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第十章 冬来たりて
295.戻ってきた冬(セリカ視点)
しおりを挟む☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆(セリカ視点)
貴族に戻ってきてから、初めての冬。
まだシュレインに居た時だったら、女将さん達と一緒に雪かきをして……終わったら、大将さんが特別だと甘いコフィーとミルクを合わせた飲み物を出してくれた。それが少しばかり、懐かしい。
けど、あの頃と今は違う。
リチェルカーレ家の令嬢として、王城でのカティアちゃんへの家庭教師として……また、この城で過ごせるだなんて、到底思っていなかった。
神王陛下であるエディお兄様のお膝元近く……過ごせるだなんて。
(記憶が戻っても……諦めていたのに)
あの日。
式典でシュレインの街も騒いでいたが、ミービスのバルは閑古鳥が鳴っていた時。
変幻で多少姿を変えていらしたエディお兄様に、カティアちゃん達がやって来たことで変わった。カッツクリームと言うパルフェを使ったカッツのクリームを……カティアちゃんが教えてくれたことでミービスの賑わいが戻った。
私は学園の職員見習いをしながら手伝い、いつかエディお兄様以外の誰かと婚姻を迎えると思っていたのが。……お兄様の再訪で、それは無くなったのだ。サイノスお兄様とご一緒に説得されて……戻ってきていいと仰ってくださった。
あれから、まだ数ヶ月とは思えないくらい……季節をふたつ巡ったと思えないのだ。
「おかわり、お待たせしましたー!!」
食堂から見える窓の外に目を向けていたら、カティアちゃんがパンツェロッティのお代わりを持ってきた。
輝かんばかりの笑顔で、頭に神獣で守護獣でもあるクラウちゃんを乗せて、とても上機嫌だった。この今は小さな見た目の少女が……この城を……私達の生活を変えてくれた大恩人。
それを知るのは、ここにいる面々以外だと先先代のレストラーゼ様に、暗部のフォックスさん。
彼らも知っている通り、彼女は私達にとって恩人中の恩人だ。彼女が来たことで、この城は明るくなっている。私の兄である、中層の料理長であるイシャールお兄様とも仲が良いようだ。カティアちゃんのお陰で、メニューが色々様変わりしたことだとか。
(けど……それは異界出身だからこそ出来る)
異界渡りと言う奇跡でこの世界に来たカティアちゃん。セヴィルお兄様と御名手となり、こちらでの名も得た。本来の年齢は私と同じくらいなのに、創世神でいらっしゃるフィルザス様でもその封印などは解けない。
なのに、カティアちゃんは明るい。今も料理を待ち焦がれていたエディお兄様とサイノスお兄様が声を上げるのにも、笑顔で応えていた。私も……昔はああだったかもしれないが。
(……無理、だわ)
彼女と料理を共に作るのは楽しいが、カティアちゃんのように強い精神があるわけでもなんでもない。エディお兄様とも……神域の収穫祭で少し距離が縮まったかと思えばそうでもない気がする。
アナお姉様のように……サイノスお兄様と御名手として結ばれたとも違う。
私は……おそらく、違うから。
この片想いを、どうしていいのかわからない。
アナお姉様に啖呵を切ったこともあるのに、自分のこととなると情けなくなってきた。
「セリカさーん? パンツェロッティ無くなっちゃいますよ?」
考えに耽っていると、カティアちゃんが呼んでくれた。気がつくと、たしかにおかわりのパンツェロッティがあと一個だったわ。慌てて手に取り、まだ熱いパンのようで違うピッツァはとても美味しかった。
「はー……美味かった」
陛下であるエディお兄様は大変満足されていた。
カティアちゃんには労いのお言葉をかけて、何か入り用のものがないか聞いたが。カティアちゃんは全然必要がないと首を横に振るだけ。
本当に、欲のない女性だわ。
「こちらの雪って豪快ですね? 蒼の世界は、指先くらいの粒だったんですよ?」
「「嘘だろ??」」
「まあ、そうですの?」
そして、皆の懐にもう浸透しているのも凄い。
私も、見習わなくちゃって思う。今は、そこに便乗させてもらう形で。
この城で、居場所を再び作るためにも。
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