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番外編

第147話『夫が作るズボラ飯』①

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 玉ねぎはソースの材料のひとつ。

 分厚く切るのではなく、ゆっくりでいいから薄くスライスというものにしていく。

 他にもニンニクは細かく刻み、キルトには頼んでいたトマトの皮の湯むきや潰しをしてもらった。これらに塩胡椒やコンソメが加われば、材料はほぼ揃う。大事なチーズはもちろん忘れないとも。


「油を敷いて、ニンニクの香りが立つまで焦がさないように炒めて……」


 次に玉ねぎを少し透明になるまで炒めて。そこに潰したトマトを加え、ヘラでさらに潰しながらかき混ぜていく。

 イツキが城にいた頃は大量に仕込んでいたので、手で潰していたらしいが……熱くないのか心配になったが入れたばかりなら大丈夫だと俺もようやくわかった。今回は少量なのでそのようなことはしないが。

 ある程度潰れたら、計っておいた調味料を入れ……しばらく待つしかない。ソース作りもだが、ここは時間がかかるので仕様がないのだ。

 この間に、リーゾを炊くことにした。冷めたものでもいいらしいが、あいにく厨房になかったらしい。時間潰しも兼ねて、俺はすぐに取り掛かる。今回はつけ置きもきちんとしようと丁寧に下ごしらえしたのだが……何故かキルトが後ろでメモをしていたのだ。


「……キルト?」

「あ、いえ。奥様の調理技術ももちろん素晴らしいのですが、旦那様もなかなかのものです」

「簡単なものしか出来んがな。イツキが言うには、これらの料理は手抜きらしい」

「……この手間があるのに?」

「逆に残っていた材料であれば、すぐ出来るものらしい」


 俺も、イツキと出会うまでそこはよく知らなかった。知らなかったからこそ、巡り会えることが出来たのだ。神がイツキをこちらの世界に連れてこられ……ワルシュ義父上の縁が繋がらなければ、俺は今もう独り身だっただろう。


「……リーゾとソースが出来れば、あとは粥のようにするのですか?」


 どちらも出来上がった頃に、またキルトが尋ねてきたので俺は頷いた。


「ここに、せっかくだから乾燥させていないチーズをほぐしながら入れて……」


 溶けたら、バターを角切りにしたのを入れれば出来上がりだが……キルトはバターを入れた時に、正気か? とでも言いたげに目を丸くしたのは仕方がないと思う。
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