143 / 204
雪女 弐
第5話『時期外れの牡丹鍋』
しおりを挟む
真穂は海峰斗を迎えに行くと、界隈の途中で別れ……美兎は単身で楽庵に向かう。
途中、あちこちのあやかし達に挨拶していると……久しぶりの顔ぶれと出会えたのだ。
「ジェイクさん?」
「美兎さん……!」
楽庵の手前で、吸血鬼のジェイクと出会えた。去年の暮れ以降だからか、そこそこ久しぶりである。そして、彼はひとりではなかった。
「……お知り合い?」
青い髪の美少女。
としか言えないくらい、真穂や雪女の花菜に勝るとも劣らないくらいの、あやかしの美少女が隣にいたのだ。
「! ああ、ハナ。彼女が以前僕を助けてくれた恩人の湖沼美兎さんだよ」
「! じゃあ」
「うん。で、さっきのお店の大将さんの恋人さんだよ」
随分と、親しい間柄のようだ。と言うよりも、ジェイクが彼女に話す表情が生き生きとしている感じがする。もしや、と思うとハナと呼ばれたあやかしが美兎にお辞儀をしてきた。
「はじめまして、吸血鬼の天宮花恵です。その……ジェイクさんとはつい先日から、お付き合いさせていただいて、います」
「あら」
美兎の知らない間に、同じ種族のあやかしとお付き合いをしていたとは。だから、ジェイクの表情が明るいのも納得が出来た。
(日本人? の吸血鬼さんもいるんだ……?)
あやかし知識に足を少し突っ込んだ程度の美兎が聞くべきではないけれど。
とりあえず、ふたりにはまた会おうと約束してから美兎は楽庵に行った。到着すると、入り口に猫人が待ってくれていた。
「火坑さん!」
「いらっしゃいませ、美兎さん」
どうしたのかと首を傾げると、火坑はふふっと涼しい笑顔になったのだ。
「火坑さん?」
「いえ。この後は貸切にしましたので、外で美兎さんを待っていたんです」
「え? わざわざ?」
「先程、ジェイクさん達とお会いしたようですね? あの方々で今日の営業自体は終わりです」
だから、思う存分ご馳走をすると彼は招き入れてくれた。店に入ると赤味噌のいい香りが、中で充満していたのだ。カウンターに座ると、すぐに火坑がいつものように梅酒のお湯割りを出してくれた。
「ありがとうございます」
「さ、今からは僕らだけです。美兎さんには時期外れではありますが、牡丹鍋をご馳走させてください」
「……ぼたん鍋?」
「ジビエ料理ですよ。猪肉の味噌鍋ですね? 狩猟時期に仕入れたものを冷凍してたんですよ。是非、ゆっくり出来る時に美兎さんに召し上がっていただきたくて」
と言って、以前の時のようにカウンターにカセットコンロと鍋をセッティングしてくれた。大皿には、脂身の凄い綺麗な豚肉にも見える猪肉。野菜もたっぷりで、これから煮ていくのが楽しみになってきた。
「あ、火坑さん」
先に、彼の妹弟子から手解きを受けたマフラーを渡せば……水色の瞳を丸くしてくれたが、嬉しそうに包みを開けてくれた。
「……素敵なマフラーですね」
素敵なのは、笑顔全開な火坑の方だ。おまけに、何故か響也の姿になってマフラーを巻いてくれたのだから、余計に笑顔が眩しい。
その後、牡丹鍋をシメの雑炊まで堪能し……実は火坑からも赤鬼の隆輝に習ったと言うラングドシャと一緒に……こちらも花菜から手解きを受けたオフホワイトの模様編みが美しいマフラーをもらったのだ。
ふたりでそれぞれのマフラーを見につけたら、火坑のマンションでお泊まりデートをすることになり……社会人一年目の素敵な節目となった。
途中、あちこちのあやかし達に挨拶していると……久しぶりの顔ぶれと出会えたのだ。
「ジェイクさん?」
「美兎さん……!」
楽庵の手前で、吸血鬼のジェイクと出会えた。去年の暮れ以降だからか、そこそこ久しぶりである。そして、彼はひとりではなかった。
「……お知り合い?」
青い髪の美少女。
としか言えないくらい、真穂や雪女の花菜に勝るとも劣らないくらいの、あやかしの美少女が隣にいたのだ。
「! ああ、ハナ。彼女が以前僕を助けてくれた恩人の湖沼美兎さんだよ」
「! じゃあ」
「うん。で、さっきのお店の大将さんの恋人さんだよ」
随分と、親しい間柄のようだ。と言うよりも、ジェイクが彼女に話す表情が生き生きとしている感じがする。もしや、と思うとハナと呼ばれたあやかしが美兎にお辞儀をしてきた。
「はじめまして、吸血鬼の天宮花恵です。その……ジェイクさんとはつい先日から、お付き合いさせていただいて、います」
「あら」
美兎の知らない間に、同じ種族のあやかしとお付き合いをしていたとは。だから、ジェイクの表情が明るいのも納得が出来た。
(日本人? の吸血鬼さんもいるんだ……?)
あやかし知識に足を少し突っ込んだ程度の美兎が聞くべきではないけれど。
とりあえず、ふたりにはまた会おうと約束してから美兎は楽庵に行った。到着すると、入り口に猫人が待ってくれていた。
「火坑さん!」
「いらっしゃいませ、美兎さん」
どうしたのかと首を傾げると、火坑はふふっと涼しい笑顔になったのだ。
「火坑さん?」
「いえ。この後は貸切にしましたので、外で美兎さんを待っていたんです」
「え? わざわざ?」
「先程、ジェイクさん達とお会いしたようですね? あの方々で今日の営業自体は終わりです」
だから、思う存分ご馳走をすると彼は招き入れてくれた。店に入ると赤味噌のいい香りが、中で充満していたのだ。カウンターに座ると、すぐに火坑がいつものように梅酒のお湯割りを出してくれた。
「ありがとうございます」
「さ、今からは僕らだけです。美兎さんには時期外れではありますが、牡丹鍋をご馳走させてください」
「……ぼたん鍋?」
「ジビエ料理ですよ。猪肉の味噌鍋ですね? 狩猟時期に仕入れたものを冷凍してたんですよ。是非、ゆっくり出来る時に美兎さんに召し上がっていただきたくて」
と言って、以前の時のようにカウンターにカセットコンロと鍋をセッティングしてくれた。大皿には、脂身の凄い綺麗な豚肉にも見える猪肉。野菜もたっぷりで、これから煮ていくのが楽しみになってきた。
「あ、火坑さん」
先に、彼の妹弟子から手解きを受けたマフラーを渡せば……水色の瞳を丸くしてくれたが、嬉しそうに包みを開けてくれた。
「……素敵なマフラーですね」
素敵なのは、笑顔全開な火坑の方だ。おまけに、何故か響也の姿になってマフラーを巻いてくれたのだから、余計に笑顔が眩しい。
その後、牡丹鍋をシメの雑炊まで堪能し……実は火坑からも赤鬼の隆輝に習ったと言うラングドシャと一緒に……こちらも花菜から手解きを受けたオフホワイトの模様編みが美しいマフラーをもらったのだ。
ふたりでそれぞれのマフラーを見につけたら、火坑のマンションでお泊まりデートをすることになり……社会人一年目の素敵な節目となった。
0
あなたにおすすめの小説
呪われた少女の秘された寵愛婚―盈月―
くろのあずさ
キャラ文芸
異常存在(マレビト)と呼ばれる人にあらざる者たちが境界が曖昧な世界。甚大な被害を被る人々の平和と安寧を守るため、軍は組織されたのだと噂されていた。
「無駄とはなんだ。お前があまりにも妻としての自覚が足らないから、思い出させてやっているのだろう」
「それは……しょうがありません」
だって私は――
「どんな姿でも関係ない。私の妻はお前だけだ」
相応しくない。私は彼のそばにいるべきではないのに――。
「私も……あなた様の、旦那様のそばにいたいです」
この身で願ってもかまわないの?
呪われた少女の孤独は秘された寵愛婚の中で溶かされる
2025.12.6
盈月(えいげつ)……新月から満月に向かって次第に円くなっていく間の月
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
後宮の手かざし皇后〜盲目のお飾り皇后が持つ波動の力〜
二位関りをん
キャラ文芸
龍の国の若き皇帝・浩明に5大名家の娘である美華が皇后として嫁いできた。しかし美華は病により目が見えなくなっていた。
そんな美華を冷たくあしらう浩明。婚儀の夜、美華の目の前で彼女付きの女官が心臓発作に倒れてしまう。
その時。美華は慌てること無く駆け寄り、女官に手をかざすと女官は元気になる。
どうも美華には不思議な力があるようで…?
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる