名古屋錦町のあやかし料亭〜元あの世の獄卒猫の○○ごはん~

櫛田こころ

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閻魔大王 弐

第2話 名古屋のお菓子②

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 愛知……もとい、名古屋では小倉トースト並みに馴染みのあるお菓子だった。

 見た目はビスケットだが、普通のビスケットよりも厚みがあり、少し小豆色が目立つ。コンビニなどで手に入るのはそれがほとんど。

 製菓会社の方だと、近年の流行などに合わせて多彩なしるこサンドがあるらしいが……美兎みうはメジャーの味しか知らない。それでも十分に美味しいからだ。


「んん~!!」


 パソコンと向き合って、途中途中にそのしるこサンドを口に入れる。

 ザクザクとしたビスケット生地は言うまでもなく、お汁粉程とまではいかないが……小豆の風味に加えて砂糖の甘さが強い。

 初回の人間には不思議な味に思うだろうが、美兎は嫌いじゃなかった。

 真衣まいと今朝コンビニで会わなければ、このお菓子を手にはしなかった。県民性と言うか、ひとり暮らしを始めて二年目になって、久しく口にしていなかったのだ。

 今朝のおはぎ欲は満たされていないが、これはこれで悪くない。炭水化物が多少は軽減……されていると思って。

 それに、手軽に食べられるのでおはぎのように重たくはないのだ。


「あら、湖沼こぬまちゃん。懐かしいもの食べているわね?」


 後ろに来たのは、社会人としてもあやかしとの交際についても先輩である沓木くつきだった。


「真衣ちゃんと今朝コンビニで一緒になって……その時に見つけたんです」
「子供の頃は、ちょくちょく食べていたわ」


 沓木にもひとつ渡せば、すぐに食べてくれた。ザクザクと楽しい音が聞こえ、ついつい美兎ももう一個食べてしまう。

 その甘さと食感がクセになると、沓木にもひとつ渡してからそれぞれ仕事に戻った。

 秋の広告の下準備を任されている美兎は、去年の紅葉狩りピクニックをなんとなく思い出した。あの頃は、まだ火坑かきょうへの想いを隠して、沓木らとお弁当を囲むのを楽しんだ。

 初対面以上の美貌の青年に化けた、火坑が『内緒です』と告げた時の微笑みが素敵過ぎて、胸が熱くなった覚えがある。

 それから付き合うまで多少時間がかかったが、今日は会えるのだ。恋人と言うよりも、店の大将と客としてだが。


「美兎っち~!」


 あと少しで昼休みになると言うところで、田城たしろが興奮気味な様子でこちらにやってきた。


「どうしたの??」
真穂まほちゃん! 真穂ちゃんが記事に!!」
「え?」


 いまいち、言葉の脈絡がわからないが……田城のスマホを見せてもらうと、たしかに人間バージョンの真穂がネットニュースに載っていたのだ。


『デビュー作、待望の映像化!』


 と言う書き出しの下に、美女姿の真穂が妖しく微笑んでいた。

 これはビックニュースだと、影にいるかわからなかったのでLIMEで彼女へ連絡してみた。すると、すぐに既読が付いて返事も来た。


『今日、大将のとこで言うつもりだったのにー』


 拗ねたような返事とともに、ふくれっ面の可愛いらしいキャラクターのスタンプが来たのだ。
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