名古屋錦町のあやかし料亭〜元あの世の獄卒猫の○○ごはん~

櫛田こころ

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雪女

第2話 河童の秘薬

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 河童の水藻みずもがいる診療所は、楽庵らくあんのすぐ上。

 楽庵の方は、電 気が点いていて客がいるかはわからないが火坑かきょうが……いるとわかると少しほっと出来た。凍傷になっている手はまだ痛痒いが、好きな相手に会わずとも気持ちが落ち着けるのはいい事だ。

 大人バージョンになった座敷童子の真穂まほに肩を借りながらビルの二階にある診療所に行くと、花菜はなな入り口を開けたらすぐに大声を出した。


「きゅ、急患です! お願いします!!」
「……どうされました?」


 水藻はすぐに出てきたので、真穂が美兎みうの代わりに容態を伝えてくれることになった。


「こっちのうっかり雪女のせいで、美兎の手が凍傷になりかけたのよ? 早く診てあげて?」
「雪女の肌に、人間が? 見せてください」


 花菜は雪女らしい。

 なら、あやかしの時の白で統一された見た目にも納得がいった。直接人間が彼女に触れたら、今の美兎のように凍傷のような状態になるのだろう。

 水藻がその状態になった美兎の手を見ると、『ありゃりゃ』と声を上げた。


「やばい?」
「いえ。まだ初期段階ですね? うちの秘薬を塗れば落ち着くでしょう」
「お、おおお、お金は払わせてください!!」
「それくらいしなさいよ? 真穂の加護があっても、皮膚接触で雪女の冷気に当たったら……こうなるもの」
「……本当に、すみません」
「ひとまず、湖沼こぬまさんを診療台に」


 真穂ひとりでは出来ないのと、水藻だと子供サイズの身長しかないため、以前担架でジェイクを運んだあの河童達が協力して美兎を奥の診療台に乗せてくれた。

 まだ痛痒いのは続いているが、横になれて少しだけほっとは出来た。


「院長、秘薬でやんす」
「ありがとう。……湖沼さん、少しひんやりしますが。我慢してください」
「……は、い」


 患部である利き手の方を触られると、さらに痒くなって掻きむしりたい気持ちになるが、すぐに終わるようなので我慢した。

 スーッと、ひんやりした塗り薬のようなのを塗られた途端、あれだけ痛痒い感覚が引いていく。何回か塗布されると、痒い感覚もなくなりゆっくりと目を開けることが出来た。


「美兎、落ち着いた?」


 真穂が声を掛けてきたので、彼女の方を見ると後ろでは花菜らしい黒髪の超絶美少女が顔色を青白くさせていた。

 色は違うが、先日楽養らくようで出会った白い美少女と同じ容姿だったので、すぐに一致することは出来た。


「大丈夫……もう痛くも痒くもないよ」
「そう。良かったわ」
「ほ、ほほほ、本当に……すみませんでした!!」


 花菜は床の上で綺麗に土下座を披露してくれたが、美少女にそんな事をさせるのはこちらは逆に申し訳ない気分になった。


「……だ、大丈夫、ですよ? ほら、治ったんですし?」
「け、けけけ、けど!? 人間が私みたいな雪のあやかしに触れてしまったら、下手すると死んでしまうかもしれないんです!!」
「え?」
「そうよ? 今回は軽く触れた程度でも秘薬が必要なくらいの凍傷になりかけたのよ? 美兎は逆に怒っていいんだから。人間界に行ってたのに、うっかりでも対策してなかったこいつが悪い!」


 と言って、まだ土下座をしていた花菜に真穂が強めのチョップをお見舞いしたのだった。


「とりあえず。一難は去りましたし、軽い凍傷程度で済んで良かったですよ。飲み薬や塗り薬などを重ねて使用することもない感じなので、このままお帰りいただいて大丈夫です」
「ありがとうございます」


 水藻に礼を言うと、『いえいえ』と首を横に振られた。子供みたいに可愛いが、やはり立派な医者だと美兎は改めて感心出来た。


「あの……お会計は?」


 花菜がチョップの痛みから落ち着くと、水藻の前に綺麗な黒いカードを差し出した。


「はい。秘薬を7g使用なので……三万程」
「カードで」
「毎度」
「さ、三万!?」
「河童の秘薬は結構値が張るのよ?」
「お、お気遣いなく……お金は余るくらいあるので」
「い、いや、そう言う意味じゃ!?」


 けれど、美兎が払うと言ってもあやかし一同は首を縦に振ることもなく。

 カードで支払った花菜から、さらにお詫びだとお茶を奢ると言われ。真穂には、彼女の親類縁者が営む喫茶店に行こうと提案されたため、楽庵には行けなかった。
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