トリップしてきた元賢者は推し活に忙しい〜魔法提供は我が最推しへの貢物也〜

櫛田こころ

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第6話 ジオラマ撮影会?

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 マリアーノちゃんとの共同生活は決まったけど……恩人のアツシの願いを叶えるために、また召喚扉から彼んとこのクローゼットへ向かう。

 今度はすんなり入れたから、おや?とは思ったけど。くぐってみようとすれば、アツシから待てとの声が上がった。


「もうちょっと待ってくれ!! 今整頓すっから」


 なので、後ろにいるマリアーノちゃんは……何故か僕にぎゅっと抱きついてきたんだけど!? ホムンクルス体は体温がきちんとあるし、ほんわかと花の香りもするからときめいてしまうじゃないか!!?

 ドキドキしていると、マリアーノちゃんさらに手を伸ばして僕の手を掴んでスリスリしてきた?! 柔らかくてあったかいんだから!! 男の子なのに、本当に恋しちゃいそうだよ?!


「よし、いいぞ……って、は?? マリアーノが人間??」


 僕らの登場もだけど、マリアーノちゃんの変化を説明する前だったからね。人間でないことを告げれば、アツシは肩にいたナルディアの方に振り返って。


『俺? 出来なくないらしいよ? でも、このジオラマ内だと巨大化したら潰しちゃうし』


 さっきより砕けた言葉遣いはともかくとして。僕が魔力で刺激しただけなのに、そんなにも簡単に出来るものなのかな? 異世界とは言え、魔力じゃない力に満ちているからだろう。とりあえず、マリアーノちゃんはアツシの希望を叶えるべく元のねんどろいどになってから僕の手の上に乗った。


『素体はわたくしとナルディア。ソードマンとアサシンの対局はいかがでしょう?』
「え? 願ってもねぇ場面だけど……ナルはいいか?」
『問題ないよー? えーっと武器武器……あった。んじゃ、せっかくのセットを壊さない範囲で打ち合う?』
『いいですわよ?』


 紙とかで出来た、模擬闘技場の中にふたりは自然に入り。

 そこから、アツシは黒い箱をかしゃかしゃ動かして……二人が一礼をしたあとの模擬演舞(戦闘用)から最後のお辞儀まで、とにかくはしゃいでいるのか無言で箱を動かしているのが可愛かった。

 僕は僕で、負けとか勝ちはないけれど。推しのマリアーノちゃんが勇ましく可憐に避けたり苦無で剣と撃ち合う姿が……かっこいいし、胸がきゅんきゅんしちゃうよ!! あー、愛らしいのに勇ましさもあるだなんて!! 男の子だけど、ドキドキしちゃうよ!!!


「あー、やばい!! ナルとマリアーノの戦闘シーンを自分で好きに撮れるだなんて!! 可動域が限られているねんどろいどで出来るのやっば!!」


 少し気怠い雰囲気のアツシはもういないって感じだ。どうやら、好きなことはたくさんあるのに……お金と資材が足りないとかで色々諦めていたそうだ。

 僕も……生きることを結構諦めていたけど、そうじゃなくても意気消沈は誰にでもあるんだね?


『では次にですけれど。主さまとお買い物に行きたいですの。お金のご心配はありませんわ。成人体のわたくしとの逢引きをさせてくださいまし。その間、ナルディアとのお時間をお楽しみくださいませ』
「お、おぅ。……金大丈夫って、どっか当てあんの?」
『主さまのお荷物を少々拝見しまして。どうやらお金はあったのですが、こちらへの移動の際に『日本円』になりましたの』
「へー、おもろ。んじゃ、デートいってら」
『はい!!』
「で、デート……って」


 こんなおじさんと男の子でも見た目美少女がデート?? でも、本人が望んでいるのなら……いいのかな??

 なんか、アツシもナルディアがホムンクルス体になるのを早く見たいようだから……邪魔しちゃいけないしね。
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