【完結】ピッツァに嘘はない! 改訂版

櫛田こころ

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第一章 異界渡り

02.夢で落ちた場所は?-②

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 なんで、なんでなんで?
 とにかく大混乱するしかなかった。
 服も見たらなんか真っ青な手触りのいいチュニックとズボンの上下だし、靴も子供靴の紐なしスニーカーみたいなのを履いていた。サイズぴったり……ってなんでやねん!と思わずツッコミ親友みたく手を地面に向かってチョップしてしまう。当然空振りだけど。

「顔もモチモチ……これ子供の肌だ」

 従兄弟の子供ちゃんを触った時とよく似てるが、あの赤ちゃんよりは弾力がある。体の具体的な大きさまではわからないけど……幼稚園児か保育園児くらい?

「って、なんで⁉    なんで子供になってるの⁉」

 ただただ疑問しか思い浮かばない。
 今いる場所とか犯罪に巻き込まれたとかはどーでもよくなるくらい、自分の体の異変の方がよっぽど大事だった。
 でも、そう思うのは一過性にしか結局出来なかったので、仕方なく異変を受け入れてから芝生に座り込んだ。

「まさか、なんかの薬品を飲まされて……とか?」

 某有名少年漫画の序盤にあったようなシーンを思い浮かべるも、リアルでそんな非科学的な薬なんて生み出せるはずがない。
 だとしたら、とまったく別の要素が浮かんできた。

「転生か……幼児化?」

 最近ツッコミ親友や同僚がハマってるラノベやオンノベなんかを、ほんの嗜む程度に読み始めたばかりだったから覚えてはいた。
 まさかなーとは思っても、夢じゃないとすればそれくらいしか思いつかない。
 でも、僕家で着替えずに寝ただけだよね?
 夢でどでかマルゲリータが出て来て食べようとしたのを見ただけだよね?
 どこにそんな兆しが?
 記憶にまったくございません。

「……考えてもしょーがないか」

 ここでじっとしてたって意味がないもの。
 それにまだ異世界に飛ばされた可能性だって証拠がない。まずは探索だと歩を進めようとしたら……すぐにその証拠が見つかりました。

「……金の葉っぱがある巨大樹ってないよね?」

 黄色じゃないよ?
 本当にキンキラキンの黄金の葉っぱ達が樹に覆い茂っていた。
 樹だけでもかなり大きく、今でも大人の僕でも見上げるだけで首が痛くなるくらいの高さに、人が何十人も手を繋いでぐるっと一周しないと測れないくらいの幹の太さ。
 根っこだけでも、今の僕の何倍以上もあるんじゃないかな?   それにしても葉っぱがキンキラ過ぎて直視しにくい。地面には落ちてないからどれくらい金ピカかはわからないが、太陽の光が反射しているせいで辺り一帯をキラキラと照らしている。僕が起きた時に感じた明るさはこれのせいかな。
 とは言え、

「これは絶対に異世界……」

 それと転生かはわからないが、幼児化してることも確定。
 顔も変わってたらいいなぁとは思っても、水辺が見当たらないから確認のしようがない。

「よし、水を探そう」

 全体の確認もだけど、何より喉が渇いてしょうがなかった。
 あと、うじうじしてたってしょうがない。僕は基本ポジティブ思考!
 いくぞーっと意気込んでから足を動かしたんだけど……ちまちまとしか歩けずで金ピカ巨大樹の前に行くだけでも一苦労でした。








 ◆◇◆








「おいしょ、うんしょ」

 実に態とらしい掛け声を口にしながら、ただいま巨大樹の根っこをよじ登ってぐるっと一周するのに奮闘中。
 何故こうしてるかと言うと、進路のどこを行っても根っこが道を遮っていたから登って進むしかなかったわけで。何度も何度もこけそうになったりひっくり返りそうにはなったが運良く怪我はしなかった。

「全然先が見えない……」

 幼児化したことで耳に聞こえる声は幼児特有の甲高いもの。
 まあ、成人しても艶っぽさとかはかけらもなかったけど見事に赤ちゃんから少し聞き取りやすくした程度だ。
 それにしても、根っこのジャングルはなかなか終わりが見えないや。かれこれ20分かそこらはよじ登って進んでいたつもりでも、景色は大して変化がない。
 それでも突き進むのは、ひとつの確信を持ってたからで。

(湿っぽいんだよね、この辺)

 霧は出てないが、空気が湿っぽいのは近くに水辺がある証拠。なんかのテレビ番組かなんかで出てきた豆知識なのを覚えていたんだ。役に立つかは半信半疑だけど。
 けど、いつまでもあの樹の真正面でぽかんとしてるよりはマシだろうから、行動あるのみとちみっちゃい手と足を使って根っこをよじ登る。
 またしばらくそれを繰り返していくと、やっと景色に変化が。根っこのジャングルの先に茂みが見えたんだ!

「わーいっ、出口だ!」

 ほんとの出口じゃないけど、同じ景色がずっと続いていたからそう思うのも無理はない。
 大人の体だったらすぐに駆け出せだだろうがこの体じゃ無理なのでゆっくりとその茂みに向かう。茂みに穴のようなものはなかったが、とりあえず入って細かい枝みたいなのを避けながら前に進む。こういう時だけ小ちゃいのは役得だ。

「よいしょっと…………うわぁ」

 茂みを抜け出せてから目の前に広がる光景に、堪らず声を上げた。

「池……よりは泉かな?」

 池と泉の違いはよく覚えてないが、水があることには変わりない。服についた葉っぱを取ってから立ち上がってとことこと岸辺まで歩いていく。
 特に動物とかはいない。もし熊とか猪がいたら、逃げ切れる自信なんて絶対ないです。山とか田舎に住んでたこととかないから対処法も知らないもの。
 よーく周囲を見渡してから岸辺に到着し、地面に膝をつく。水面は波紋が波打っていて僕に顔はよく見えない。濁ってはないが色もわかりにくいので飲んでも大丈夫かなぁとは思ったけど、ちょんっと指を水につけたら冷たくて気持ちよかった。

「お腹壊してもいいから飲もう!」

 普通ならあり得ないことでも、欲求に負けてしまいざぶんと落ちないように両手をつけてすくい上げる。予想通りちんまい手にちょびっとしかなかったが、僕は躊躇わずに口元に持っていく。
 少ないからぺろっと舐める程度しかなかったけど、頑張って運動した?後の僕にとって何よりの水分。
 ひと口舐めた後、今度は草に手をついて思いっきり水面に頭を入れた。

「んくっ、んくっ!」

 美味しい。
 美味しくてたまらない。
 昔家族で登山に行った先の湧き水を飲んだ時よりも美味しく思えたのだ。
 レストランで仕入れてる天然水よりも美味しく感じちゃう!   師匠や先輩達にも飲ませてあげたいくらいだ。
 とにかく行儀が悪いとか考えることを放棄して、口にがばがばと水を入れて口に含んで飲み込んでいく。
 それを何度も繰り返して満足したところで顔を上げて、服で口元を拭う。

「はぁ……生き返った」

 大袈裟すぎだろうけど、起きてすぐに体を動かすなんて店で下ごしらえする時くらいだから、あれ並みにハードな運動をしちゃえば水分は必要以上に欲しくなる。料理人だからって、水分補給を常にしてなきゃ脱水症状にもなるもの。

(それにしても……)

 僕は空を見上げた。
 雲ひとつない真っ青な晴天。
 時間はわからないが、日の傾き具合から多分午前中かなとは思っても異世界だから何とも言えない。
 後ろを振り返っても、茂みの向こうには苦労して抜け出してきた金ピカ巨大樹があるだけだ。
 さて、これからどうすべきか。

「小説のお約束な展開なら神様とかが出てくる場合もあるけど……」

 まさかねと首を振っていたら、

「呼んだ​​──?」

 遠くから聞こえてくる声。
 人がいたの⁉︎と見渡すけど、どこにも人影はいない。
 あれ、気のせい?

「ここだよ、こーこ!」

 もう一度聞こえてきたので懸命に探してみれば……居ました、巨大樹よりははるかに小さいけどそこそこ大きい普通の木の上に。
 ぱっと見中学生かな?
 顔と手が真っ白なとこ以外は全部黒一色で、髪も目も服も、形の不思議なマントも何もかもが真っ黒で統一されている。
 一瞬悪の権化かと思いそうだったけど、好奇心を隠さない瞳からはそうも見えない。油断は出来ないけど。
 あと、美少年だ。子役とかモデル並みに綺麗。

「よっ、と」

 枝を蹴ったと思えばその勢いのまま地面に降りていく。着地も綺麗に決めてマントが大きく広がった。
 映画とかドラマのスタントマン並みなアクションを生で見れるとは思わず、条件反射で拍手していたよ。

「ふふ、大したことないのにありがとう」

 少年は笑いながら僕のとこまで歩いてくる。
 美少年の微笑みいただいちゃったよ。眼福です!
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