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第138話 優しい子だから

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 鏡羅ミラが、泣いとる。

 まどろみから起き上がり、俺は何故かそう思ってミラの顔を覗いてみれば……ほんまに、泣いとったんや。

 嗚咽もなく、ただただ静かに。


「……ミラ? 大丈夫か?」


 起きはしなかったが、なんだか俺まで悲しくなって……気づいたら、涙があふれてきた。

 ミラと共鳴でもしたんか?

 むちゃんこ、胸の奥が苦しくなって……心臓を掴まれたような悲しさが伝わってくる。

 ミラに涙が落ちても、ミラはなかなか起きなかった。

 何かあったのか……夢の中に入ろうかと考えた時に。

 ミラが……ゆっくりと、目を開けたんや。


「……ハ、ク……様?」

「……大丈夫か? ミラ」


 ミラが俺の言葉に頷いてくれたら……ゆっくりと身体を抱きしめてやった。


 今必要なんは……多分、言葉やない。

 気遣いでも……こう言う触れ合いやと思う。

 俺もまだ泣いとったけど、ミラを落ち着かせるのに……服が濡れるのを気にせず、抱きしめて背をさすってやった。

 ミラは、何度か頷いて……しばらくしたら、嗚咽を漏らしながら泣き出した。


「……た、し……あ……そ、こが」


 何を紡げばいいかわからんようやけど。俺は……なんとなく、わかってしもうた。

 ミラも大精霊になったんや……自分が意識せんでも、『何か』を見てしまった。夢の中で。

 それが……俺とかが水鏡で見てしもうた故郷の姿かもしれん。

 無意識か、神の導きか……どちらにしても辛いはずや。

 知って、ここまで泣くのも無理ない。

 自分を痛めつけてきた相手達が居たとは言え……故郷を潰されてしもうたんや。

 ミラの両親は天上界に行っても……辛くないわけ、ないんや。


(……ミラは、特別優しい子や)


 大精霊となり、足りない知識などが補填されても。

 元の優しい性格はそのままの『ミラ』やから。

 俺は自分の涙が落ち着いてからは、ミラの背をゆっくりとさすり続け……彼女が泣き止んでからは、ミラが夢路で見た出来事を教えてもろうた。

 神の導きにより……今の故郷を見てきたと。

 あれだけ酷い目に遭っても……やっぱり、故郷がなくなったのが哀しく感じてしまったとも。


「……まだ、完全には大精霊になれず」

「そんな事あらへんよ? ミラはええ子や」

「……ありがとうございます」


 忘れるようにするとは自分で口にしても。

 いきなり……そんな故郷の様子を知ったら、無理なことは当然や。

 俺が……この里で、魔力が飢えた数日前ん時も……そう思ったくらいや。

 だからこそ……今を大事に過ごせば良い。

 そう告げてから、俺はミラをまた優しく抱きしめた。
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