラミスのおかげで僕も随分と有名人になっちゃったみたい。
「ほお、まさか誠にこのような幼い子が……いやはや、長生きするものじゃ」
「おい、クライス。くっちゃべってねぇでゼル優先だろ?」
「おお、そうでしたな。それにしては、閣下がいたく気にかけてらしたのが不思議になりましてな?」
「こいつは特別だ」
御名手だからと言うのはぜーったいに言えましぇん。あと異世界人とか成人してることとか。
「えっと……セヴィルさんの風邪って、感染ったりしませんか?」
「そうじゃな。この風邪はよくある風邪花粉の症状。一度吸い込めば体の中で花粉が死なぬ限り続くが、高熱が出なければごく普通の風邪と変わりない。花風邪よりは大人しめじゃから大丈夫じゃよ」
ああ、前に蜂蜜飴を作った時に盛大に流行りかけたあの風邪か。それよりはマシってことは、安静にしてれば問題なさそうだね。
「せっかくだから、カティに看病してもらえば?」
「は⁉︎ なっ……げ、げほごほごほっ‼︎」
ユティリウスさんが何故かそう言い出すと、セヴィルさんが咳き込みながら盛大に慌て出した。
「おや、この子の方が良いのですかな?」
「カティは特別ってエディも言ったでしょう? カティもそうしたいでしょ?」
「え、えっと……」
その方がいいかなぁとは思いもするけど、僕としてはセヴィルさんに精のつく料理を作らせてもらった方がとも思っていた。
それを告げると、ユティリウスさんが何故かにやりと口角を緩ませた。
「それだったら、カティにはミーアにフィーも一緒に『ロザラン』の実を取りに行ってもらった方がいいかも!」
「ああ、あれか?」
「ロザラン?」
実ってことは何かの果物かな?
「あの実ね? それなら風邪花粉の風邪でも一発で治るはずだわ」
「ほんとですか!」
安静にしてなきゃいけないのに変わりはないけど、辛いのがなくなるのなら僕は取りに行くのに異存はないよ!
「ふーん、あれねぇ。まあ、カティアが行く気満々だからね? いいよ、行こうか?」
「はい!」
「そうね」
「ユティリウス様、わたくしはいいんですか?」
「アナはゼルの仕事、手伝えるでしょ?」
「そうですわね」
「フィルザス神様がご一緒でしたら、儂は何も言いませぬ。ですが、道中お気をつけてください」
よーし、風邪薬取りに出発だ!
◆◇◆
「ところで、行くメンバーが何故この三人なんですか?」
クラウもいいらしく同行してるけど、フィーさん以外の男性陣が来られないのがちょっと不思議。
それらしい森の中に着いてからお二人に聞くと、フィーさんは珍しく苦い顔をされた。
「例のロザランが自生している聖域は、僕以外の男が禁止のとこだからね? 四凶達の性別も雄だから連れて来れないんだ。クラウはどっちでもないのと神獣だからいいけどね」
「男子禁制?」
「噂には聞いてたけど、フィーが言うなら本当のようね。たしか、乱獲を防ぐためにロザランを守護する聖獣をつけてるって言われてるけど、そうなの?」
「うん。あまりにも万能薬過ぎるから大昔こぞって取りまくるおバカな子達がいてね。なんで男を寄せ付けないようにしたかはわかんないけど、僕はそのおバカ達がほとんど男だったからとか思ってるよ」
「けど、女だって邪な者も少なくないわ」
「そうなんだけどねー?」
行ってみなければ、真実はわからないか。
だけど、ゆっくりしてる場合じゃないんだ。早く採ってセヴィルさんに食べさせてあげなきゃ!
「っと、この辺りからだね」
一度止まるように手で制されて、僕とファルミアさんも止まった。クラウはわからないからくりんと首を傾いでいたけどね。
「先触れも寄越してないけど、僕が来たのは距離があってもあの子達はわかってるはず。さて、ちょっと緊張感持って進もうか」
「はい」
ちょっぴり怖いけど、セヴィルさんのためにも引き下がるわけにはいかないもの。
「ほぇ?」
いつものように文字の勉強とフィーさんに魔術を教わっていたら、いきなりファルミアさんがノックもなしに扉を開けてそう言いました。
「どうしたのミーア? そんな息切れて?」
「これが急がないわけがないでしょう……」
フィーさんの言うように、ファルミアさん珍しく血相を変えてこれまた凄い勢いで走ってきたのか息切れています。本当にどうしたのかな?
「…………ゼルが」
「「セヴィル(さん)が??」」
「風邪で倒れたのよ!」
「ええぇえ⁉︎」
病気知らずな感じのセヴィルさんが風邪で倒れた⁉︎
いやだって、朝ご飯の時は特に普通だったよ? どこにも風邪の兆候なんて見受けられなかったのに!
「……こりゃ季節外れの雪でも降る?」
「のんきにそんなこと言ってる場合じゃないですよフィーさん!」
お勉強なんかしてられない!
お見舞いに行かなきゃ!
「今お部屋ですか⁉︎」
「ええ、来てちょうだいな!」
まさか、こんな形でお部屋訪問するとは思わなかったよ!
◆◇◆
「…………わぁ」
ゆーっくりお部屋に入らせてもらえば、本当に顔が真っ赤で咳が止まらないセヴィルさんが大人しくベッドで寝てました。
側にはお医者さんみたいな綺麗な白髪のおじいさんが診断していて、隣にはカルテか何かに書き込んでいるお兄さんも一緒。多分、看護士さん的な人かな?
「……ふむ。疲労が溜まり過ぎて弱ってるところに、風邪花粉をどこかで吸い込んだかもしれませんな。治るまで絶対安静ですぞ」
「だ、だが……しつ、げほごほっ⁉︎」
「大人しく寝てろっての!」
「陛下、余計に煽ってはなりませぬ」
「あー、悪い」
そして何故かお仕事中のエディオスさんやほとんどの人が勢揃いされている。ただ、四凶さん達はいないけどね。
「こう言う時じゃなきゃ君は休めないから、医師が言うように安静にしてなよ?」
「で……出来る、か」
「ゼルお兄様、無茶を言われないでください」
「休んどけよ、こんな時は」
「やっぱりそう言うよねー? あ、カティ来たんだ。こっちおいで?」
「ぴ!」
「か、てぃあ……だと?」
ユティリウスさんが来い来いと手招きしてきたんだけど、セヴィルさんが無理に起き上がろうとしたんで行こうかどうか悩んだ。
多分、エディオスさん達があれだけ近くにいるから感染りはしないと思うけど、本人の性格からして感染るから近寄るなって言いそうなんだよね。今は看護士さんに無理矢理布団に戻されて咳き込んでるけど。
「だーいじょうぶだって、おいでおいで」
「は……はい」
クラウを抱っこしたままベッドまで向かい、ユティリウスさんのとこまで行くとお医者さんの隣に立たされた。
「おや、可愛らしいお嬢さんですな」
「えっと……カティアと言います」
「カティアちゃんとは名前も可愛らしい。ん? どこかで聞いたような……」
「先生、中層や下層に爆発的に広まった例のデザート考案者では? たしか、この年齢ほどで名前も同じはずです」
「あ、はい」
看護士のお兄さんの発言に僕はしっかり頷いた。ティラミスのおかげで僕も随分と有名人になっちゃったみたい。
「ほお、まさか誠にこのような幼い子が……いやはや、長生きするものじゃ」
「おい、クライス。くっちゃべってねぇでゼル優先だろ?」
「おお、そうでしたな。それにしては、閣下がいたく気にかけてらしたのが不思議になりましてな?」
「こいつは特別だ」
御名手だからと言うのはぜーったいに言えましぇん。あと異世界人とか成人してることとか。
「えっと……セヴィルさんの風邪って、感染ったりしませんか?」
「そうじゃな。この風邪はよくある風邪花粉の症状。一度吸い込めば体の中で花粉が死なぬ限り続くが、高熱が出なければごく普通の風邪と変わりない。花風邪よりは大人しめじゃから大丈夫じゃよ」
ああ、前に蜂蜜飴を作った時に盛大に流行りかけたあの風邪か。それよりはマシってことは、安静にしてれば問題なさそうだね。
「せっかくだから、カティに看病してもらえば?」
「は⁉︎ なっ……げ、げほごほごほっ‼︎」
ユティリウスさんが何故かそう言い出すと、セヴィルさんが咳き込みながら盛大に慌て出した。
「おや、この子の方が良いのですかな?」
「カティは特別ってエディも言ったでしょう? カティもそうしたいでしょ?」
「え、えっと……」
その方がいいかなぁとは思いもするけど、僕としてはセヴィルさんに精のつく料理を作らせてもらった方がとも思っていた。
それを告げると、ユティリウスさんが何故かにやりと口角を緩ませた。
「それだったら、カティにはミーアにフィーも一緒に『ロザラン』の実を取りに行ってもらった方がいいかも!」
「ああ、あれか?」
「ロザラン?」
実ってことは何かの果物かな?
「あの実ね? それなら風邪花粉の風邪でも一発で治るはずだわ」
「ほんとですか!」
安静にしてなきゃいけないのに変わりはないけど、辛いのがなくなるのなら僕は取りに行くのに異存はないよ!
「ふーん、あれねぇ。まあ、カティアが行く気満々だからね? いいよ、行こうか?」
「はい!」
「そうね」
「ユティリウス様、わたくしはいいんですか?」
「アナはゼルの仕事、手伝えるでしょ?」
「そうですわね」
「フィルザス神様がご一緒でしたら、儂は何も言いませぬ。ですが、道中お気をつけてください」
よーし、風邪薬取りに出発だ!
◆◇◆
「ところで、行くメンバーが何故この三人なんですか?」
クラウもいいらしく同行してるけど、フィーさん以外の男性陣が来られないのがちょっと不思議。
それらしい森の中に着いてからお二人に聞くと、フィーさんは珍しく苦い顔をされた。
「例のロザランが自生している聖域は、僕以外の男が禁止のとこだからね? 四凶達の性別も雄だから連れて来れないんだ。クラウはどっちでもないのと神獣だからいいけどね」
「男子禁制?」
「噂には聞いてたけど、フィーが言うなら本当のようね。たしか、乱獲を防ぐためにロザランを守護する聖獣をつけてるって言われてるけど、そうなの?」
「うん。あまりにも万能薬過ぎるから大昔こぞって取りまくるおバカな子達がいてね。なんで男を寄せ付けないようにしたかはわかんないけど、僕はそのおバカ達がほとんど男だったからとか思ってるよ」
「けど、女だって邪な者も少なくないわ」
「そうなんだけどねー?」
行ってみなければ、真実はわからないか。
だけど、ゆっくりしてる場合じゃないんだ。早く採ってセヴィルさんに食べさせてあげなきゃ!
「っと、この辺りからだね」
一度止まるように手で制されて、僕とファルミアさんも止まった。クラウはわからないからくりんと首を傾いでいたけどね。
「先触れも寄越してないけど、僕が来たのは距離があってもあの子達はわかってるはず。さて、ちょっと緊張感持って進もうか」
「はい」
ちょっぴり怖いけど、セヴィルさんのためにも引き下がるわけにはいかないもの。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
139
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる