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騎士のまかない⑳
第1話 再認識
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寒さがまた一段と近づいてくる季節となった。
イツキや俺の誕生月である円月が近づいてきた頃……イツキがまかないでも面白い試みをしようと俺を呼んでくれた。
「ずばり、『飲めるハンバーグ』を作ってみようかと」
「…………待ってくれ、イツキ」
とんでもない言葉が聞こえたと思うのは、俺の気のせいじゃないと思う!!
「はい?」
「ハンバーグは……食べるものでは?」
「はい」
わかっているはずなのに、イツキは自分が特殊な話題を持ちかけたことを疑問に思っていないようだ。
「あんな肉の塊を……飲む?」
フェブラム大陸を含む……こちらの世界とイツキが以前住んでいた世界には……食事に関しては色々共通点が多い。食事はほとんど同じ言葉は多いが、食材については用途は同じでも呼び名が違うとか。
ハンバーグについても、それは同じだった。
「ふふ。あくまでたとえですよ? それくらい柔らかくて喉越しが良いハンバーグなんです」
「…………なるほど」
イツキがイージアス城に来るまでは、ハンバーグはあっても…………フルコースの残飯時代はかたくて食べにくいハンバーグが並んでいた。
フルコースが撤廃されてからは……食堂でも、ほとんど出来立てのものが食べられるようになったが。あれでも十分に美味いのに……それよりも美味い??
理解出来ると、俺でも物凄く興味が湧いてきた。
「興味出てきました?」
俺の顔を見てわかっただろうに、俺の可愛い恋人は嬉しそうに聞いてくれた。これに頷けない男が居るわけがない。
「ああ。頼めるか?」
「少しだけ待っていてください。準備はほとんど出来ていますので」
交際を始めて……そろそろ二年近くは経つが。
イツキは相変わらず俺には敬語であるし、他の誰にでも丁寧な物腰を崩すことはないらしい。ある意味同郷でいらっしゃる、リュシアーノ王女殿下にもそれは同じだそうだ。
部下のひとりであるミュラーにも聞いたが、あれの友人にもなった料理人勤めでは先輩であるエリオと言う男にも敬語らしい。殿下やレクサスの恋人であるサフィア殿以外……男との交友は多いが、あくまでイツキはひとりの人間として接しているそうだ。
俺の婚約者だと言うのは、城内では誰もが知っているから……つけ入ろうと言う馬鹿な輩はいないように思われるが。殿下と隊長の件もあったので油断出来ない。
「……イツキ」
「はい? なんでしょう、アーネストさん?」
油断は禁物ではあるが……彼女の周りには元冒険者で、養父でもあるワルシュ料理長もいるのだ。下手に手出しすれば、地獄に堕とされるとわかる人間が多いはず。
だけど、それ以外の部分では……と、俺はイツキに近づき、手元が調理台から離れてからこちらを振り向くように顎に手を添えた。
「……こちらを」
ほんの一瞬だけだが……久しぶりに唇を重ねた。
相変わらず柔らかくて、いつまでも重ねていたいが。この後のまかないを食すこともあるので我慢をした。
「……び…………っくり、しました……!?」
そして、愛玩用の魔物の瞳のように……茶の目を丸くする姿も愛らしい。
俺は少し笑ってから、今度は額に口づけを贈った。
「すまない。イツキが楽しそうだったから……我慢出来なかった」
「……火を扱ってなくて良かったです」
「すまない。それは考えたが」
「もう……」
少し拗ねる様子のイツキも愛らしいと思うほど……俺はこの女性に心底惚れているのを再認識させられた。
イツキや俺の誕生月である円月が近づいてきた頃……イツキがまかないでも面白い試みをしようと俺を呼んでくれた。
「ずばり、『飲めるハンバーグ』を作ってみようかと」
「…………待ってくれ、イツキ」
とんでもない言葉が聞こえたと思うのは、俺の気のせいじゃないと思う!!
「はい?」
「ハンバーグは……食べるものでは?」
「はい」
わかっているはずなのに、イツキは自分が特殊な話題を持ちかけたことを疑問に思っていないようだ。
「あんな肉の塊を……飲む?」
フェブラム大陸を含む……こちらの世界とイツキが以前住んでいた世界には……食事に関しては色々共通点が多い。食事はほとんど同じ言葉は多いが、食材については用途は同じでも呼び名が違うとか。
ハンバーグについても、それは同じだった。
「ふふ。あくまでたとえですよ? それくらい柔らかくて喉越しが良いハンバーグなんです」
「…………なるほど」
イツキがイージアス城に来るまでは、ハンバーグはあっても…………フルコースの残飯時代はかたくて食べにくいハンバーグが並んでいた。
フルコースが撤廃されてからは……食堂でも、ほとんど出来立てのものが食べられるようになったが。あれでも十分に美味いのに……それよりも美味い??
理解出来ると、俺でも物凄く興味が湧いてきた。
「興味出てきました?」
俺の顔を見てわかっただろうに、俺の可愛い恋人は嬉しそうに聞いてくれた。これに頷けない男が居るわけがない。
「ああ。頼めるか?」
「少しだけ待っていてください。準備はほとんど出来ていますので」
交際を始めて……そろそろ二年近くは経つが。
イツキは相変わらず俺には敬語であるし、他の誰にでも丁寧な物腰を崩すことはないらしい。ある意味同郷でいらっしゃる、リュシアーノ王女殿下にもそれは同じだそうだ。
部下のひとりであるミュラーにも聞いたが、あれの友人にもなった料理人勤めでは先輩であるエリオと言う男にも敬語らしい。殿下やレクサスの恋人であるサフィア殿以外……男との交友は多いが、あくまでイツキはひとりの人間として接しているそうだ。
俺の婚約者だと言うのは、城内では誰もが知っているから……つけ入ろうと言う馬鹿な輩はいないように思われるが。殿下と隊長の件もあったので油断出来ない。
「……イツキ」
「はい? なんでしょう、アーネストさん?」
油断は禁物ではあるが……彼女の周りには元冒険者で、養父でもあるワルシュ料理長もいるのだ。下手に手出しすれば、地獄に堕とされるとわかる人間が多いはず。
だけど、それ以外の部分では……と、俺はイツキに近づき、手元が調理台から離れてからこちらを振り向くように顎に手を添えた。
「……こちらを」
ほんの一瞬だけだが……久しぶりに唇を重ねた。
相変わらず柔らかくて、いつまでも重ねていたいが。この後のまかないを食すこともあるので我慢をした。
「……び…………っくり、しました……!?」
そして、愛玩用の魔物の瞳のように……茶の目を丸くする姿も愛らしい。
俺は少し笑ってから、今度は額に口づけを贈った。
「すまない。イツキが楽しそうだったから……我慢出来なかった」
「……火を扱ってなくて良かったです」
「すまない。それは考えたが」
「もう……」
少し拗ねる様子のイツキも愛らしいと思うほど……俺はこの女性に心底惚れているのを再認識させられた。
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