56 / 204
雪女
第2話 河童の秘薬
しおりを挟む
河童の水藻がいる診療所は、楽庵のすぐ上。
楽庵の方は、電 気が点いていて客がいるかはわからないが火坑が……いるとわかると少しほっと出来た。凍傷になっている手はまだ痛痒いが、好きな相手に会わずとも気持ちが落ち着けるのはいい事だ。
大人バージョンになった座敷童子の真穂に肩を借りながらビルの二階にある診療所に行くと、花菜入り口を開けたらすぐに大声を出した。
「きゅ、急患です! お願いします!!」
「……どうされました?」
水藻はすぐに出てきたので、真穂が美兎の代わりに容態を伝えてくれることになった。
「こっちのうっかり雪女のせいで、美兎の手が凍傷になりかけたのよ? 早く診てあげて?」
「雪女の肌に、人間が? 見せてください」
花菜は雪女らしい。
なら、あやかしの時の白で統一された見た目にも納得がいった。直接人間が彼女に触れたら、今の美兎のように凍傷のような状態になるのだろう。
水藻がその状態になった美兎の手を見ると、『ありゃりゃ』と声を上げた。
「やばい?」
「いえ。まだ初期段階ですね? うちの秘薬を塗れば落ち着くでしょう」
「お、おおお、お金は払わせてください!!」
「それくらいしなさいよ? 真穂の加護があっても、皮膚接触で雪女の冷気に当たったら……こうなるもの」
「……本当に、すみません」
「ひとまず、湖沼さんを診療台に」
真穂ひとりでは出来ないのと、水藻だと子供サイズの身長しかないため、以前担架でジェイクを運んだあの河童達が協力して美兎を奥の診療台に乗せてくれた。
まだ痛痒いのは続いているが、横になれて少しだけほっとは出来た。
「院長、秘薬でやんす」
「ありがとう。……湖沼さん、少しひんやりしますが。我慢してください」
「……は、い」
患部である利き手の方を触られると、さらに痒くなって掻きむしりたい気持ちになるが、すぐに終わるようなので我慢した。
スーッと、ひんやりした塗り薬のようなのを塗られた途端、あれだけ痛痒い感覚が引いていく。何回か塗布されると、痒い感覚もなくなりゆっくりと目を開けることが出来た。
「美兎、落ち着いた?」
真穂が声を掛けてきたので、彼女の方を見ると後ろでは花菜らしい黒髪の超絶美少女が顔色を青白くさせていた。
色は違うが、先日楽養で出会った白い美少女と同じ容姿だったので、すぐに一致することは出来た。
「大丈夫……もう痛くも痒くもないよ」
「そう。良かったわ」
「ほ、ほほほ、本当に……すみませんでした!!」
花菜は床の上で綺麗に土下座を披露してくれたが、美少女にそんな事をさせるのはこちらは逆に申し訳ない気分になった。
「……だ、大丈夫、ですよ? ほら、治ったんですし?」
「け、けけけ、けど!? 人間が私みたいな雪のあやかしに触れてしまったら、下手すると死んでしまうかもしれないんです!!」
「え?」
「そうよ? 今回は軽く触れた程度でも秘薬が必要なくらいの凍傷になりかけたのよ? 美兎は逆に怒っていいんだから。人間界に行ってたのに、うっかりでも対策してなかったこいつが悪い!」
と言って、まだ土下座をしていた花菜に真穂が強めのチョップをお見舞いしたのだった。
「とりあえず。一難は去りましたし、軽い凍傷程度で済んで良かったですよ。飲み薬や塗り薬などを重ねて使用することもない感じなので、このままお帰りいただいて大丈夫です」
「ありがとうございます」
水藻に礼を言うと、『いえいえ』と首を横に振られた。子供みたいに可愛いが、やはり立派な医者だと美兎は改めて感心出来た。
「あの……お会計は?」
花菜がチョップの痛みから落ち着くと、水藻の前に綺麗な黒いカードを差し出した。
「はい。秘薬を7g使用なので……三万程」
「カードで」
「毎度」
「さ、三万!?」
「河童の秘薬は結構値が張るのよ?」
「お、お気遣いなく……お金は余るくらいあるので」
「い、いや、そう言う意味じゃ!?」
けれど、美兎が払うと言ってもあやかし一同は首を縦に振ることもなく。
カードで支払った花菜から、さらにお詫びだとお茶を奢ると言われ。真穂には、彼女の親類縁者が営む喫茶店に行こうと提案されたため、楽庵には行けなかった。
楽庵の方は、電 気が点いていて客がいるかはわからないが火坑が……いるとわかると少しほっと出来た。凍傷になっている手はまだ痛痒いが、好きな相手に会わずとも気持ちが落ち着けるのはいい事だ。
大人バージョンになった座敷童子の真穂に肩を借りながらビルの二階にある診療所に行くと、花菜入り口を開けたらすぐに大声を出した。
「きゅ、急患です! お願いします!!」
「……どうされました?」
水藻はすぐに出てきたので、真穂が美兎の代わりに容態を伝えてくれることになった。
「こっちのうっかり雪女のせいで、美兎の手が凍傷になりかけたのよ? 早く診てあげて?」
「雪女の肌に、人間が? 見せてください」
花菜は雪女らしい。
なら、あやかしの時の白で統一された見た目にも納得がいった。直接人間が彼女に触れたら、今の美兎のように凍傷のような状態になるのだろう。
水藻がその状態になった美兎の手を見ると、『ありゃりゃ』と声を上げた。
「やばい?」
「いえ。まだ初期段階ですね? うちの秘薬を塗れば落ち着くでしょう」
「お、おおお、お金は払わせてください!!」
「それくらいしなさいよ? 真穂の加護があっても、皮膚接触で雪女の冷気に当たったら……こうなるもの」
「……本当に、すみません」
「ひとまず、湖沼さんを診療台に」
真穂ひとりでは出来ないのと、水藻だと子供サイズの身長しかないため、以前担架でジェイクを運んだあの河童達が協力して美兎を奥の診療台に乗せてくれた。
まだ痛痒いのは続いているが、横になれて少しだけほっとは出来た。
「院長、秘薬でやんす」
「ありがとう。……湖沼さん、少しひんやりしますが。我慢してください」
「……は、い」
患部である利き手の方を触られると、さらに痒くなって掻きむしりたい気持ちになるが、すぐに終わるようなので我慢した。
スーッと、ひんやりした塗り薬のようなのを塗られた途端、あれだけ痛痒い感覚が引いていく。何回か塗布されると、痒い感覚もなくなりゆっくりと目を開けることが出来た。
「美兎、落ち着いた?」
真穂が声を掛けてきたので、彼女の方を見ると後ろでは花菜らしい黒髪の超絶美少女が顔色を青白くさせていた。
色は違うが、先日楽養で出会った白い美少女と同じ容姿だったので、すぐに一致することは出来た。
「大丈夫……もう痛くも痒くもないよ」
「そう。良かったわ」
「ほ、ほほほ、本当に……すみませんでした!!」
花菜は床の上で綺麗に土下座を披露してくれたが、美少女にそんな事をさせるのはこちらは逆に申し訳ない気分になった。
「……だ、大丈夫、ですよ? ほら、治ったんですし?」
「け、けけけ、けど!? 人間が私みたいな雪のあやかしに触れてしまったら、下手すると死んでしまうかもしれないんです!!」
「え?」
「そうよ? 今回は軽く触れた程度でも秘薬が必要なくらいの凍傷になりかけたのよ? 美兎は逆に怒っていいんだから。人間界に行ってたのに、うっかりでも対策してなかったこいつが悪い!」
と言って、まだ土下座をしていた花菜に真穂が強めのチョップをお見舞いしたのだった。
「とりあえず。一難は去りましたし、軽い凍傷程度で済んで良かったですよ。飲み薬や塗り薬などを重ねて使用することもない感じなので、このままお帰りいただいて大丈夫です」
「ありがとうございます」
水藻に礼を言うと、『いえいえ』と首を横に振られた。子供みたいに可愛いが、やはり立派な医者だと美兎は改めて感心出来た。
「あの……お会計は?」
花菜がチョップの痛みから落ち着くと、水藻の前に綺麗な黒いカードを差し出した。
「はい。秘薬を7g使用なので……三万程」
「カードで」
「毎度」
「さ、三万!?」
「河童の秘薬は結構値が張るのよ?」
「お、お気遣いなく……お金は余るくらいあるので」
「い、いや、そう言う意味じゃ!?」
けれど、美兎が払うと言ってもあやかし一同は首を縦に振ることもなく。
カードで支払った花菜から、さらにお詫びだとお茶を奢ると言われ。真穂には、彼女の親類縁者が営む喫茶店に行こうと提案されたため、楽庵には行けなかった。
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる