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騎士のまかない⑤

第4話 屈強な店長

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 ジェイシリアの市場から離れて中心部に向かうと、人混みはさらに増えていくのでイツキがはぐれないように俺の腕にしがみつくように言った。

 彼女もはぐれるのは嫌だと言うように、ぎゅっとしがみつくのがいじらしく見えた。この女性は俺のものだと。その逆も然り。

 だから、目が合うと互いに笑い合った。

 そして目的である店に到着すると、その店の装いにイツキは感心したかのようなため息を漏らした。


「可愛い……!」


 彼女がそう口にするくらい、たしかに可愛らしい外観の店だった。ピンクと白をメインに、女性が好むような色合いの店構え。

 今日の目的がこの店でなかったら、とてもではないが俺はひとりでは来られない。すべては、イツキのためだ。


「ここで服を調達しよう」

「え? 服屋さん……わ、私お金は」

「良いんだ。俺の給与は隊長ほどではないが、腐るほどある。むしろ、大切な女性のために使わせて欲しい」

「あ……ありがとう、ございます」


 そんな照れた表情も非常に愛らしくて、抱きしめたい気持ちになったが我慢した。ひとまず、中に入ろうと扉を開けた途端……!?


「聞こえてたわよーん!? アーニー!!」


 少々野太い声が聞こえてきた途端、俺はイツキを離れさせて……俺だけがその声の主に捕まった。


「何よ何よん!? いっちょまえの男の発言だなんて!? あたし、感激しそうになったわん!!」

「…………やめてくれ!? エマ!!」

「相変わらず可愛い顔してんのに、愛想悪いわね??」

「お前は異常だ!!」


 とりあえず、離してもらってイツキの方を見るとポカーンと口を開けていたのだった。


「あらやだ。スタイル抜群の女の子じゃなぁい!? この子があんたの彼女??」

「……ああ。事前に伝えた女性だ」

「んま! こんな可愛い子を男装だなんて……けどまあ、すんごいお胸ね?? 下着は窮屈そうだし、うちの一番大きいので大丈夫か怪しいわ~?」

「!? そうなのか、イツキ?」

「あ……はい」


 女性の下着事情については男の俺では詳しくないから、無理もない。だが、時々息を吐いていたような気がしたので、苦しかったかもしれない。サフィア殿も急いで用意したから、急拵えだったのだろう。


「んじゃ、うちの精鋭部隊が……まずはお嬢さんの下着から取り揃えるわん。あ、あたしはエマよん?」

「イツキ……と言います」

「エイペック様の養女だって聞いてるわ!! お金の心配はアーニーがいるから大丈夫よん? 色々見繕って、あ・げ・る!!」

「こう見えて、こいつは女だから変に気を遣わなくていい」

「え、女性?」

「んふふ~?」


 エマは服装を除けば、屈強な戦士に見えなくもないが……実際は女なのである。少しだけ心配ではあるが、俺は普段着や料理人用の服を見ていると言い、イツキをエマに任せることにした。

 まだ、そう言う関係でもないのに、いきなり下着など見れない!!?
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